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ビジネスとITのギャップを埋める〜システム開発の失敗を招く4種類のギャップ〜

第3回:ゴールのギャップを埋める施策
著者:ウルシステムズ  土田 浩之   2007/4/17
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ゴールのギャップを埋める3つの施策

   筆者が実際にコンサルティングを行ううえで、CEOをはじめとする経営層と、CIOをはじめとする情報システム部門の間にあるゴールのギャップを埋める際に、必ず行う3つの施策を紹介する。

   これらは「第2回:ゴールのギャップを考察する」で述べた、CEOのシステム理解における次の課題を解決することにつながる施策である。
  • ビジネスとシステムの関係の理解不足
  • 時間的な観点でのシステムの理解
  • システムの全体観の欠如

表1:CEOのシステム理解における課題


ビジネス粒度でのシステム説明

   まず第1に、CEOをはじめとする経営層に理解してもらえる粒度にあわせて各システムの状態を報告する。情報システム部門では個別システムごとに担当者が存在するため、各担当者によって情報を提供する粒度が異なる場合が多い。

   あるシステムの担当者はシステムの個々の機能の説明を行い、別のシステム担当者は業務上の課題を説明するといった状況である。さらにシステム開発ベンダーの資料を再利用した説明がなされた場合、さらに細かい要件や設計に関する内容が中心となりCEOには理解不能なものになる。

   そのため、経営層向けに説明することを目的に各担当者から提供された情報だとしても、そのまま使うのではなく、集めた後にシステムごとに一定の粒度に揃えてから提供するべきだろう。

   このとき重要なことは、システムの機能的な説明よりも、管理会計の視点から開発投資額や運用費用を述べ、売り上げ/利益に占めるシステムの貢献度を中心にすることである(図1)。

ビジネス粒度でのシステム説明の例
図1:ビジネス粒度でのシステム説明の例

   このようなチャートを用い、ビジネス/サービスとシステムの関係、その開発と保守にかかっている費用を整理してみせるとよい。この他に利用目的や収益別の整理も有効である。

   こうした説明を行う場合、過去に説明した資料との関連性に関してもリマインドできるようにすることも大切である。説明の粒度を日頃からあわせることによって、理解の幅が広がっていく。


長期プランにおける位置づけ

   第2に、過去のシステム開発の経緯と今後のプランをビジネスと結び付けて理解してもらえる資料を作成する。情報システム部門が説明する資料には、ハードウェアやシステムの構成は記述されていても、そのシステムがビジネスプランとどのように結びついているのかは書かれていないことが多い。

   しかし、最適なシステム投資を行うためには、実際のビジネスプランとシステムを結び付つけた報告が必要になる。例えば「開発中の新製品に合わせて営業品目を増やすには、商品データベースを新規に追加する必要がある。このタイミングで追加を行うことで、今の3倍の品目を扱えるようになり、現在のペースで新製品の開発を続けても今後5年は利用することができる。開発と運用は自社では行わずASPサービスを利用することで、初期投資を抑え販売数の増加にあわせた利用料をあわせて説明する払うことが可能だ」といった具合である。

   このためには、システムを開発のフェーズだけで捉えるのではなく、開発したシステムをどのように運用していくのかを、現在運用しているシステムと合わせて説明することが重要になる(図2)。

長期プランにおける位置づけの説明の例
図2:長期プランにおける位置づけの説明の例

   このようなチャートを用い、各システムのライフサイクル、つまり検討から開発、運用、廃止にいたるまでのプランを明確にしておくとよい。これにより、システム投資の時間的な全体観を常に意識してもらうことができるようになる。


CEO用俯瞰図の作成

   第3に、ビジネスプランの変更に合わせてCEO自らがシステムの全体像を常にチェックできるような俯瞰図を作成する。企業内のシステム全体を説明する資料として、100ページを超える資料が作成されていることが多い。それは正確な資料かもしれないが、CEOや経営層が全体観をつかむのには不適切だ。

   そのかわりに、A3の書類1枚もしくは多くても数枚の資料で内容を理解できるようなチャートを用意するのである(図3)。

CEO用俯瞰図の作成
図3:CEO用俯瞰図の作成

   この資料の説明の際には、CEOをはじめとする経営層は他の多くの資料と数字を目にしていることを考えておく必要がある。また、システムとビジネスの関係を理解してもらうために必要なキーワードとなる数字やプランを具体的かつ論理的に示すよう心がける。

   このような図に従って説明することで、システムをERPといった単純な捉え方ではなく、複数のシステムの連携の上に成り立っているものであるという理解を促すことが可能になる。

   また、継続してCEOや経営層に対してシステムの説明を行うことで、CEOをはじめとする経営層と情報システム部門の間で、自社のシステムに対する共通認識を得ることができる。

   さらに、本来のビジネス上のゴールを目指すうえで課題となり得るシステム上の問題を早期に捉えることが可能になり、目標達成のための活動を加速させることにもつながる。

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ウルシステムズ株式会社 土田 浩之
著者プロフィール
ウルシステムズ株式会社  土田 浩之
10年以上メーカにおいて様々な業種のシステム開発に関わる。特に、大規模なシステム開発の経験を活かし、ビジネスが求めるシステムと実際に開発されるシステムとのギャップを埋めるべくコンサルティング業に従事。


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