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システム作りのもやっと感を解消する「MOYA」

第2回:MOYAで行う分析領域定義

著者:NTTデータ  竹内 信明   2007/10/10
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実践!分析領域定義

   それでは、例をあげながら分析領域定義について説明します。

企業理念からみる分析領域定義

   XYZの成文化といわれても、ピンとこない人も多いのではないでしょうか。この課題に取り組みやすくするため、ここではNTTデータの企業理念を取り上げ、その企業理念のXYZ構造を明らかにし、CATWOE分析で検証してみたいと思います。
NTTデータの企業理念

NTTデータグループは、情報技術で、新しい「しくみ」や「価値」を創造し、より豊かで調和のとれた社会の実現に貢献する。
http://www.nttdata.co.jp/corporate/profile/mission/index.html

   この企業理念をXYZ構造で捉えてみると、以下のような分析結果が導き出されます。

Z NTTデータグループは、より豊かで調和のとれた社会の実現に貢献することを達成するために
Y 情報技術によって
X 新しい「しくみ」や「価値」を創造する活動を行う

表6:NTTデータの企業理念の分析結果

   さらに、XYZ分析の検証の観点を用いて、簡単に検証してみます。

   Xは、主な事業内容であるシステムインテグレーション事業そのものであるので、当然、実現可能であると捉えることができます。Xを行うことは、上位目的であるZの達成に寄与しており、情報技術を駆使することがXの手段であると捉えることができます。

   これを踏まえて、CATWOE分析で検証してみます。

C NTTデータの顧客
A NTTデータ
T(Pre) 現在も顧客に対して「しくみ」や「価値」を創造している
T(Post) 顧客に対し、高度な情報技術を駆使して、新たな「しくみ」や「価値」を創造している
W 1.情報技術を駆使すれば、新たな「しくみ」や「価値」を創造できるはず
2.新たな「しくみ」や「価値」を創造できれば、より豊かで調和のとれた社会の実現に貢献できるはず
3.新しい「しくみ」や「価値」を創造し、提供できることはよいことだ
4.より豊かで調和のとれた社会が実現されるのは望ましい
O NTTデータ
E 現在創造していない新たな「しくみ」や「価値」

表7:CATWOE分析による分析結果

   こちらもXYZ分析同様、簡単に検証してみます。

   変換後のTは、システムインテグレーション事業の望ましい姿であり実現可能であると捉えることができます。また、Eのような状況であるからこそ、それらを発見し変換後のTに挑戦していけるものと捉えることができます。

   さらにOやCにとって、変換後のTはよい状態であるだろうと想像がつきます。最後にWは、変換後のTを下支えする妥当な価値観であるということが理解できるかと思います。

   この分析結果をもとに、XYZの表現が「納得のいく表現か?」「みんなが合意できる表現か?」といったところを、XYZ分析とCATWOE分析の整合を検証する観点を用い、吟味していきます。

   Xを行うことによって、確かに変換前のTが変換後のTに変換されうる十分な表現であり、AはXおよび変換後のTの適任者であり、Oにとっては当然Zを実現することがよいことであると捉えることができます。

   今回の場合は、すでに企業理念として設定されたものを取り扱いました。そもそもこの企業理念を設定する過程においては、XYZという形ではないかもしれませんが、表現の吟味は行われているかと思います(ただしNTTデータの企業理念は、今回説明した分析領域定義で設定されたわけではありません)。

NTTデータの企業理念の分析結果
図3:NTTデータの企業理念の分析結果
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


まとめ

   今回は、MOYAによる要求定義を行う際に、その方向性を決めるための分析領域定義を説明しました。分析領域は一旦定義したからといってそれで終わりではなく、顧客とのやり取りの中で、本当の領域を見出していくことが重要となります。

   次回は、要求定義を行う上でのステークホルダ(利害関係者)の状況を分析する、ステークホルダ分析を説明します。

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株式会社NTTデータ 竹内 信明
著者プロフィール
株式会社NTTデータ  竹内 信明
技術開発本部
ソフトウェア工学推進センタ
MOYA黎明期の2004年に、ビジネスモデリング方法論MOYAの普及・推進プロジェクトに参画。現場の想いを重視し、現場と共に、あるべき姿を導くことを信条としている。現在、MOYAの研修講師や現場へのMOYA適用を中心として、MOYA普及・推進に日々奔走している。


INDEX
第2回:MOYAで行う分析領域定義
  何を達成するため?何によって?何を行う?
  CATWOE分析の実施
実践!分析領域定義