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企業通貨
新たな潮流企業通貨〜通貨エボリューション〜

第1回:企業通貨とは何か

著者:野村総合研究所  冨田 勝己   2006/12/12
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企業通貨の魅力

   「ポイントを貯める人=ポインター」から見たポイント・マイレージの魅力は、ポイントの「貯めやすさ」と「使いやすさ」に分けて考えられる。ポイントが頻繁に、簡単に、そして多く貯まるほど、ポインターはそれらを貯めたくなる心理が働く。また、ポイントで交換できるものが自分の欲しいものであり、その上現金で購入するよりも安く手にはいるのであれば、なおさら貯めて使おうという気になる。

ポイントの「貯めやすさ」

   「貯めやすさ」という点だが、ポイントプログラム導入企業の増加に伴って、様々なシーンでポイントを貯められるようになってきている。コンビニエンスストアでは、セブンアンドアイホールディングスが、2007年4月から、独自の電子マネー「nanaco」とともに、全国のセブンイレブンなどの店舗で利用できる、新しいポイントプログラムを提供する予定だ。

   インターネットの世界に視点を転じてみると、楽天市場などに代表されるインターネットショップでも、ポイント・マイレージの導入は活発に行われている。そのほか、インターネット上でのCM閲覧や広告メールの閲覧やアンケートに回答することでポイントを貯められるサービスなど、多種多様な形態でポイントを貯める機会が増えてきている。

   また、単にポイントを貯める機会が増えているだけではない。ポイントの付与形態も、ポインターにとってはより簡便になってきている。

   電子マネーでは、例えばEdyを使用すると同時にマイレージが付与されるクレジットカードや、おサイフケータイがある。つまりポイントカードを別途用意する必要がないのである。Suicaも利用金額や利用回数に応じてポイントが自動的に貯まるサービスを2007年6月から開始する予定である。今まではクレジットカードでの決済で同様に手間を省けていたが、その形態が拡大してきているのである。


ポイントの「使いやすさ」

   「使いやすさ」に関しては、ポイント同士の交換ができるようになることで、ポイントの用途の幅が拡大している。現在では、その全体像を把握することが困難なほどに、ポイント交換が活発化している。交換をくり返すことによって、ポインターは(交換しようと思えば)数十種類のポイントと交換ができるようになっているのである。

   そのほか、ネットマイルやGポイントに代表される、ポイント同士の交換における中継役を担うサービスも存在している。これらのサービスは、他のポイント・マイレージよりも交換できるポイントの種類が多岐にわたっているため、自分の持っているポイントを別の企業のポイントに交換したい人にとって、欠かせない存在となっている。

   また電子マネーに関しても、その利用規模は年間で約千数百億円になると推計される。EdyやSuicaは現時点で約3,000万枚発行されており、そのうち数%が頻繁に利用され、1日あたりの利用金額を数百円程度とすると、概ねその額になる。

   企業通貨全体で見ると、少なくとも6,000億円規模の年間発行額であるが、この規模は、民間最終支出額の約300兆円からするとまだまだ小さい。また40兆円〜60兆円といわれる少額決済市場と比べても、小さいといえよう。これが企業通貨の認知度の低さや仕組みとしての未成熟さによるものであるとするならば、これらの解決によって達成される今後の成長余地は、非常に大きいといえる。

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株式会社野村総合研究所  冨田 勝己
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  冨田 勝己
東京工業大学大学院経営システム工学専攻修了、2001年に株式会社野村総合研究所入社。市場調査から制度設計、アライアンス、オペレーション設計など、ポイントプログラムの導入に関する全般的な支援が主だが、情報通信業界における市場調査やマーケティング戦略立案支援、事業戦略立案支援も手掛けている。


INDEX
第1回:企業通貨とは何か
  住宅ローンを借りると、ハワイに行ける
企業通貨の魅力
  企業通貨導入のメリット