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胎動するSaaS〜導入にあたってのチェックポイント〜

第3回:進化を続けるSaaS

著者:野村総合研究所  城田 真琴   2007/2/7
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今後の展望

   最後に、2つの観点からSaaSの今後を展望してみたい。1つ目はCRM以外のアプリケーションという水平方向への展開、もう1つは業種特化型のアプリケーションという垂直方向への展開だ。
水平方向への展開

   日本に限定して考えた場合、第1回でも説明したように現在SaaSの形式で提供されているサービスはほぼCRMに限られているといってよい。しかしながら、先行する米国では、CRMのみならず、様々なアプリケーションがSaaSの形態で提供されている。米国のSaaSコンサルティング会社であるTHINKstrategiesが運営するSaaSに関するポータルサイト「SaaS Showplace」では、CRM、ERPなどのアプリケーションのカテゴリごとにSaaSが整理されており、わかりやすい。

   参考までに、各カテゴリに属するSaaSベンダーをカウントした結果(抜粋)を表2に記す。

順位 カテゴリ ベンダー数 ベンダー例
1 CRM 64 Salesforce.com、NetSuite
2 Collaboration 45 WebEx
3 Accounting/Financial 41 Intacct、NetSuite、Intuit
4 Human Resource Management 35 Ultimate Software、Workstream
5 Document Management 31 NetDocuments
6 SCM 29 Procuri、GXS
6 eCommerce 29 Demandware、NetSuite

表2:SaaS Showplaceにおける各カテゴリに属するSaaSベンダーの数(2007年2月現在)
出所:SaaS Showplace
http://www.saasshowplace.com/

   SaaS Showplaceでは、43の詳細なカテゴリに分けてSaaSベンダーを分類している。表2はベンダー数の多い上位6位までを抜粋したものだ。CRMが多いのは予想通りであるが、コラボレーションや財務会計、人事管理の分野でもすでに多くのSaaSが提供されている。

   今後、日本でどの分野のサービスが展開されるのか予測するのは難しいが、日本固有の商習慣の影響を比較的受けにくいコラボレーションや、すでに欧米ベンダーの製品が市民権を得ているSCMなどは米国発のサービスでも受け入れられやすいのではないか。逆に財務会計などは日本の商習慣を熟知している国産ベンダーに大きな商機があると思える。いずれにしろ、今後CRM以外の分野にSaaSが広がるのは時間の問題であろう。


垂直方向への展開

   もう1つ、筆者が有望だと考えるのは、金融や通信など特定の業界に特化したSaaSである。こうしたバーティカルなSaaSは上で説明したような業界共通型のSaaSに比べ、米国でもまだ少ない。

   しかし、エンターテインメント業界向けにCRMサービスを提供するBluewolf(Salesforce.comのプラットフォームを利用して開発)や、卸売業者やソフトウェア会社向けのバージョンを展開するNetSuiteのように特定業種向けのSaaSは増加しつつある。

   また、このようなバーティカルなSaaSの開発に当たっては、個別業界の知識、ノウハウが必要となるため、こうした知見を有するコンサルティング会社やSIerなどの出番が増えるであろう。

   SaaSとして提供されるサービスはこのように先行する水平型サービスに今後、垂直型サービスが加わり、大きな広がりを見せると予想される。

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株式会社野村総合研究所 城田 真琴
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  主任研究員  城田 真琴

IT動向のリサーチと分析を行うITアナリスト。大手メーカーのシステムコンサルティング部門を経て2001年、野村総合研究所に入社。専門は、SaaSの他、SOA、BI、オープンソースなど。最近は、Web2.0の技術的側面からのリサーチを推進。2007年1月4日より著書の「ITロードマップ 2007年版 - 情報通信技術は5年後こう変わる! - 」(東洋経済新報社)が発売されている。


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