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第1回:TOMOYO LinuxがPacSec2007に出会った

著者:NTTデータ 原田 季栄

公開日:2007/12/12(水)

TOMOYO Linuxの講演

TOMOYO Linuxプロジェクトの講演は、毎回イベントの内容と伝えたいメッセージを基にコンセプトを考えた後で作業を具体化し、準備を進めていきます。あらゆる作業はすべてコンセプトにつながっており、資料はいつも新規書き下ろしです。

今回のコンセプトは「TOMOYO Linuxであればシステムを把握し、使いこなせる」で、開会の9日前に決定しました。国際会議であるPacSecはバイリンガルで講演が行われます。そこで資料も日本語と英語が必要なのですが、日本語から英語にするより英語から日本語にするほうが簡単なため、最初から英語で書きはじめました。

会場である青山ダイヤモンドホールの横長の部屋には、壁面に4つのスクリーンが用意されていました。2つずつ日本語/英語の両バージョンが投影される仕組みです。音声についても日英/英日の同日通訳があり、講演はもちろん質問まで、どちらの言語にも対応する、徹底的なバイリンガルぶりです。

講演当日の朝には配布用資料(ハンドアウト)として、PDF形式の資料(日本語版/英語版)とPowerPoint形式の講演資料(英語版)を用意していました。しかし最初の講演を聴講したときに、日本語と英語で講演資料を投影することがわかったため、急遽日本語講演資料も用意しました。

問題は発表する言語です。「日本人である自分が、日本の参加者の方もいるところで、英語で説明を行い、それを日本語に翻訳してもらう(ややこしいですね)」のはなんだか変な気がします。そこで、英語で書いた講演資料を日本語で説明することにしました。

発表時には同時通訳のレシーバをつけ、自分が話した内容が通訳によって英語に翻訳されることを確認しながら話しました。同時通訳は2人の方が交代されながら行っていましたが、さまざまな専門的な内容・用語を含む講演内容が極めて迅速に的確に、かつ素晴らしい発音で翻訳されていて感銘を受けました。

図2:講演資料は英語と日本語の両バージョンが用意され、同時通訳も行われる
図2:講演資料は英語と日本語の両バージョンが用意され、同時通訳も行われる
そのほかの写真 by hirosan

TOMOYO Linuxの配布資料(実際には配布されなかった)と日本語/英語の講演資料は下記のリンクよりダウンロードできます。また、他の講演資料についても後日PacSec公式サイトにて公開される予定です。

配布用資料(実際には配布されませんでした)
http://sourceforge.jp/projects/tomoyo/document/PacSec2007-handout.pdf
日本語講演資料(デモ動画付き)
http://sourceforge.jp/projects/tomoyo/document/PacSec2007-ja-demo.pdf
英語講演資料(デモ動画付き)
http://sourceforge.jp/projects/tomoyo/document/PacSec2007-en-demo.pdf

今回の講演「TOMOYO Linux: A Practical Method to Understand and Protect Your Own Linux Box」では、他のセキュアOSにはない特徴であり使い方である「システムの振る舞いを解析できる」点にフォーカスしました。

それをあらわすのが「Understand」という言葉です。「Understand and Protect」としたのは、「護る(Protect)」ためにはまず「把握(Understand)」しなければならないという意味であり、「理解していないものを護ることはできない」ということを訴えています。

「Your Own Linux Box」には、「自分のLinuxサーバをもっともよく知り、もっとも大切にしなければならないのは自分自身だ。TOMOYO Linuxを使って自分のLinuxサーバを護って欲しい」、そんなメッセージを込めています。

講演では、「理解し、護る」ことが単なるスローガンではなく、本当に可能になっている(Practical)ことを説明とデモにより紹介しました。

TOMOYO Linuxの講演ではいつもデモを含めるようにしていますが、今回は上記のコンセプトを表現するものとして2つの動画を作成し、説明資料に挿入しました。その動画は公開している講演資料中からも参照できます。

1時間弱の説明を終えたとき、伝えたかったコンセプトと主張が、確かに参加者の方々に届いた手応えを感じました。また1人の講演者として「PacSecというイベントに参加して良かった」と、素直な気持ちでそう思いました。

PacSecではTOMOYO Linuxの発表に限らず、全体的にあまり質疑は多くなかったのですが、「TOMOYO Linuxはあなたの会社で活用されているのか?」というちょっと不思議な質問がありました。

商用システムの導入事例」を講演で紹介していますが、その後活発に使われているとは残念ながら(まだ)いえません」と回答したところ、「それはあなたの会社のポリシーか?」と重ねて聞かれたので、つい笑ってしまいました。

自社で開発したものを使わないポリシーなんておかしいですよね?

「別にそうしたポリシーがあるわけではありません。ただ私の会社(NTTデータ)のメインのビジネスドメインは、クレジットやバンキングなどの大規模なシステムが中心であって、Linuxやオープンソースの活用はこれから注力していくところです」と説明しました。 次のページ


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株式会社NTTデータ 原田 季栄
著者プロフィール
株式会社NTTデータ 原田 季栄
北海道室蘭市生まれ。1985年北海道大学工学部応用物理学科卒。同年NTT(横須賀研究センター)入社。現在の所属は、株式会社NTTデータ技術開発本部。2003年よりオープンソースの研究開発に取り組む。「使いこなせて安全」を目指すTOMOYO Linuxプロジェクトのマネージャ。
haradats@nttdata.co.jp


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第1回:TOMOYO LinuxがPacSec2007に出会った
  PacSec2007に参加して〜はじめに
TOMOYO Linuxの講演
  ライトニングトーク(あるいは「vi男祭り」)