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勝ち組に学ぶ導入事例2007
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第2回:オープンソースを採用したシステムインテグレーション事例とSLA

著者:NEC  高橋 千恵子   2007/5/10
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Linux/OSSシステムでのSLA

   では次に、サポートサービスとSLAとは、どのようにかかわってくるのかを説明しよう。すでに他の記事などでも詳細にSLAについて説明されているが、簡単にいうとSLAとは、サービスを提供する側とサービスを受ける側との間でかわす「サービスレベルに関する合意」、もしくは「サービス品質保証契約」のことである。

   日本ではJAITA(電子情報技術産業協会)で定義されている標準SLA項目というものがある。本来はこの中の「保守サービス」の項目にそって、OSSを採用するシステムもサービスレベルを規定して対応するのが理想である。

   しかし、これをそれぞれのOSSとして捉えるのではなく、OSSを採用して構築した「1つのシステム」として考えた場合どうなるのか。SLAの考え方をシステマチックに考えてみると、以下のような2通りのレベルを定義することができる。
  • SLA1:サービス停止時間を最小限とする
  • SLA2:障害が生じた場合、再ログインでサービスの復旧を可能とする

表1:SLAの考え方に対するレベル

   それぞれのレベルが実際にシステムを設計/構築する際に、どのようにかかわり、どこに違いがでてくるのか。現在運用しているユーザ事例を元に、その違いを解説していこう。


ユーザ事例:GMOインターネット証券の「証券フロントシステム」

   GMOインターネット証券では、2006年4月にオンライントレーディング業務を支えるフロントシステムを「Linux+OSS」で構築し、サービスを開始した。業務サーバ約60台で、ここで稼動しているソフトウェアはOSSを用いて構築/開発されている。

GMOインターネット証券
https://sec.gmo.jp/

   GMOインターネット証券がOSSを選択した理由は次の3つである。

  1. 高信頼システムを安く作ることによるサービスコストの低価格化を目指す
  2. 先進技術を積極的に導入し、より使いやすいユーザインターフェースを実現する
  3. 自社開発ツールのソースコードやシステムのAPIを外部公開するため

表2:GMOインターネット証券がオープンソースを選択した3つの理由

   今回のシステムはWeb 2.0指向に基づく次世代サービスの基盤をOSSで構築することを目的として行われた。Red Hat Enterprise LinuxをはじめとしてJBossやApache、Tomcat、MySQL、PHP、Postfix、Nagiosなど、おなじみのOSSを積極採用している。しかしデータベースにはOracleを使うなど、OSSのみならず商用ミドルウェアを効果的に組み合わせている(図3)。

GMOインターネット証券の証券フロントシステム
図3:GMOインターネット証券の証券フロントシステム
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   この事例はOSSのフレームワークやツールを巧みに使いこなした新しいアプリケーション開発の事例である。加えて、システムを稼動させるプラットフォーム構築におけるSLAも考えられている。本システムは、徹底的なTCO削減をはかるため、無駄な構成やサービスを極力減らし、必要とされる「SLA」を実現しているのだ。

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日本電気株式会社 高橋 千恵子
著者プロフィール
日本電気株式会社  高橋 千恵子
OSSプラットフォーム開発本部OSS推進センター グループマネージャー
スーパーコンピュータOS開発、民需系システム部門でのUNIX/Linuxシステム開発、PJ管理などに従事。2001年6月NECのOSSソリューションセンター発足時から、2003年11月Linx推進センター(現OSS推進センター)の現職に至る。OSS/Linux関連の戦略立案、SI支援、ソリューション開発に従事。LPI-Japan理事。


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