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コスト構造の今後の変化〜SaaSモデルに有利な要因
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では、このコスト構造は今後何らかの要因で変化していくのだろうか。そしてそれはSaaSおよびパッケージのビジネスモデルの有利/不利という点に、どのように影響してくるのかを考える。
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1. 削減傾向にあるインフラ投資とサーバ運用費
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まず、インフラ投資とサーバ運用費(データセンター維持費)は、これまでSaaSビジネスにとってもっとも大きなコスト要素となっていた。
しかし、近年ブレードサーバのような高密度で管理の容易なサーバの出現や省電力化、VMwareなどの仮想化技術の進歩など、急速なサーバ技術の革新により、ハードウェアのコストは年々少なくなっている傾向にある。
すなわち、従来はユーザ数が増えるごとに一定量でサーバ台数やCPU、メモリなどを増設する必要があり、センタースペースや電気料金が増えていた。これが年々ユーザが増えてもダイナミックにリソースの割り当てができたり、1ユーザ当たりのセンタースペースや電力消費量が減ってきているという点で効率化が進み、SaaSモデルにとって有利な状況になってきているのである。
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2. ユーザが増えれば増えるほどスケールメリットが出るSaaSモデル
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ここまでで見てきたように、「マルチテナント(いわば、データベース・アプリケーションレベルの仮想化技術)」の実現や、単一バージョンのみサポートすればよいサービス形態、開発コスト・マーケティングコストを圧縮できる仕組みなどにより、SaaSモデルはユーザ数が増えれば増えるほど、1ユーザ当たりにかかるコストが減り、投資効率が格段に良くなるため、スケールメリットが出るようになっている。
唯一、足を引っ張っていたインフラ投資・サーバ運用費についても、前述の通り、ハードウェアの技術革新により、年々減少していくことが想定できる。
そして、ベンダーにとってコストメリットが出るということは、いずれはそれがユーザ側の支払いコストの削減に還元されることなる。それによってユーザ満足度が上がると、さらなる新規ユーザが集まり、それがまたビジネスの投資効率のアップにつながるという好循環が、今後加速するという展開が想定できるのだ。
このように見てくると、SaaSのコスト構造は将来にかけて一層有利になっていく要素が多いのに対して、パッケージモデルの方は今後もユーザ増加に比例してベンダー負担も増していくという構造が続くものと考えられる。
現状では、両者のコスト競争はユーザ規模などの条件によってどちらが有利か微妙ではある。しかし今後将来にかけては、SaaSの方が急速にパッケージモデルを乗り越えていく可能性が高いといえるのではないだろうか。
近い将来鮮明になってくるだろうSaaSの潜在的なコスト破壊力が垣間見える。
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次回は
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今回は、ベンダー側からみたSaaSおよびパッケージビジネスのコスト構造について検討してきた。次回は、ユーザ側から見た支払いコストの構造と、それに対応して得られるベネフィットについて考えてみたい。
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著者プロフィール
みずほ情報総研株式会社 古川 曜子
金融ソリューション第2部
1999年、富士総合研究所(現みずほ情報総研)に入社。民間企業、中央官庁のナレッジマネジメントやEA関連のコンサルティング業務に従事。現在は、企業情報ポータル、検索エンジンなど、「エンタープライズ2.0」のソリューションを活用した企業内情報活用のためのシステム構築業務に携わっている。著書に、「ITとビジネスをつなぐエンタープライズ・アーキテクチャ」(中央経済社)、「サーチアーキテクチャ」(ソフトバンククリエイティブ)(いずれも共著)。
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