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PMBOK第3版
PMBOK2000と比べて覚えるPMBOK第3版

第1回:アーンド・バリュー法の解説書であるPMBOK

著者:イマジンスパーク  深沢 隆司   2006/8/17
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全面書き換えられた統合マネジメント

   統合マネジメントについての記述は大きく書き換えられました。統合マネジメントだけで、「立ち上げ → 計画 → 実行 → 監視コントロール → 終結」とプロジェクト全体が一通り完結した形になっています。それぞれの知識エリアの計画プロセス群のプロセスは、プロジェクトマネジメント計画書作成のプロセスの詳細説明ということができます。そして、それぞれの知識エリアにおいての計画プロセス群以外のプロセスは、それらの計画の主な対象であるといえるでしょう。

「コントロール・プロセス群」から「監視コントロール・プロセス群」に

   「コントロール・プロセス群」から「監視コントロール・プロセス群」に名称が変更されました。これは「コントロール・プロセス群」が監視を含む形で拡張されたということをあらわしています。またPMBOK第3版では「立ち上げプロセス群」と「終結プロセス群」をより強調するプロセス構成にしているという記述がありますが、特に統合マネジメントのプロセスによくあらわれていると思います。


全34から全74ページへ拡充された用語集

   用語集のページが2倍強に拡充されており、力が入っていることがわかります。もちろん、PMBOKの内容を理解するにあたって非常に役に立つものとなっています。また、本文(第12章まで)のページ数も159から297ページと138ページも増加していて、こちらもほぼ2倍のボリュームとなっています。

   以上が、公式にアナウンスされているPMBOKの主な変更点についてです。


アーンド・バリュー法の視点でより適切な構成となった

   細かい部分ではありますが、以前はコストマネジメントにある「資源計画プロセス」がWBS(注5)をインプットとして、文字通りプロジェクトに必要な資源を見積もっていました。

※注5: WBS(Work Breakdown Structure)
プロジェクトを立ち上げた際、まずプロジェクトのスコープ(目標・範囲・前提条件など)を定義する必要がある。そのスコープ定義で取り決めた要素成果物を生成するために、要素成果物(プロセス、フェーズ、またはプロジェクトを完了するために生み出さなければならない、固有で検証可能なプロダクトや所産、またはサービス実行能力)を階層的に分解したもの

   今まで「なぜアクティビティ・リストをインプットとして、アクティビティ単位で資源を見ないのか」と質問を受けたことがありますが、これは筆者自身も疑問でした。そういった質問には「プロジェクトそのものについての資源を明らかにするために、大元のWBSを対象にしています」と答えていましたが、この考え方はあくまで個々のプロジェクトの方針レベルの話です。「せっかくアクティビティ・リストがあるなら、それを対象とした方が見積りしやすいはず」と考えていました。

   第3版では「資源=コスト見積り単位」という考え方よりも、「アクティビティを実現するために必要な資源の識別」という考え方を重要視するようになったと解釈できます。あくまで、「アクティビティの実施に必要な資源は何か」を見極め、それらの「識別された資源について、コスト見積りを行っていく」ということから「資源計画プロセス」は「アクティビティ資源見積りプロセス」と名称を変え、タイム・マネジメントに移行しました。

   また「コスト見積りプロセス」では、インプットに「プロジェクトマネジメント計画書」の中の「スケジュール・マネジメント計画書」からスケジュール・アクティビティの情報を得ることが明記されています。そしてアウトプットが「アクティビティ・コスト見積り」となって、アクティビティ単位で計画を進めていくことが明確に示されています。


アーンド・バリュー法解説書としてのカラーが鮮明に

   これでPMBOK2000にあった不整合とも受け取れる部分が解決し、アクティビティ単位でコスト/期間を見積もった結果(それぞれ、コンティンジェンシー予備を含む)としてのPV(Planed Value:実行予算。ある時点における計画時の価値)のラインがそのまま「コスト・ベースライン」となり、PMBOKは全体としてアーンド・バリュー法による計画/監視コントロールを記述している文書だということがより鮮明になりました。

   PMBOK2000では「アーンドバリュー・マネジメント」が「プロジェクト計画の策定プロセス」と「コスト・コントロール・プロセス」に、「アーンド・バリュー分析」が「実績報告」と「リスクの監視・コントロール・プロセス」に記述されており、これらが何か別々の流れで行う手法のように捉えられている印象がありました。

   PMBOK第3版全体で「アーンドバリュー法」の名称が直接ツールと技法に出てくるのは1個所だけです。統合マネジメントの「プロジェクト作業の監視コントロール・プロセス」です。「プロジェクト作業の監視コントロール・プロセス」以外のプロセスでは、あくまで表現手法や分析手法などの一手法として説明されています。

   「統合マネジメント」の「プロジェクト作業の監視コントロール・プロセス」のみに「アーンド・バリュー法」が記述されていることによって、かえって「アーンドバリュー法」」がPMBOKと一体化した感があります。

   次回は「分量は増えたものの、理解をしやすくなった」というPMBOK第3版のポイントについて解説します。

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イマジンスパーク 深沢 隆司
著者プロフィール
株式会社イマジンスパーク   深沢 隆司
株式会社 イマジンスパーク 代表取締役
陸上自衛隊少年工科学校第25期生。対空戦闘指揮装置の修理要員として自衛隊に勤務。退職後に一部上場企業や官庁でのシステム開発等で仕様策定、プロジェクトマネジメントに従事し、独自の手法で成功に導く。著書は『SEの教科書』他。

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