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今こそ再考するアジャイル開発
第３回：アジャイル開発のメリット 〜 ユーザとベンダー共通のメリット
著者：
日本コンピューター・システム 新保 康夫
アッズーリ 濱 勝巳
2006/8/30
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ユーザとベンダーに共通するメリット
ここまで、アジャイル開発には、ユーザ／ベンダーのそれぞれの立場で多くのメリットがあるということをみてきました。最後は立場に関係なく、ユーザ／ベンダーに共通するアジャイル開発のメリットを考えてみましょう。
計画と改善の繰り返しによる改善型の強い組織
アジャイル開発の計画は数週間から1ヶ月程度と短期間であるために、作業の見積りや計画が立てやすくなるとともに、立てられた計画が実行可能な現実的なものとなっています。
またイテレーションの期間が一定であるため、日常の業務の中にルーチンワークの1つとして位置付けられるようになります。さらに、生産性などを計測した場合にイテレーションの期間が一定であるために前回のイテレーションとの比較が容易になり、短期間であることから実績の振り返りも簡単になります。
それら情報を元にして、ユーザ／ベンダーの中のチームや個人はPDCAサイクルのような改善のサイクルを実施することができるようになりますので、改善型の強い組織が作れるようになります。
変化の抱擁
アジャイル開発は変化を受け入れることを前提としています。変化への対応コストは、時間とともに増加するといわれており、変化を受け入れる期間を短くすれば変化への対応コストを低く抑えられるようになります。アジャイル開発では短期に動くソフトウェアをリリースすることによって、変化への要求を受け入れています。これにより変化への対応コストを抑えることができて、ユーザの求める真の要求を満たすシステムを提供できるようになります。
ユーザとしてはある程度のコストを意識しながら真の要求を満たすための変更依頼を行えるため、ユーザの責任者や担当者に過度のプレッシャーがかからなくなります。また比較的自由な発想や余裕が生まれるため、逆に要件を確定する際にケアレスミスとしての未解決事項がなくなります。
ベンダーとしては変更に柔軟に対応することになり、ベンダーの開発者へのプレッシャーが少なくなり、そして常にユーザニーズを満足するソフトウェアを一定の品質で提供しやすくなります。これにより、ユーザとベンダーがWin-Winの関係を築くことが比較的容易になるのです。
図3：時間と変更コストの関係
プロセスの学習
プロセスについて理解できるということは、ソフトウェア開発についての5W1Hを知り、それを活用できるということになります。このことはベンダーだけではなく、ユーザもそのソフトウェア開発に参画しているのですから大切なことになります。
従来のような長期のプロジェクトでは、プロジェクトやプロセスの一連のサイクルを最初から最後まで経験して有効に活用できるようにするためには多くの時間を必要とします。しかしアジャイル開発では、短い期間で1回のサイクルを経験できるのです。
このように短いサイクルが何度も同じように繰り返されるために、前回のサイクルを忘れる前に新たなサイクルに取り掛かって何回も繰り返し学習することをができます。つまり担当者の変更や新しい配属があったとしても、数回のサイクルを繰り返すだけでソフトウェアプロセスを学習することができます。
2回にわたってアジャイル開発のメリットについて話をしましたが、次回はアジャイル開発を導入する上でのポイントとなる点を説明します。
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著者プロフィール
日本コンピューター・システム株式会社
新保 康夫（しんぼ やすを）
本部企画室 コンサルタント、ITコーディネータ/ITCインストラクタ、システム監査技術者。
1975年 日本コンピューター・システムに入社。システム開発に従事し、プロジェクトマネージャを経て現在、コンサルタント業務に従事する。コンポーネントベース開発やアジャイル開発にも関与する。
「ソフトウェアプロセスレベルを向上させるＣＭＭＩ活用術〜ソフトウェア開発の品格」をＴｈｉｎｋＩＴにて掲載。
有限会社アッズーリ
濱 勝巳（はま かつみ）
(有)アッズーリ 取締役社長。メーカ系ソフトウェア会社でファームウェアのプログラマを経て、フリーのエンジニアとして独立し、1999年に有限会社アッズーリを設立。オブジェクト指向、アジャイルプロセスを利用したエンタープライズアプリケーションを開発に従事し、現在は経営やプロジェクトマネジメントの視点でアジャイルプロセスを見つめ、情報システムベンダのあるべき姿を追求している。2003年よりアジャイルプロセス協議会副会長。
INDEX
第3回：アジャイル開発のメリット 〜 ユーザとベンダー共通のメリット
Win - Winの関係の構築
品質の維持
ユーザとベンダーに共通するメリット
