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システム統合の要点
システム統合の要点となるビジネス−IT−組織のアラインメント

第3回:アーキテクチャとフレームワークの定義
著者:東京工業大学   飯島 淳一   2006/8/24
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様々なEAフレームワーク

   EAのフレームワークには、Schekkermanによる著作の題目が示すように,様々なものが知られている(Schekkerman, 2003)。代表的なEAのフレームワークとして、先に述べたZachmanによるものの他にはTOGAF(The Open Group Architecture Framework)、FEAF(Federal Enterprise Architecture Framework)、TEAF(Treasury Enterprise Architecture Framework)、E2AF(Extended Enterprise Architecture Framework)などが知られている。

   TOGAFは民間のIT標準化団体であるThe Open Groupによって作成されているEAフレームワークであり、民間団体によるものは珍しい。EA構築のための作業手順を記した「アーキテクチャ構築手法(ADM)」、アーキテクチャを構成するための材料を集積した「エンタープライズコンティニュアム」、そしてADMを使うための関連情報を集積した「リソースベース」の3つから構成されている。

   そしてFEAFは米国のCIO Councilが発表したものであり、経済産業省の進めるEAフレームワークの基礎になっている。これは、Zachmanフレームワークと同じ5つのperspectivesとデータ/アプリケーション/テクノロジーの3つのアーキテクチャの2つの軸から構成されている。

   一方、TEAFは米国財務省が2000年に発表したEAのフレームワークであり、立案者/所有者/設計者/開発者の各々の観点から、機能/情報/組織/インフラの4階層のモデルを作ることを提案している。

   また、E2AFはEA開発研究所(Institute for Enterprise Architecture Developments)が2002年に開発したものであり、様々なEAのフレームワークに基づいてビジネス/情報/情報システム/テクノロジーインフラの4つの側面と、文脈(why)/環境(with Who)/概念(what)/論理(how)/物理(with what)/変換(when)の6つのレベルからなるフレームワークである。


わが国におけるEA論

   わが国の経済産業省が提唱しているEA論はフレームワークとして、FEAFに対応する政策・業務体系(ビジネスアーキテクチャ)/データ体系(データアーキテクチャ)/適用処理体系(アプリケーション・アーキテクチャ)/技術体系(テクノロジー・アーキテクチャ)の4つのアーキテクチャから階層的に構成されている。このフレームワークに従って現状(As-Is)モデルと理想(To-Be)モデルを描き、その間の移行形態として次期モデルを策定する必要がある。

   そして、それに向かって「修正、管理を続けることにより、業務・システムの最適化をはかる」EAプロセスを提案している。

   4つのアーキテクチャに対応する表現として、ビジネス・アーキテクチャには業務説明書/機能情報関連図(DMM、DFD)/業務流れ図(WFA)/情報体系整理図(UMLクラス図)、データ体系では実体関連図(ERD)とデータ定義表、適用処理体系では情報システム関連図と情報システム機能構成図、そして、技術体系ではネットワーク/ソフトウェア/ハードウェアの各々に関する構成図が成果物として用いられている。

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東京工業大学  飯島 淳一氏
著者プロフィール
東京工業大学  社会理工学研究科  教授   飯島 淳一
1982年東京工業大学・大学院博士課程修了。1996年より現職。2006年4月より経営情報学会会長。主な研究分野は,情報システム学と数理的システム理論。主な著作は『成功に導くシステム統合の論点(共著,2005)』『入門 情報システム学(2005)』ほか。


INDEX
第3回:アーキテクチャとフレームワークの定義
  元々は建築の世界で使われていたアーキテクチャ
  EAにおけるアーキテクチャ
様々なEAフレームワーク