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第1回:プロジェクト管理は顧客との対決ではない

著者:ウルシステムズ  村上 歴   2007/8/20
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プレキックオフでの会話 その2

   さらに会話は続く。

   結佐「まず、プロジェクト関連もそうでないものも含めて、会議が多い。朝から晩まで会議ですよ。プロジェクトの会議だけじゃなくて、部の方針とか、決裁の調整とか、他のシステム担当との意識合わせとか、ユーザ部門への根回しとか……。そんな中で、なんとかプロジェクト定例会議の時間は確保している、という状況なのに、専任で何名もアサインしてくださいとか、会議に出たら出たで今日の議題で何をどこまで決めるのかはっきりしていなかったり、先週言ったはずのコメントが反映されていなかったり……」

   弁田「確かに、お客さんがそのプロジェクトの他に何をやっているか知らないですね」

   結佐「それから、仕様を決めてくださいと簡単にいうけど、決めるには複数のユーザ部門にも確認しなければならないし、システム部内でも意見を統一するのに時間がかかる。そもそも、その仕様できちんと動くのか、他の仕様と整合性がとれるかくらいは、考えて持ってきて欲しい。単に決めの問題だけならまだしも、一緒にゼロから仕様検討する羽目になると、何のためにお金をはらっているんだか。また、進捗定例では問題がある問題があるといわれ、よく聞いてみると検索性能が出ないとか、御社推薦のミドルウェアにバグがあるとか。それ、全部御社内で解決すべき問題じゃないですか、……といいたいことも多々ありましたよ。問題を掘り下げるとすぐ技術的な説明になるのも困る。今時、普通の業務システムの要件が技術的に対応できないことなんて基本的になくて、費用や工数の問題でしょ」

   弁田「そ、そうですね(心の声:こっちにもいろいろ事情はあるんですけど……)」

   結佐「一番困るのは、リスク回避だという気持ちはわかるけど、断言を避けるところですよね。こっちは自分の腹いためてプロジェクト費用を捻出しているのに、工数はまだわからないとか、最終スケジュールはわからないとか、サーバの台数はまだ断言できませんとか。断言できないのはわかるけど、こっちもそこをお願いしているという期待がある分、今わかる範囲でよいので何かいって欲しい。『まったくわからない』といわれるとつらいんだよね」

   弁田「うーん……不確かな数字が1人歩きして痛い目を何度もみてきたのもありますし、こちらも商売なので、つい逃げ腰になってしまうんですが、お客さんからみるとそう感じるんですよね。ただ、わかっていただきたいのは、適当に回答してプロジェクトが変な前提で進んでしまったら、困るのはユーザさん。支援する我々としても無責任な発言をするわけにはいかんのですよ」

ユーザ企業と開発ベンダーの意識の違い

   どんどん熱くなってくる結佐氏をなだめる格好になった弁田氏。2人の会話はとめどなく続くのだが、つきあうのは一旦ここまでにして、彼らの会話の中に出てきたユーザ企業と開発ベンダーの意識の違いを見てみよう。

   もちろん、この話はデフォルメしたユーザ企業と開発ベンダーを取り上げたもので、実際の現場はもっと努力しており、お互いの信頼関係やこれまでの経緯、その他の登場人物の存在によって対立の内容や程度も大きく変わる。

   しかし、ここにあげたような対立は珍しいものではない。

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ウルシステムズ株式会社 村上 歴
著者プロフィール
ウルシステムズ株式会社  村上 歴
シニアコンサルタント。8bit時代からのコアな技術屋であり今でもそのつもりだが、最近はパワーポイントの方が主な成果物になっている。「この矢印の意味は何ですか?」のように、文書を添削してくれるツールがつくれないか思案中。


INDEX
第1回:プロジェクト管理は顧客との対決ではない
  プロジェクト成功の定義は「ユーザが納得する」こと
プレキックオフでの会話 その2
  ギャップを埋める「リアリティ」の原則
  リアリティを作るための5つのコツ