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Enterprise Materialized Information
意思決定の迅速化!見える化・見せる化ソリューション

第1回:すべての人のための情報活用基盤構築3原則

著者:日本アイ・ビー・エム  藤 泉也   2006/12/19
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すべての人のためのデータ活用フレームワーク

   従来から、すでにあるデータをどう活用すべきかといった課題は企業内に存在し、その解決方法として情報活用がフォーカスされてきたが、その大半が局所的な業務プロセスの最適化にとどまっていた。これでは、それぞれのビジネス・タワー、部門の業務は一時的に効率化されるが、戦略の転換や事業の統廃合によりたちまち有効性が失われてしまう。

   このような失敗から、特定の業務担当者を対象としてデータ共有の利便性を高めるのではなく、全社共有された企業戦略に基づいて「すべての業務担当者」に必要な情報をタイムリーに提供することが強く求められるようになっている。

   IBMでは、経営者や戦略立案担当から現場の営業・企画担当、システム管理を行うアドミニストレーター、バックオフィス系の人事・総務関係者に至るまで企業で活動するすべての業務遂行者に向けたデータ活用のための包括的なフレームワークの実現手段であるEnterprise Materialized Information(以下、EMIソリューション)を提唱している。

   現状のデータ有効活用の方策としては、エグゼクティブ向けの経営ダッシュボード、BIツールなど一部の専用アプリケーションを利用して、業務担当者を支援する基盤を構築しているケースがほとんどである。

   EMIソリューションは、上記のツールのように特定の業務担当者を対象としてデータ共有の利便性を高めるのではなく、全社共有された企業戦略に基づいて「すべての業務担当者」に必要な情報をタイムリーに提供することを目的としている。

   本連載では各業務課題のケーススタディを提示しながら、情報基盤における可視化の問題点を明らかにしつつ、EMIソリューションがいかにしてそれらの問題を解決していくのかについて説明していく。


企業内情報の見える化・見せる化の条件〜EMIの3原則〜

   企業内情報とはいうまでもなくイントラネット上に置かれているデータのことであるが、一言で企業内情報といってもその種類は多岐にわたる。

   CRMであればDWHやSFA(営業支援)、CTI(コンタクトセンター)から発生するデータ、SCMならばERPや需要予測システム、製造では図面や部品管理情報を含む技術情報や品質管理システムのデータが含まれる。その他にも、ナレッジデータベースや従業員のスキルや給与、インセンティブといった個人情報も考えればその数の多さを実感できるだろう。

   これらの情報を業務支援という観点で共有、公開する際に常に意識すべき重要な原則は3つある。
情報取得の網羅性
1つの企業や事業が扱う情報は、異なる形式・構造・ロケーション(格納場所)を持つ。そしてこの差異は情報の重要度と直接リンクしない。情報の重要性に応じて情報の可視化を行うためにはこれらに依存しない仕組みづくりが必要である。
セキュアなアクセスの保証
インターネットに流通している情報と異なり、イントラネット上の情報は高い機密性を保持しなければならない。社外に漏れてしまうことは論外だが、企業の中でも情報ごとにアクセスできる利用者とできない利用者を厳密に定義できる必要がある。つまり必要な人に必要な情報を見せるということである。すでに業務単位、サーバ単位でアクセス管理を設定している企業は多いが、全社レベルの情報公開でこの条件を適用できているケースはまれだ。
利用状況のフィードバック、再利用性の評価
文書作成者と文書利用者が異なる場合、情報の可視化は情報の再利用を意味する。状況を逐次把握しながら再利用性の高い情報は高い優先度を付け、積極的な利用を促す必要がある。逆にほとんど利用されない価値のない文書やデータはリストから除外もしくは他の優先度の高いデータと識別できるようにする。

表2:EMIの3原則

   この3原則は情報を公開する(見せる)立場、探索・利用する(見る)立場から整理するとわかりやすい。「情報取得の網羅性」は利用者、「セキュアなアクセスの保証」と「利用状況のフィードバック、再利用性のアセス」は公開者の抱える情報共有における問題を解決する。

   どちらの視点がかけても本当に必要な情報をジャストインタイムで提供することが難しくなる。EMIソリューションの副題を企業内情報の「見える化・見せる化」としている理由もここにある。

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日本アイ・ビー・エム株式会社  藤 泉也
著者プロフィール
日本アイ・ビー・エム株式会社  藤 泉也
1999年、日本アイ・ビー・エムに入社。損害保険会社のシステムインテグレーション、ERPソリューションのセールス・テクニカルサポート担当を経て、2005年からビジネスインテリジェンス、情報共有基盤に関するソリューション提案と技術支援を推進している。活動を通じて企業内情報の「メタボリック症候群」が確実に進行していることを実感。経営イノベーション グローバルISVソリューションズ所属。


INDEX
第1回:すべての人のための情報活用基盤構築3原則
  はじめに
すべての人のためのデータ活用フレームワーク
  EMIで利用する要素技術とコンポーネント