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調査レポート
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2006年中堅・中小企業におけるサーバOSの実態と展望
第3回:定性調査から見えたサーバOSの今後の動向
著者:
ノークリサーチ 伊嶋 謙二
2006/6/13
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コスト(TCO)
コストについての意見は以下のようになった。
タイプA:サーバOSは「WindowsとLinuxを使い分けている」のコメント
WindowsのCALの体系・コストに不満があり、Linux導入によってライセンスコスト削減、自社サポートによってTCOの削減に成功。
Linuxの自社サポートを行っているので、TCOは削減できている。
Linux、無償アプリケーション、自社サポート、これでTCO削減へと繋がる。
Linuxのサポートフィーが高い。カスタマイズを行ったのでバージョンアップのコストもかかる。結果的にWindowsとTCOは変わらない。
Linuxをメインで使うことになると、外部委託することになるのでサポートフィーが高くなると想定している。
タイプB:サーバOSは「Windowsで統一している」のコメント
Windowsのイニシャルコストの高さは否定出来ない事実だが、導入後の満足感から言って納得出来る金額だと判断している。
Linuxはライセンスコストを削減できてもサポートフィーが想像以上に高く、WindowsとTCOは変わらなかった。
Windowsのイニシャルコストは高いが、ランニングコスト、サポートフィーで低く抑えられる。
表12:コスト(TCO)のヒアリング結果
分析ポイント
Linuxのベンダサポートフィーの高さは両タイプのユーザで述べられている。ベンダサポートを受けているユーザはWindowsとTCOは変わらないと指摘している。Linux導入でライセンスコスト削減は可能となるが、TCO削減を実現するには自社サポートは必須条件といえる。
アプリケーション
アプリケーションについての意見を以下に示す。
タイプA:サーバOSは「WindowsとLinuxを使い分けている」のコメント
LinuxでもWeb系単機能のアプリケーションは最低限揃っているが、Linux対応の基幹系アプリケーションはほとんどなく、アプリケーションが圧倒的に不足している。
メール、Web系サーバとしてはWindowsよりもLinuxのほうが優れている面がある。
基幹系アプリケーションはWindowsベースがデファクトとして揃っている。
アプリケーションの多くがActiveDirectory構築を前提としており、構築したことによって選択肢の幅が広がった。
タイプB:サーバOSは「Windowsで統一している」のコメント
Windowsはパッケージ化された製品が多く、この点Linuxは特に乏しい。
Linux対応のアプリケーションは非常に少なく、SIerも提案力に乏しいため、結局自社での作りこみが必要になり、手間もコストもかかった。
Windowsはアプリケーションが豊富で選択肢の幅が広く、上層部からの漠然とした指示に答えることが出来る。
表13:アプリケーションのヒアリング結果
分析ポイント
業務用アプリケーションはほとんどがWindowsを前提に作られているというのは、Windowsユーザは言うまでもなくLinuxユーザも認めている。Linuxのアプリケーションと言えば、メール、Web系で最低限揃っているという程度で、一方のWindowsはアプリケーションが豊富で選択肢の幅が広いという強みを持つ。
セキュリティ
最後にセキュリティについて意見を見てみよう。
タイプA:サーバOSは「WindowsとLinuxを使い分けている」のコメント
Windowsではセキュリティパッチが提供されているので、それをきちんと当てていればウイルスに感染する可能性は低くなる。
世の中の大半のセキュリティ系アプリケーションがWindowsベースActiveDirectory構築前提でLinuxベースでは良いものは見つからない。
Linuxは絶対的なユーザが少ないのでウイルスのアタックも少ない。
緊急事態時の対応(パッチ)がマイクロソフトは迅速だから信頼している。
タイプB:サーバOSは「Windowsで統一している」のコメント
セキュリティ関連のアプリケーションで十分対応出来る状況。
WindowsServer2003でのマイクロソフトのセキュリティ対策は評価している。
情報漏洩対策アプリケーションがWindowsベースでは豊富に用意されている。
表14:セキュリティのヒアリング結果
分析ポイント
Windowsは多くの脆弱性が指摘され、コンピュータウイルスにも狙われやすいOSであるというのは、歴史的に見てもユーザ数の多さから「避けられない」事実だ。だからこそマイクロソフトを始めとしたWindowsを扱うベンダがセキュリティ対策を徹底しようとしている姿勢は、ユーザに十分伝わっている。逆にLinuxはセキュリティ関連のアプリケーションが不足していることが指摘されている。絶対的なユーザ数が少ないためにウイルスのアタックが少ないといえども、セキュリティとしては懸念が残る。
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書籍紹介
「2006年 中堅・中小企業におけるサーバOS実態調査(White paper)」
本記事はノークリサーチより発刊されている「2006年 中堅・中小企業におけるサーバOS実態調査(White paper)」からの転載です。上記調査資料には、さらに詳しいデータや分析結果が記載されています。調査資料のご購入は下記のリンクより行えます。
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http://www.norkresearch.co.jp/2006ITdm.pdf
著者プロフィール
有限会社ノーク・リサーチ 伊嶋 謙二
1956年生まれ。1982年、株式会社矢野経済研究所入社。パソコン、PC(IA)サーバ、オフコンなどをプラットフォームとするビジネスコンピュータフィールドのマーケティングリサーチを担当。とくに中堅・中小企業市場とミッドレンジコンピュータ市場に関するリサーチおよび分析、ITユーザの実態を的確につかむエキスパートアナリスト/コンサルタントとして活躍。1998年に独立し、ノーク・リサーチ社を設立。IT市場に特化したリサーチ、コンサルティングを展開すると同時に、業界各誌への執筆活動も積極的に行っている。
ホームページ:
http://www.norkresearch.co.jp/
INDEX
第3回:定性調査から見えたサーバOSの今後の動向
中堅・中小企業におけるサーバOSの利用実態及び今後の動向
導入経緯で見るサーバOS選定・導入のポイント
定性調査詳細分析
コスト(TCO)