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.NETが目指したものは何か

第3回:最新のフレームワーク.NET Framework 3.0
著者:マイクロソフト  松崎 剛   2007/3/27
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.NETのこれから

   .NET Frameworkの最新版である.NET Framework 3.0について簡単にみていきました。.NET Framework 3.0では、通信要件や、プレゼンテーションの世界におけるメディア要素など、これまで異なるプログラミングモデルが必要だった多様な技術の利用に一貫性を与えています。

   WCFとWFは、第2回でも述べた開発フレームワークとしての.NETを進化させる新しいテクノロジです。開発における理想的な姿は、開発者が本来必要な要件の実現のみに集中できることです。例えインフラやリソースのチューニングが必要であっても、それらは明確に分業されるべきでしょう。

   .NET Framework 3.0では、これに可変性を強く意識した2つのテクノロジが追加されました。機能の差し替えや要件の変更に対し、スパゲッティ状態のソースコードやオブジェクト間の構成を解析して修正するといった状態から脱却するための1つの手段です。

   開発のためのテクノロジやフレームワークは、いつの時代になろうとも、これさえ使えばすべて解決するという完全で万能な処方箋は存在しません。しかし、過去と比較すれば、その内容は確実に進歩しています。.NETの開発フレームワークにおいても、ゴールに達することなく、しかし着実にゴールに近づきながら、今後も進化を続けていくことでしょう。

   ですから開発者は、.NETのこうした優れたフレームワークの恩恵を受けながらも、常に.NETがどの位置にいるかということを意識しながら利用する必要があります。つまり、ゴールに達していない部分(ツールで補完されない部分)については、いつの時代でも、開発者の知識と経験で補う必要があります。

   一方、Windows Presentation Foundation(WPF)は、.NETがソフトウェアの世界に提案する新しいコンセプトです。それゆえに、作る側(開発者)だけでなく、使う側(エンドユーザ、サービス提供者など)にとってもどのように活用すべきか戸惑うかもしれません。しかし、実は私たちがまだこうしたUIに慣れていないだけで、使える場面はいたるところに存在しているかもしれません。

   一般的な活用事例としては、一般家庭における老若男女の広範囲なユーザに提供されるサービスなどでわかりやすい操作性を提供できるといった活用方法があります。しかし、普段のオフィス業務などの場面でも、より直感が必要とされる専門性の高い業務で活用したり、職員が頻繁に変更され操作方法の習得のための時間と費用が無視できないような業務で活用したりなど、実は日常的な多くの場面での活用も可能でしょう。

   つまり、こうした次世代のインターフェースを受け入れるための頭の切り替えが必要になります。IT業界に携わる方にとっては子供じみた身勝手な発想と思われるかもしれませんが、人が想像する映画の世界の中の未来像では、ユビキタス環境の中で日常的に3Dなどを操る状況が描かれたりしています。この分野は、人間の発想と直感という観点でも、まだまだ進化の余地を残しています。

   さて、最新のWindows Vistaでは、これまでの.NET Frameworkの歴史においてはじめて、そのランタイムがOSにプレインストールされた形で提供されています(注2)。こうした点からも、.NETの基盤が、OSなども含む様々な層で活用されるまさしく「基盤」となっていることを理解していただけるのではないかと思います。

注2: .NET Framework 3.0は、Windows Vista以外のWindows XPやWindows Server 2003においてもインストールして動作させることができます。

   またOfficeの世界でも、新しく登場したthe 2007 Microsoft Office system では、さらに.NETを意識した進化が行われています。従来から.NET Frameworkを使ってExcelやWordなどで動作するアプリケーションを構築することが可能でしたが、InfoPath 2007 では、イベント処理などの実装もすべて.NETを使用して構築できるようになりました。

   また第2回で、WebServiceHandlerなどを例にASP.NETのフレームワークとしての動作(パイプライン処理)について簡単に説明しましたが、こうしたASP.NETのWebサービスやWebフォーム(画面を持つWebアプリケーション)のフレームワークでは、構成ファイルなどを使ってその動きの1つ1つを細かくカスタマイズすることができます。例えば、Officeの主要サーバ製品であるOffice SharePoint Server 2007(または、Windows SharePoint Services version 3.0)では、こうした構成をカスタマイズすることで、ASP.NET 2.0のフレームワークをそのまま使用して、ASP.NET上で動くアプリケーションの1つとして実装されるようになりました(以前のWindows SharePoint Services では、SharePoint独自のフレームワークによって処理され、必要な処理のみASP.NET 1.1の処理を呼び出して実行していました)。

   また、Office Project Server 2007においても、.NETを使ってAPIなどが実装しなおされています。このため、これらのOfficeサーバ製品では、Webサービスによるアクセスや、WFを使用した業務プロセスの作成を行うことができるようになっています。

   このように、Windowsの世界では、着実に.NET化ともいうべき傾向が進んでいることがおわかり頂けるでしょう。第1回でも述べた実行基盤としての信頼性という観点を理解しなければ、このように.NETを使ってわざわざ構築しなおす理由はまったく理解できないと思います。しかし、ここまで読み進めてこられた読者の皆さんならば、マイクロソフトがこうしたアプリケーションの主要な領域まで.NET Frameworkを使った実装を進める理由が少しでも納得していただけるのではないでしょうか。

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マイクロソフト株式会社 松崎 剛
著者プロフィール
マイクロソフト株式会社  松崎 剛
1969年生まれ。慶応義塾大学院数理科学専攻修士(博士前期)課程修了。1994年より、情報システム系技術者としてのシステム構築、ソフトウェアプロダクト開発、技術系コンサルティング(アドバイザー業務)などを複数企業で経験。マイクロソフトでは、デベロッパーエバンジェリストとして、開発者向けのセミナーなどを主体とした活動を実施。


INDEX
第3回:最新のフレームワーク.NET Framework 3.0
  .NET Frameworkに加わった新しいテクノロジ
  Windows Workflow Foundation(WF)
  Windows Presentation Foundation(WPF)
.NETのこれから