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システム作りのもやっと感を解消する「MOYA」

第1回:要求定義方法論「MOYA」とは?

著者:NTTデータ  平岡 正寿   2007/10/3
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要求を目に見えて理解できる形に構造化する

   この段階で、特に重要でありMOYAの特色にもなっているのが以下にあげたタスクです。
分析領域定義
プロジェクトで利用する「プロジェクト憲章」などに近いもので、「何を分析しようとしているのか?」「分析を行うのは何のためなのか?」といったことの共通認識を得る、つまり要求定義のスコープを決めるためのタスクです。特徴としては、MOYAを実施している間にこの定義を何度も見直しをかけること、XYZ分析という表現方法を使っていることなどがあげられます。
ステークホルダ分析
ステークホルダの立場やステークホルダが抱えている「課題」を認識し、ステークホルダ間の意見の相違や関係性を明らかにするためのタスクです。特徴としては、ステークホルダの想い(意見や課題)自体の関係を理解するためのツールであること、リッチピクチャという絵を中心としたわかりやすい表現方法を使っていることがあげられます。
課題分析
ステークホルダ分析で、顕在化された課題に対して「課題自体は何か」「その課題がどのように解決すると望ましい姿になるのか」「望ましい姿を望ましいと思う価値観は何か」「望ましい姿を実現するために必要なもの、もしくは制約は何か」といった分析を行うことで、その課題が潜在的に含まれている価値観などを掘り下げるタスクです。
ゴール分析
ここまでの分析の結果を踏まえ、達成すべきゴールを「ゴールモデル」という形で構造化および可視化を行います。そして、そのゴールを実現するための手段を導き出だすことが、このタスクの目的です。このゴールモデルを通じて、ステークホルダが本当に目指すべきゴールを見出し、共有し、合意を形成することを目指します。MOYAでは、このゴール分析が最も重要で、最も難しいタスクです。解決策の方向性や実現手段、それら方向性や実現手段などSTEP1のすべての分析結果がここに集約されます。

表3:STEP1で必要とされるタスク

   なお、STEP2で実施する要求仕様化につきましては、またの機会がありましたら紹介させていただきたいと思います。


MOYAへの期待

   要求定義における精度の向上、品質の向上がソフトウェアの競争力を高めることになることは間違いないでしょう。そして大げさないい方になりますが、これらの点が「今後のソフトウェアの競争におけるSIerの最後の砦」になるだろうと考えています。

   MOYAを使っている我々NTTデータとしては、MOYAがシステム開発における大きな武器であると思うだけでなく、実際に要求の品質を向上することを実感しています。

   今回、この記事を読んでいただいた皆様にとって要求の品質向上のヒントになればと考えており、さらにMOYAを通してシステム開発が成功する/システム開発競争力が高まることを期待しています。

   次回は分析領域定義について、例をあげながら解説します。

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株式会社NTTデータ 平岡 正寿
著者プロフィール
株式会社NTTデータ  平岡 正寿
技術開発本部
ソフトウェア工学推進センタ
SIerやコンサルティング会社を経て、2004年よりNTTデータに。システム開発がみんなを幸せにするには「上流工程こそ重要」という想いからMOYA策定プロジェクトに参加。現在、MOYAをブラッシュアップするとともに、多くの人に「知ってもらう・使ってもらう」ことに尽力している。


INDEX
第1回:要求定義方法論「MOYA」とは?
  はじめに
  NTTデータの要求定義方法論「MOYA」とは
要求を目に見えて理解できる形に構造化する