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情報化による業務システム改善
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第6回:BPR実践の秘訣(前編)
著者:みずほ情報総研   片田 保   2006/7/31
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第3条:ゴール、プロセスを共有する!

   BPRの理念では「成果志向」が重要となる。BPRの対象となる業務に、どのような最終目標(ゴール)を設定すべきなのかを、関係者でディスカッションして決める。これまでの「第4回:BPRの効果をコストで示す」「第5回:BPRの効果を多面的に評価するBSC手法」の記事でも指摘してきたが、この最終目標が形骸化するとBPR自体が頓挫しかねない。

   決める過程(プロセス)はとかく密室になりがちだが、現場の理解を得るためには、こまめに決定経緯をオープンにすることが重要だ。「よくわからないが、中枢で決まったことだから現場はやるしかない」というのでは、ストレスが溜まるだけで前に進まない。

   また注意すべきポイントは「過剰な期待を抑える」ということである。前回のBSCの事例でも紹介したように、情報システムの導入には往々にして過剰な期待を抱きがちだ。しかし実際には、既存の業務プロセス/規程/組織などの変革(BPR)なくしては大きな効果は導出できない。

   自分たちが何をやらなければならないのか、その実現によって何を達成し得るのかを明らかにするためにも、ゴールの設定と共有は不可欠である。

第4条:評価はほどほどにする!

   ABCやBSCといった経営管理手法を導入して、現場の担当者が陥りやすい落とし穴に「手法に溺れる」といったことがある。特に「評価」を実施するときに、できるだけ細かく正確なデータを収集しようと試みる担当者がいる。

   もちろん経営管理において、人件費/光熱費/不動産費/用紙費など詳細データを積み上げて財務的にコスト負荷要因を特定し、経営改善に努めようとする取り組みもあるので、こうした経営分析を否定するわけではない。

   しかしここで紹介しているのは、ABCやBSCといった手法を用いた「BPR」である。管理会計を細かく精査することが目的ではない。したがって、どのような観点から経営改革を実践するのかといったスタンスを事前に決めておく必要がある。観点としては、コスト/時間/顧客満足/リスク/環境配慮などがある。特に短期間で改革に着手するためには、アレもコレも積み上げることは避けたほうがよい。

   本連載で紹介したABCでは、主に「コスト」「効率性」の観点でのBPRを重視する事例を紹介してきた。細かく見ると様々なコストがかかってくるが、取り上げた事例では特に大きなコスト要因となる「人件費」に着目して評価・分析をしている。

   分析の際には、一度立ち止まって「評価のための評価」になっていないかを考えてみたほうがよい。現場の作業負担を強いるだけで、かえってBPRに伴う評価・分析が仕事の作業効率を低下させ、ストレスを高めてしまったのでは、体力がかかって疲弊するだけだ。

   「ただでさえ忙しいのに、何のためにやっているのか…」こんな声が聞こえてきたら要注意である。ABCやBSCはあくまで手法・手段であり、評価・分析の後の成果である最終目標(BPRを実践して経営改革を推し進めること)を忘れてはならない。


次回へ続く

   今回は第4条までを解説した。残る第5〜10条は次回解説していく。

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みずほ情報総研 片田 保
著者プロフィール
みずほ情報総研株式会社  情報・コミュニケーション部
公共経営室長   片田 保

1991年、早稲田大学教育学部卒業、富士総合研究所(現みずほ情報総研)入社、2004年から現職。専門は、ITを活用した行政経営、地域経営。行政の経営改革に関するコンサルティング、自治体の政策アドバイザーなどの業務に携わる。世田谷区行政評価専門委員を務めるほか、大学・大学院非常勤講師、自治体セミナー講師、論文執筆多数。

INDEX
第6回:BPR実践の秘訣(前編)
  BPRの理念に立ち返る
  第2条:次世代ミドルを活躍させる!
第3条:ゴール、プロセスを共有する!