TOP
>
プロジェクト管理
> 日次スケジュール表は簡単便利
ユーザ納得のWin - Winプロジェクト管理
第2回:アクセル全開で臨むキックオフ
著者:
ウルシステムズ 村上 歴
2007/8/23
前のページ
1
2
3
日次スケジュール表は簡単便利
会議はさらに順調に進み、目下の議題はアジェンダの「6.今後の作業」である。
弁田氏「では、これまでに議論した会議体に基づいて、日次の予定をこの場で設定させていただきたいと思います」
そういって弁田氏はプロジェクタに映る予定表をどんどん書き換えていく。
弁田氏「今週以降、この打ち合わせは毎週月曜日の10時から12時の間に実施するということなので、書いてしまいます。場所はこちらの会議室でよろしいでしょうか? あと、中間報告会、8月ゴール報告会が必要とのことなので、このあたりに置いてしまいますが、いかがでしょうか?」
弁田氏は、結果が決まってから書くのではなく、こうしませんか、という内容をどんどん書き込んでいく。
A課長「結佐、8月2日の夜のキックオフって何?聞いてないよ」
結佐氏「(この間の……といいたげにチラッと弁田氏を見て)それは、秘密です」
A課長「何ですと。じゃ、17日に、夜の中間報告会をいれといて(笑)」
弁田氏「(わざと真面目くさって)では、8/17は夜の中間報告……と。場所は『いつものところ』でいいですか?」
C社はこういう冗談を気軽にいえる社風があり、弁田氏は密かにそこを気に入っている(しかし、このプロジェクトに夏休みはないようだが……)。
表5:日次スケジュール(管理チーム分)
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
この管理チームの予定表は、予定表の作成自体が重要なのではない。多くの人数が集まる必要がある会議を早めに設定することで、欠席を減らし、現場スケジュールにも影響するキーマンの不在時期を共有し、レビューや報告会などの会議設定をスムーズにすませる「ちょっとした効果」が得られるのだ。
この日次スケジュール表が本領を発揮する場は、各チームの現場レベルのタスク管理である。偉い人が退席し、会議は各チームのリーダーによって続けられる。
そこではデータベースチームのR社側のリーダーが、自チームの日次スケジュールを埋めている。いくつかは管理チームのイベントと重なっているので、最初から転記してある。その上で、各チームが毎日の打ち合わせで何をやるかをエイヤで仮決めし、明記してある。ちなみに、今日は早速、現行データベースの資料を受け取ることになっている。
表6:日次スケジュール(データベースチーム分)
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
表6をみてわかるように、細かい。ただ、先ほどのようにアジェンダを書くことに慣れているプロジェクトマネージャやチームリーダーにとっては、それを今月分、あらかじめ作成しただけでしかない。
もちろん事前にスケジュールをたてても進行するにしたがってズレが生じる。それは、毎日の打ち合わせで修正していけばよい。しかし「どうせずれるから書かない」としてしまうと、スケジュールのズレを認識できないばかりか、今の進め方で終わるのかがわからず、管理手法としては言語道断である。
このような日次スケジュールを作ることで、ユーザ企業の担当者が持つ「かなり参加していかないと絶対終わらない」という不安は「これだけやれば確かに終わりそうだ」という納得感になり、安心してプロジェクトを進めることができるようになる。
これらのポイントをまとめると以下のようになる。
プロジェクトマネジメントを助けるツール名:リアリティのある日次スケジュール
効果:必要な作業量がみえ、タスク作業期間に対してメンバー全員の納得感が得られる
プロジェクトに対するユーザ納得度への貢献:★★★★★
次回は
密度の濃い会議は終わった。議事録はリアルタイムで作っており、議論の結果はすでにその場で反映しているため、後は参加者に配布するだけだ。
弁田「では、本日のキックオフを終了します。次回は8月12日の10時からで、場所はこちら。議題は○○を予定しています……。これからプロジェクト成功までの間、よろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました」
リアリティのあるキックオフを実施した結果、結佐氏、弁田氏ともに初日にもかかわらず大量の課題を抱えることになった。しかし、これらは遅かれ早かれ手をつけなければいけない課題ばかりである。
早くから課題をみつめれば、プロジェクトが一体となってその解決にあたることに集中できる。明日からの打ち合わせスケジュールもきっちり決めてある。弁田氏は、このプロジェクトはゴールに向かって確実な一歩を踏み出した、という手応えを感じている。
さて、次回は、プロジェクト管理の定番メニューである進捗定例会について、リアリティを持たせるにはどのような工夫がなされているのかをみていくことにしよう。
前のページ
1
2
3
著者プロフィール
ウルシステムズ株式会社 村上 歴
シニアコンサルタント。8bit時代からのコアな技術屋であり今でもそのつもりだが、最近はパワーポイントの方が主な成果物になっている。「この矢印の意味は何ですか?」のように、文書を添削してくれるツールがつくれないか思案中。
INDEX
第2回:アクセル全開で臨むキックオフ
アクセル全開で臨むキックオフ
成果物の作り方をリアルに共有
日次スケジュール表は簡単便利