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第2回:Red Hat Enterprise Linux

著者:市民電子情報網  安田 幸弘   2006/11/2
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付属パッケージ

   Red Hat Enterprise Linuxにはデスクトップからサーバ、開発まで、ほぼすべての分野の代表的なアプリケーションが付属している。ただしそこに含まれるパッケージは、すべてオープンソースソフトウェアである。特許が設定されていたり、配布が制限されているソフトウェアは含まれていない。

   部分的に知的所有権の問題が発生する可能性があるソフトウェアも含まれているが、問題のある機能は削られている。したがって事実上無償で配布されているソフトウェアでも、ライセンスが非オープンソースであれば、どれほど影響力の強いソフトウェアもRed Hat Enterprise Linuxには含まれることはない。

   例えば、サウンドの圧縮コーデックであるMP3には特許が設定されているため、Red Hat Enterprise Linuxに含まれるサウンド関連のソフトウェアからはMP3の機能は削られている。またWebアプリケーションで使われるJavaも、最近まで非オープンソースのライセンスで配布されていたため、Red Hat Enterprise LinuxではSunのJava互換のGNU Javaが含まれている。

   非オープンソースライセンスのソフトウェアが必要になる場合は、別途インストールが必要になるので注意が必要だ。

管理ツール

   Red Hat Enterprise Linuxには、GNOMEのユーザインターフェースを使ったGUI管理ツールが付属している。

   KDEをベースとする他のディストリビューションと較べると、Red Hat Enterprise Linuxの管理ツールは設定項目の数が少なく、細かい設定が省略されている個所もある。一般的な使用場面で特に問題になるほどではないが、省略されている部分の設定はコマンドやテキストエディタによる設定ファイルの編集などが必要になる。

   またRed Hat Enterprise Linuxのアプリケーションではないが、Red Hat Enterprise Linuxでは、Red Hat Networkによるパッケージやシステムの管理機能を利用することができる点がユニークだ。

   Red Hat Networkは、Red Hat Enterprise Linuxのサポートの基本となるサービスで、インターネットに接続したホストから、複数のシステムを対象とするパッケージの管理やシステムのアップデートなどを集中的に行うことができる。多数のホストを管理する上でたいへん便利なツールだ。

Red Hat Network
図3:Red Hat Network
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


サポート

   Red Hat Enterprise Linuxのサポートには定評がある。利用にかかるコストが事実上サポートの契約料金であることを考えれば、サポートが充実しているのは当然かもしれないが、セキュリティアップデートのタイムラグは最短の部類に入り、Red Hat Networkによるシステムのアップデートも使いやすい。

   詳しい日本語のドキュメント類が整備されていることや製品のサポート期間も最長7年が保証されている。またスタンダード以上のサブスクリプションであれば、サポート期間中のインターネットや電話による個別のサポートを受けることもできる。

   安心してシステムを使用することができるサポートだといえるだろう。


その他

   最大のシェアを持つディストリビューションだけに、情報の入手のしやすさは群を抜いている。しかしオープンソースで問題になりがちな日本語処理については、ライセンスの関係であまり質の良い日本語フォントが付属していない点は残念だ。サーバ用途に使用する場合はフォントの品質はあまり問題にならないが、日常的に使うデスクトップとしての用途では良質のフォントが望まれる。

   それを除けば、ほとんどのメッセージが日本語化され、入力や日本語処理についても十分安定している。他のディストリビューションに引けを取ることはない。

   なお、Red Hat Enterprise Linuxには30日間の評価用サブスクリプションが用意されている。


次回は

   次回は、SUSE Linux Enterprise Serverの特長を見ていこう。

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株式会社市民電子情報網 安田 幸弘
著者プロフィール
株式会社市民電子情報網  安田 幸弘
取締役。主にオープンソースソフトウェアを使用した非営利組織向けのネットワークサービスの提供やサーバの運用/管理を行うとともに、フリーの技術ライターとしてインターネット、サーバ管理などに関して書籍や雑誌記事を執筆している。


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