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第1回:プロジェクト管理は顧客との対決ではない

著者:ウルシステムズ  村上 歴   2007/8/20
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リアリティを作るための5つのコツ

   ここで紹介する5つのコツをユーザ企業と開発ベンダーの双方が身につけることで、プロジェクトについてのリアルな議論をすることが出来るようになる。

   「身につける」とはどういうことかというと、プロジェクトのいろいろなシーンでこれら5つのコツを1つ1つ心の中で唱えてみて、ハマりそうなものを探すということだ。常に全部に従う必要もない。たかだか5つなので、チェックリストとして心にとどめておき、使えるものだけ使えばよいのである。
リアリティを作るための5つのコツの使い方
図3:リアリティを作るための5つのコツの使い方


1.「このままだとこうなる」

   議論が白熱すればするほど、今の話をしているのか将来の話をしているかが混乱したり、いらぬ心配なのか必要な心配なのかについて認識がずれたりすることがある。

   このようなときは、「このままだとこうなる」というプロジェクト像を、リアリティを持って描くとよい。例えば要員数、バグの数、画面数、レスポンス、などを具体的な数字にする、スケジュールに具体的な日付をいれてみる、などとすると、今そのことについて議論が必要なのかどうかがはっきりする。


2.「これでいいですよね」

   「こんな問題があります」や「どうしましょう判断してください」という態度は、ギャップの片側から反対側に問題の解決を丸投げする態度である。

   判断してくださいといわれた側は「どう判断するんだっけ、そのためにはこんな情報も必要だ」ということを考え出す。そして最終的に「こうするといいはず、だからこうしませんか」とリアリティのある解決案まで自分で落とせるはず。これがギャップを埋める態度である。

   受け取る側もその案の改善点を指摘すればよく、建設的な議論ができる。


3.「エイヤで仮決め」

   不確実な要素があってなかなか話が進まないときは、どんどん仮決めする。いついつまでに決めなければこうなるということにしましょうか、というアプローチも非常によい。想像力を働かせ、決めうちで書いてしまう。不確実だから書かない、だと、いつまでも不確実なままになる。

   一度書いてしまえば、それの問題点を具体的に指摘しながら改善していくことができるる。怖がらずに不確実なこともエイヤで仮決めして、形にすること。ただし「仮決めした上での話です」ということを必ずことわっておくこと。


4.「とことん具体的に」

   言葉を選んだとき、図を描いたとき、説明するときに、「具体的には?」と何度も繰り返すクセをつける。会議で聞かれて詰まるのは、掘り下げが足りないということだ。

   例えば「成果物として要件定義書をつくります」と聞けば、小目次はどんなもので、それぞれ何ページくらいですか、と質問してみる。「それはこれから検討です」といっているようでは、手探りではじめるようなものだ。手探りしている間はプロジェクトは進まない。あらかじめ当たりをつけておき、以降の作業ではそれを確かめていくようにすると、作業を行うごとにプロジェクトが進んでいる感を共有できる。


5.「わかりやすさに手間を」

   せっかくプロジェクト像にリアリティを出しても、読み手にとってわかりづらければ意味がない。

   わかりやすさを出すためには、面倒くさがらず同じことをいろいろな視点で描くとよい。特に、プロジェクト管理関連の資料では、時間と共に変わる体制やプロジェクトのタスクと成果物の関係、成果物同士の依存関係など、1つの図や表で描ききるのは難しい題材が多い。

   手間を惜しまず、複数の図や表にわけ、1つの図では1つのことを描くようにした方が、書く側もみる側もわかりやすく、問題も発見しやすい。


かくしてプレキックオフは終わった

   弁田「……なるほど、前回のプロジェクトでなんとなくいつもと違う手応えがあったのは、ユーザ企業と開発ベンダー両方の立場がわかっている結佐氏が、こちらの立場に歩み寄ってくれていたことが大きいように思えてきました。だったら、次のプロジェクトでは、双方が同じ視点からプロジェクトを捉えられるよう、こちらもリアリティのあるプロジェクト像を描きますよ。来週のキックオフを楽しみにしていてください」

   その後、結佐氏と弁田氏は店を変えてさらに語りだしたようだ。明日の出勤は大丈夫なのか気になってしまうが、今日の話はここまで。

   次回は「リアリティ」に目覚めた弁田氏が新プロジェクトのキックオフをどう行い、結佐氏の不安や悩みがどう解消されるのかをみていくことにしよう。

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ウルシステムズ株式会社 村上 歴
著者プロフィール
ウルシステムズ株式会社  村上 歴
シニアコンサルタント。8bit時代からのコアな技術屋であり今でもそのつもりだが、最近はパワーポイントの方が主な成果物になっている。「この矢印の意味は何ですか?」のように、文書を添削してくれるツールがつくれないか思案中。


INDEX
第1回:プロジェクト管理は顧客との対決ではない
  プロジェクト成功の定義は「ユーザが納得する」こと
  プレキックオフでの会話 その2
  ギャップを埋める「リアリティ」の原則
リアリティを作るための5つのコツ