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オープンソースをこう使った! 〜 運用管理ツールHinemosの秘密
オープンソースをこう使った! 〜 運用管理ツールHinemosの秘密

第1回:Hinemosの全体構想について

著者:NTTデータ  藤塚 勤也   2006/8/3
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なぜEclipse

   HinemosのユーザI/F(インターフェース)部分を構想する際に、2つの要件を重要視しました。それは、操作性の高いGUI画面であることと、各機能のGUI画面をユーザが自由に配置できることです。

   昨今のソフトウェアのユーザI/Fは、Webベースで作成することが非常に多いと思います。WebベースのユーザI/Fは、そのソフトウェアを利用するユーザ数が多い時にはメンテナンス効率が良く、非常に優れていると思います。ただし、残念ながらWebベースで操作性の高いGUI画面を作ることは非常に難しいのが現状です(最近では、Ajaxの登場によってかなり改善されていますが…)。

   Hinemosのような運用管理ツールを想定した場合、そのツールを使用するユーザ数が何十、何百になることはありえません。よって、Hinemosの場合はクライアントにパッケージを配置する方式でも良いと考えました。

   また、運用管理ツールには複数の機能が同居し、その機能ごとに画面が必要になります。実際それらの機能を使用して運用する場面では、複数の機能画面を同時に表示し、あたかもコックピットのような状態で使用することになります。

   例えば、イベント監視画面とCPUの性能グラフ画面を同時に表示しつつ、ジョブ管理画面にてジョブの実行操作を行うといった使い方になります。よって、ツールを使用するユーザが使い勝手の良い画面構成を簡単に保存し、再現できるポータル的な機能が必要でした。

   そこで、選択したのがEclipseをクライアントのプラットフォームとして活用する方法でした。Eclipseを使用すれば、各機能画面はViewで実現でき、自由な画面構成はパースペクティブを活用できるのです(図4)。
Hinemosの画面例
図4:Hinemosの画面例
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


なぜJBoss

   Hinemosの各機能を実現するためには、表3に示すような処理を行う必要があります。

  • 監視・制御対象ノードとの通信によるデータ授受処理
  • データベースの制御処理
  • クライアントからのリクエスト処理

表4:各機能が実施する処理

   要するに、様々なイベントによって起動され、時には自発的に動作する処理を実装する必要があります。

   また、将来の拡張を考えると可能な限り機能別にモジュール化した方が良いことは当然でした。これらのことを考えるとマネージャはEJBにて実装するのが良いと判断しました。

   そこで、EJBコンテナとして実績も豊富なJBossを選択したわけです。

   さらにJBossを選択した理由として、標準でクラスタリングの機能を持っていることもあります。JBossのクラスタリング機能を使用すれば、容易にマネージャ部分のクラスタリングを実現でき、信頼性の高い運用管理ツールとしてHinemosを使用することができると考えたからです。


なぜOpenLDAP

   Hinemosの特長は、複数のノードをグルーピングできることです。この機能を実現するためには、各ノードの情報を何らかのデータベースに格納する必要があります。

   ただし、このデータベースは頻繁に更新されるものではありません。そのかわりグループの単位で頻繁に検索され、その性能は高い必要があります。そこで、このデータベースとしてはディレクトリサービスが適していると考え、OSSとして有名なOpenLDAPを適用することにしました。

   なおOpenLDAPは、JBossの選択理由と同じく、標準でアクティブ・スタインバイ型のクラスタリング機能を持っていることもHinemosに適用する上で重要でした。


まとめ

   このようにHinemosは、それ自体がOSSであるとともに、各種OSSの活用事例といった側面も持つソフトウェアです。

   また、HinemosをOSSとして公開している理由として、多くの方々に使ってもらい、多くの方々と共に育てて行きたいと考えているからです。Hinemosに興味を持って頂けた方は、ぜひご協力していただきたいと思います。

   次回以降は、各OSSの活用部分をもう少し詳しく解説しますので、ご期待ください。

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NTTデータ  藤塚 勤也
著者プロフィール
株式会社NTTデータ   藤塚 勤也
基盤システム事業本部 オープンソース開発センタ シニアスペシャリスト。
日本タンデムコンピューターズ(現日本HP)を経て、2003年よりNTTデータにてOSS分野に参画。日頃はオリジナルOSSの開発や、OSSを用いたシステム構築への技術支援に従事。「RDBMS解剖学」(翔泳社)を共著。

INDEX
第1回:Hinemosの全体構想について
  はじめに
  Hinemosの概要
なぜEclipse