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データで見るエンタープライズサーバOS市場動向
徹底比較!! エンタープライズサーバOS

第1回:データで見るエンタープライズサーバOS市場動向

著者:大神企画  富樫 純一   2004/12/3
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Linuxの“波”に乗ってよいのか?

   順調に伸長するLinuxだが、果たしてユーザーはこの波に乗っても良いのだろうか。

   亦賀氏は「Linuxをはじめとするオープンソースソフトウェア(OSS)は話題先行であり、優位性がアピールされがち」と警鐘を鳴らす。
   OSSについては、ほとんどのコンピュータベンダーが新しい収益源となることを期待して真剣に取り組んでいることは確かである。製品戦略に組み込んで、ベンダー間の競争を優位に進めようとする傾向も現れている。一方で、政府が主導となって経済活性化と技術力の向上を目指し、オープンソース戦略を打ち出している。対Windowsのバランサーとしての役目も大きい。そして、ユーザーは選択肢が増えることに期待しつつも、オープンソース=無償=コスト削減という図式を描いている。



   「しかし、現実は、すべてをOSSで構築する場合、結果としてコスト高になる可能性もあります。また、現場にスキルがない、サポート体制がない、システムの完成度が保障されないなどの懸念事項も否めません」(亦賀氏)


UNIXやWindowsは終えんを迎える?

   Linuxの市場シェアの伸長を手放しで喜べない人たちもいる。言うまでもなく、UNIXやWindowsでビジネスを展開するベンダー各社だ。

   特に、UNIXベンダーにとっては、UNIXをベースに作られたLinuxにどう取り組むのか、真剣に考えなければならない問題である。だが、UNIXには優れた点が豊富にある、と亦賀氏は見ている。

   「例えば、サーバの仮想化、パーティショニングなどの技術は、UNIXが優位であることは間違いありません。そうした優位性のあるUNIXが再考されてもよいでしょう」(亦賀氏)



   これは、対Windowsにも言えることだ。

   「Windowsは、サーバOSとしても成熟してきました。OSSも今後成熟度を向上させる必要があるでしょう。OSSを導入すれば、確かにソフトウェア・ライセンスにかかるコストは削減できます。しかし、現状のOSSでは、導入する側にスキルが求められ、リスクも高まります。ブームに乗っただけで導入した場合、Windowsに戻る可能性も高くなるでしょう」(亦賀氏)

   つまり、安易にOSSに飛びつくのではなく、自社システムにOSSを導入できるかという見極めが肝要なのである。


【ガートナーの概要】
1979年に創設されたガートナーは、米国コネチカット州スタンフォードに本拠地を置き、世界規模でIT(情報技術)に関するリサーチおよび戦略的分析・コンサルティングを行っている企業です。ガートナーの提供するサービスは、世界規模での情報収集力、産業調査力、さらには産業全体を見渡す視野の広さ、知識と経験の豊富なアナリスト、そして世界共通の定義に基づいて構築された膨大なデータベースとそれに対する高い分析力によって支えられています。
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【ガートナーのアナリストの紹介】
亦賀 忠明 (またがただあき)
ガートナー リサーチ
エンタープライズ・インフラストラクチャ担当
主席アナリスト

亦賀忠明
1985年、大手ベンダー入社。メインフレーム、ネットワーク、オープン・システムに至るさまざまなシステム開発業務に従事。米国製品の受け入れと導入、客先へのシステム提案、設計、開発、運用といったシステム開発工程全般を手がける。1997年にガートナー入社後、サーバ市場、インフラストラクチャ・ソフトウェア市場を中心に調査分析を担当。市場データによる定量分析に加え、技術動向、ベンダー戦略などを踏まえた定性分析を基に、様々な提言・アドバイスを行っている。
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ミラクル・リナックス
著者プロフィール
有限会社大神企画  富樫 純一
代表取締役。週刊COMPUTERWORLD(IDG)編集記者を経て、月刊WINDOWS WORLDの創刊に携わる。1996年に編集長。1998年に月刊PC WORLD創刊。1999年、編集プロダクションを設立して独立。現在、幅広い執筆活動を展開。また、NHK BS「何でも解決!パソコンマガジン」にレギュラー出演するなど、テレビ・講演活動にも活躍。


INDEX
第1回:データで見るエンタープライズサーバOS市場動向
  価格帯で棲み分けるUNIXとWindows
  Linuxのポジションを考える
Linuxの“波”に乗ってよいのか?