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システム作りのもやっと感を解消する「MOYA」
第3回:MOYAで行うステークホルダ分析
著者:
NTTデータ 竹内 信明
2007/10/30
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実践!ステークホルダ分析
それでは適例に沿って、ステークホルダ分析について解説します。
営業支援システムのリプレース案件からみるステークホルダ分析
とあるメーカ企業で、既に導入済みの営業支援システムが稼動しているが、色々と問題があり、この度、営業支援システムの刷新を行うことになりました。刷新に先立ち、このメーカ企業のステークホルダ分析を行ってみたいと思います。
まずは、ステークホルダの洗い出しです。経営層、営業本部長、営業部社員、情報システム部、工場、販社、顧客をステークホルダとして洗い出しました。
営業支援システムを直接的に利用している立場、営業支援システムに間接的に関与している立場、営業支援システムのリプレース権限のある立場を、ステークホルダの洗い出しの観点としました。
その後、各ステークホルダにヒアリングした結果をまとめたものが表5です。
経営層のヒアリング結果
刷新の効果があるのであれば、出資は可能
営業本部長のヒアリング結果
既存システムは、毎年、費用を投資している割には、営業業務の効率化がはかれていない
営業業務フローの見直しが必要
営業社員のヒアリング結果
ある条件下における見積もりの場合、特殊な操作をしないとできないため、操作ミスを起こしてしまう
改善要望を出しているのに、なかなか対応してもらえない
お客様からのクレームのデータが参照できない
情報システム部のヒアリング結果
細かな改善依頼が頻繁に営業部からくるので、自分たちで改善作業をできるようにしたい
既存システムの今年度予算を消化してしまったので、別途、刷新用の予算立てが必要
システムの運用は、できればアウトソースしたい
表5:ステークホルダからのヒヤリング結果
これらヒアリング結果を受け、次のようなリッチピクチャを作成してみました。
なお、今回のヒアリングでは工場、販社、顧客へのヒアリングが行えなかったため、これらステークホルダの課題や意見に関しては、営業部社員から話を聞くことで代替しています(図3)。
図3:ヒアリング結果のリッチピクチャ
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
作成のポイントとしては、メーカ企業の内外でのカテゴライズを行い、ヒアリングが実施できた人は青色、そうでない人は黄色で表しています。それぞれの関係性については、今回は関連のみで留めています。
これ以降は、作成したリッチピクチャを基にして、今は設定していない対立点の見極めなどを行います。例えば、情報システム部へ確認をした際に、営業社員の立場になって自分たちの意見を見返してもらったり、営業社員の意見を受けて新たな意見を導き出したりといったことを行います。
そこで得た情報を基に、リッチピクチャをブラッシュアップしていきます。なお、どこまでブラッシュアップするかに関しては、分析領域定義で定義した範囲に関係しているステークホルダが抽出され、それらステークホルダの言い分が十分表現されているかどうかという点が1つの目安になります。
リッチピクチャのブラッシュアップが一通り完了した段階で、関連の多い課題や対立関係にある課題を主要な課題として選び出します。
現状のリッチピクチャから、営業支援システムの改善依頼の対応スピードを速めることが、このメーカ企業の営業機会損失を逃さないための「課題」であると考えられます。
まとめ
今回は、ステークホルダ間の意見の対立・関連の状況をリッチピクチャで表現し、それらを全体として捉えて検討すべき課題を選び出すステークホルダ分析について説明しました。
次回は、ステークホルダ分析によって選び出された今後検討すべき課題の潜在的な部分を深堀する「課題分析」、そして気づきと合意でゴールを可視化する「ゴール分析」を説明します。
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著者プロフィール
株式会社NTTデータ 竹内 信明
技術開発本部
ソフトウェア工学推進センタ
MOYA黎明期の2004年に、ビジネスモデリング方法論MOYAの普及・推進プロジェクトに参画。現場の想いを重視し、現場と共に、あるべき姿を導くことを信条としている。現在、MOYAの研修講師や現場へのMOYA適用を中心として、MOYA普及・推進に日々奔走している。
INDEX
第3回:MOYAで行うステークホルダ分析
ステークホルダ間の対立・関連の見極め
ステークホルダ分析の実施
実践!ステークホルダ分析