|
|
胎動するSaaS〜導入にあたってのチェックポイント〜 |
第2回:徹底比較!! TCOからみたSaaSモデルvsライセンスモデル
著者:野村総合研究所 城田 真琴 2007/1/24
|
|
|
前のページ 1 2 3 次のページ
|
|
TCOの比較:SaaSモデルか、ライセンスモデルか?
|
ここからはユーザのメリットとしてあげた「コスト削減」について、イニシャルコストだけなく、TCOの観点からもう少し詳しく見ていく。
一般的に、SaaSの形式で提供されるソフトウェアと常に比較されるのが、ライセンス型のソフトウェアである。両者には一長一短があるため、導入にあたっては様々な側面から両者を比較検討する必要があるが、ここではまずTCOの観点から比較してみる。
一般的にソフトウェアを導入し運用していく際のTCOの構成要素としては、以下のものがある。
- ライセンス/利用料金
- ライセンス型の場合は購入時に支払うライセンス費用、SaaSの場合はユーザが毎月支払う利用料金。SaaSの利用料金には基本的な保守費用やバージョンアップ費用を含む。
- ハードウェア費用
- 自社のサーバにソフトウェアをインストールする場合のアプリケーションサーバやデータベースサーバなどの費用。SaaSの場合は不要である。
- 導入費用
- 導入時に発生する調査・設計費用やテスト、チューニング、実装コスト。
- 統合費用
- 既存システムとの連携に要する費用。
- トレーニング費用
- システム部門やエンドユーザーに対するトレーニング費用。
- ソフトウェア保守費用
- ソフトウェアの保守費用。
- その他インフラ費用
- キャパシティ追加、冗長性、可用性確保など。
- 運用費用・サポート費用
- 運用管理、ユーザーサポート費用など。
- その他の維持管理費用
- パッチ当て、バグフィックスなどの作業コスト。
表3:TCOの構成費用
|
ユーザー数50人の場合
|
まずはユーザ数が50人の中小企業の場合について、表4の前提条件のもと10年間のTCOの比較を試みた。なお、この前提条件については当然、ユーザの環境ごとに異なるため、あくまで参考値として見ていただきたい。
表4:ユーザ数50人の場合のTCOの比較 (画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
表4の前提で10年間のTCOを比較すると図2のようになる。
図2:ユーザ数50人の場合のTCOの比較 (画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
上の結果からユーザ数50人程度の中小規模の企業の場合、一般的にSaaSモデルがTCOの面では有利といえるだろう。ライセンスモデルは自社のサーバにソフトウェアをインストールして運用するため、サーバなどのハードウェアを保有するコストに加えて、それに付随する様々な運用管理作業が継続的に必要となる点が大きく影響している。
なお、上記の試算ではSaaSモデルのユーザサポートを「問い合わせ回数無制限」「システム管理者代行」などの最上級レベルのもので計算しているため、これらを無償サポートに切り替えた場合は、さらににTCOを下げることが可能である。
|
ユーザ数500人の場合
|
次にユーザ数500人の大企業の場合はどうだろうか。表5の前提条件のもと、50人の場合と同様に10年間のTCOの比較を試みた。
表5:ユーザ数500人の場合のTCOの比較 (画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
表5の前提で10年間のTCOを比較すると図3のようになる。
図3:ユーザ数500人の場合のTCOの比較 (画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
ユーザ数500人の場合のSaaSの利用料金は、複雑なビジネス要件を持った大企業向けのバージョンを利用するケースが多いと思われるため、1ヶ月の1ユーザ当たりの利用料金を1万5,000円で試算している。このため、1ユーザライセンスが12万円のライセンス型ソフトウェアの場合と比べると、5年目でSaaSのTCOが上回る結果となった。しかし、1ユーザライセンスが24万円、36万円の場合はSaaSのTCOが上回ることはない。
一般的に、運用管理費用やユーザサポート費用など毎年継続的にかかるコストは見落としがちである。しかし、TCOを比較する際には、こうしたコストも含めた上でバージョンアップなども考慮し、10年程度の期間を目安として考えることが必要であろう。
|
前のページ 1 2 3 次のページ
|
|
|
|
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所 主任研究員 城田 真琴
IT動向のリサーチと分析を行うITアナリスト。大手メーカーのシステムコンサルティング部門を経て2001年、野村総合研究所に入社。専門は、SaaSの他、SOA、BI、オープンソースなど。最近は、Web2.0の技術的側面からのリサーチを推進。2007年1月4日より著書の「ITロードマップ 2007年版 - 情報通信技術は5年後こう変わる! - 」(東洋経済新報社)が発売されている。
|
|
|
|