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Chapter 2:The Fourteenth Speaker of the PacSec2007

Author:Toshiharu Harada

January 23, 2008(Wed.)

偉大なるハッカーを悼む

itojunの個人的なホームページはその主人とともに失われてしまい、もう参照することができなくなってしまいました。しかし、もしそれを見たことがある方であれば誰でも彼がその素晴らしい経歴の中でPacSecへの参加を誇りに思っていたことを覚えていることでしょう。私は、PacSecが彼にとって特別な会議なのだと思っていました。

私は10月の31日にDragosから「比類ない哀しみとともに(With great sadness)」という書き出しではじまるメッセージを受け取りました。それをご紹介します。

比類なき哀しみとともに、私はItojunがPacSec2007でそのIPv6についての偉大な見識を発表できなくなったことをお伝えしなければなりません。いくつかの情報源から昨日Itojunが亡くなったことが伝えられました。

<中略>

彼は私がこれまで出会ったすべての人たちの中でも特に優秀で、特に親切な人でした。彼は彼の周囲にいるすべての人たちを手伝いました。彼はPacSec Japanになじみのない外国の参加者達を愛想良く案内しサポートを行いました。彼は誰にとっても友人でした。彼は彼のそばにいる人たちに通常では考えられないほどの支援を行いました。私たちすべては彼がいなくなったことを惜しむでしょう。そして、彼のIPv6の仕事はこれからもずっと私たちを支えてくれることでしょう。

彼はあるとき私に「プロのドライバーはレースに参加するとき、通常よりも脈は静まり、とてもリラックスした状態で運転するものだ」といいました。私がプログラムを書くときもそうです。私は、彼がその素晴らしい愛車Fiat500でドライブしていたときのことを懐かしく思い出します。そしてこれからは紳士的で、聡明で、でも一貫性に欠けていた彼の指導なく、V6のネットワークを広げていかなければならないと思います。皆で力を合わせて・・・。

もし、あなたが彼を知っている、あるいは彼に敬意を感じていたのであれば、彼はきっと自分の死をなげく力のすべてをIPv6の拡大と強化に向けることを望んだでしょう。彼自身がその人生のほとんどすべてを捧げたように。

このメッセージのサブジェクトは「Jun-ichiro Haginoの思い出に」でした。このメッセージを受け取って少ししてからDragosは、「このメッセージをあなたの知り合いのIPv6関係者に転送すると良いでしょう」というメッセージを添えて、村井純氏のitojunを悼む言葉を転送しました。

これらのメッセージは、文字通り数百人の宛先に送付されました。私が宛先に含まれていたのは勿論PacSec2007での講演が決まっていたからで、それ以外の宛先は過去のPacSecの参加者あるいは関係者でしょう。つまりこの宛先リストはどんどん増えています。

あなたは技術的な会議の連絡リストでこのような例を知っていますか? 私は知りません。前回のレポートに書いたように「PacSecは特別な会議」なのです。

私が発表の採用通知を受け取ったのは10月19日です。私はそこに伝説的なハッカーであるitojunの名前を見つけとてもうれしく思いました。彼に会って話ができると興奮しました。しかし、その機会は影響に失われてしまったのです。

何人かの方はこう書くと不快に思うかもしれません。しかし正直にいいます。私は会議の間中、そして会議が終わってからもitojunという存在が失われたことに影響されていました。奇妙なことですが、会ったことがなく、話したことがない1人の人間の死をとても深く悼んでいました。そうでなければ、きっと私は前回のレポートを書かなかったと思います。

私はこの記事に書いた自分の気持ちを前回のレポートとともに自分の中に閉じこめておこうと思いました。しかし、気持ちが変わりました。私はitojunの存在がPacSec2007の一部であったことに気がつきました。Itojunについて、もうひとつPacSec2007に残されているものがあります。それはPacSec2007の公式ページの中にあるので、興味を持たれた方は是非探してみて下さい。

何か価値があることを行い、私達が求めている新しい何かを創造してみたいと思います。Itojunがそうしたように。私たちは今時間が与えられています。会って話をして、一緒に楽しむこともできます。そういうことです。彼の魂が安らかに眠り、彼のプログラミング魂が私たちと一緒に永遠に生き続けることを願いたいと思います。

セキュリティホールmemoの小島氏と(左から2番目)
セキュリティホールmemoの小島氏と(左から2番目)

Dragosからのメッセージ

おっと。1つ忘れるところでした。私は「ついに」Dragosから私が書いたレポートへの返事を受け取ることができました! そうです。彼は「やっと」私のPacSec2007のレポートを読んでくれたのです!

今回の記事の最後にDragosからのメッセージを紹介します。

親切な言葉とカンファレンスのレポートをありがとう。

<中略>

そのURLはまだ公開しないように。まだDSLの線だから多数の参照に耐えられないからね。来週か近いうちに本番用のサーバにデータを移すよ。そっちはいくらアクセスされても大丈夫。

良い祝日を。
--どらごす

えー、なんというかこのメッセージは大変「ドラゴスらしい」と思いました。でも私はなんとなく彼のことが好きです(彼はそうではないかもしれません)。Dragosのメッセージよると、資料配付用のURLは近日公開されるそうです(が勿論期待すべきではないでしょう)。

記事を読んでいただいてありがとうございました。では、また次回、"small talk on security"でお会いしましょう。


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Toshiharu Harada, NTT DATA CORPORATION
Profile
Toshiharu Harada, NTT DATA CORPORATION
Project Manager of TOMOYO Linux project.
haradats@nttdata.co.jp


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  After Writing the PacSec2007 report
  Missing a Great Hacker
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