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情報の開放
情報の開放が経営を変える戦略的情報活用へのアプローチ

第2回:何故、情報活用ができていなかったのか

著者:サイベース  富樫 明   2007/1/29
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戦略的情報活用へのアプローチ

   「全社的な情報活用を行うことで企業内のあらゆる意思決定を支援し、競争力を飛躍的に向上させる」ことが情報活用の最終ゴールです。しかし企業内にはいくつものデータベースの上に様々な形態のデータが存在し、さらにエンドユーザコンピューティングの中にはすでに構築した時の担当者もいなくなり、内容の確認もままならない、といったケースもあります。最終ゴールにたどり着くまでに、3年、4年、5年といった時間が必要になることも考えられます。

   ここで「戦略的」という言葉を付加したのは、まさにこのためで、企業として「情報を活用して企業力を高めていく」という戦略的な位置づけがなければ、とても続けられる活動にはなりえません。

   このために、経営陣の支援が必要であることはいうまでもありません。そして、情報システム部門の活動としては、情報活用における使いにくさの改善、使えるデータ種類と量の拡張、ユーザ満足度の向上、情報活用に関するユーザとの会話、コストダウンなどの努力を継続的に行い、情報活用の重要性と可能性を具体的に示していく必要があります。

   企業における情報活用の位置づけと可能性が変化した時、ITはビジネスに対し、更なる貢献をはじめたといえるでしょう。

近年の課題に対して、情報活用に求められることとは

   今まで解説してきた情報活用を実現していくには、BIの心臓ともいえるデータハウスウェアが非常に重要になってきます。そこで以降より、近年の課題に対して何が必要なのかを解説していきます。


日本版SOX法〜IT全般統制の鍵は適切な情報保管と迅速な検索

   日本版SOX法におけるIT全般統制では、IT資産に対するアクセス管理とシステム運用管理を適切に行い、ITがビジネスプロセスをしっかりと保護することが求められています。ここで重要になるのが「トレーサビリティ(追跡可能な状態)」です。

   これまでは、アクセス管理、システム運用管理に関するデータは、それぞれの役割を担った管理ツールの中に保管されていました。また、監査を受ける、統制が機能していることを証明するといった視点はありませんでしたから、日常の管理業務で利用する以外、特に長期に渡り確実に保管しなければならないという義務もありませんでした。

   ところが、日本版SOX法や新会社法における内部統制の強化により状況は一変しています。これからは、アクセス履歴、システム障害履歴といったログデータを数年間という単位で保管し、要求に応じて直ちに提示できる準備をしておくことが、企業自身を守ることにつながります。


企業の社会的責任〜顧客を救い企業を救うのは適切な情報保管と迅速な分析

   企業が事故、あるいは不祥事を起こした場合、世の中が企業に対し期待するもっとも重要な行動が「迅速な情報開示」です。例えば、製品の瑕疵が発見されリコールを行う場合、迅速な決断と対応がその後の企業の信頼につながります。

   しかし、迅速な決断と対応を実現するには、調達、製造、出荷、物流、顧客といった様々なデータを長期間に渡り保管し、関連付けた分析を迅速に行うことができる準備が必要です。このようなデータをすべて、何年にも渡っていつでもアクセスできる状態で保管する必要があります。


IT運用コストの削減〜データウェアハウスの最大のコスト要素はストレージ調達とデータベース運用工数

   既存のデータウェアハウス、データマート運用における最大の課題はデータ検索性能とコストです。特にコスト面では、急激に増加するデータを保管するためのストレージコスト、そして、実用的な性能を維持するためのデータベースチューニングに費やす工数は情報活用において、長年、運用管理者を悩ませ続けてきました。

   よって、チューニングを必要とせずに効率よく管理できるデータウェアハウスが必要とされます。


カスタマインテリジェンス〜膨大な顧客データを分析して本当の「顧客志向」を実現する

   顧客ニーズの多様化がいわれてからかなりの期間が経過しています。しかし、多様なニーズに合わせて、適切な戦略が実行できている企業はあまり多くありません。顧客の購買動向を正確に把握できず、誤ったセグメンテーションに基づく製品開発、キャンペーン、販売活動などを行っている場合が多くあります。

   企業の中には、営業が蓄積している取引やコミュニケーション履歴、サポート部門が扱う顧客のコール履歴、サプライチェーンの中で保管されている顧客向け出荷製品の詳細情報など多くのヒントが隠されていますが、これらの情報は部門間で共有されず、また、ビジネスユニットが違えば、例え同じ顧客がいてもわからない、といった状況も珍しくありません。

   問題は、異なるシステムで別々に扱われてきた膨大なデータをいかにして1ヶ所にまとめ活用できるようにするか、ということです。


ファクトリーインテリジェンス〜膨大な製造データを分析して更なる改善を実現する

   製造現場では、製造装置や工程ごとに、製造の進捗を見るためのデータ、品質を管理するためのデータ、装置から出力されるデータを収集しています。そして、これら個々の値を確認しながら、手探りで装置の稼働率を向上させたり、歩留まりの向上をはかったりしているのが現状です。

   しかし、バラバラなデータを人間の経験でチェックするには限界があり、製造現場のすべての工程と装置の品質、進捗、監視データを統合して、効率的に一元管理する必要があります。


情報活用に必要なデータウェアハウス

   これらを実現するには、通常のRDBMSよりも専用のデータベースを用いた方がよいといえます。例えば、分析専用のデータベース「Sybase IQ」などがそれに該当します。Sybase IQはインデックスの仕組みなどが通常のRDBMSとは異なり、高速なアクセス性を実現します。また高い圧縮効率により、膨大なデータを低コストで収めることができます。

   迅速な意思決定を行うためには、迅速に処理が行えるシステムを必要となります。専用を用いることの意味は大きいかも知れません。

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サイベース株式会社 マーケティング本部 本部長 富樫 明
著者プロフィール
サイベース株式会社
マーケティング本部 本部長
富樫 明

日系大手コンピュータメーカで海外ビジネスに21年間携わった後、ベリタスソフトウェア、シマンテックでマーケティングに従事。2006年より現職。著書に「内部統制今知りたい50の疑問」


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