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バックアップ・ソリューションの選択基準
バックアップ・ソリューションの選択基準

第10回:今後のバックアップに対する期待と現実

著者:バックボーン・ソフトウエア  青木 浩朗   2005/5/20
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SnapVault

   複数のOSに対応したシステムとしては、NetApp社のNearStoreと呼ばれる安価なNAS装置を使用したSnapVaultというテクノロジがあります。

   もともとは、プライマリ・ストレージよりも低いコストで導入できるニアライン・ストレージに、プライマリ・ストレージのデータをバックアップするために開発されたのがSnapVaultなのですが、最近ではOpenSystem SnapVaultというソフトウェアがWindows、UNIX、Linuxなどが混在したOS環境のサーバや、クライアントを含めたデータを一元管理できるようになっているため、これからの普及が期待できます。

※編集局注: ニアライン・ストレージとはオンラインストレージとオフラインストレージの間に位置付けられるストレージのこと。アクセス頻度は比較的低いが即時アクセスが求められるデータに使われる。

SnapVault説明図
図3:SnapVault説明図

   今のところSnapVaultは普及の途上であり、DPMにいたっては開発の途上ですが、この分野のソフトウェアは、テープ装置を制御する仕組みを開発するための機材が不要ということもあり、オープンソースでの開発も含め今後増加してくると思われます。


障害の可能性

   MITメディアラボの上級所長であるニコラス・ネグロポンテが「アトムからビットへ」という有名な言葉を残しています。しかし現在は生体情報までもがビット化して電子データとして保存するようになり、可能であれば永遠に残したい情報をせいぜい5年程度しか持たないハードディスクへ保存することは、大きな不安材料であると考えられます。

   昔は故障率というと、MTBF(平均故障間隔:Mean Time Between Failures)によって計算していましたが、最近のハードディスクの故障率はAFR(年間故障率:Annualized Failure Rate)によって表現することが多いようです。

   例えばAFRが50%というと、2年に1回は故障するということになります。最近のハードディスクのAFRは0.5%〜1%程度ですので、一見かなり低いように見えます。しかしRAIDなどで複数のハードディスクを使用している場合は、その数値が乗算されていきますので、AFRが1%のハードディスクを12台使用して3年間運用した場合には、1%×12台×3年=36%となり、3台のうち1台のハードディスクになんらかの障害が発生する計算になります。

   これには、RAIDのコントローラやその他のコンポーネントの故障率は含まれませんので、実際にはより多くの障害の可能性があります。また、RAIDコントローラの障害によってRAID構成情報が損失したり、ディスクを交換して再構築している間にもう一台が障害なんて可能性もゼロではないでしょう。


データ保護≠バックアップ

   ハードディスクなどは故障する可能性があるので、データは他の媒体にバックアップしましょうという話になります。

   「バックアップ」に関する用語説明を見ると、「データの写しを取って保存すること」とあります。保存するのは将来的に使用する可能性があり、その機会が来たら取り出せないといけません。つまりはリストアして使用するためにバックアップするのです。

   システム管理者がバックアップに取り組んだ経験談として、リストアに失敗したことがあるという話をよく聞きます。それによって、巨額の開発費をかけたプロジェクトが失敗に終わるケースも後を絶ちません。

   バックアップはIT部門が必ず考えていかなければいけない重要課題です。しかし現実は、データベースやメールサーバなどの花形業務と比較すると隅に追いやられ、時として新米スタッフに任せるようなケースもあるようです。

   では、優秀な技術者によって綿密な設計の元、高性能なテープ装置やバックアップソフトを使用すれば完璧でしょうか?実はそうではないのです。テープ装置も故障の可能性はあり、バグが皆無なバックアップソフトなども有り得ません。

   重要なことは、守らなければならないデータがあり、それを保護する手段の1つがバックアップであるということです。保護手段を複数講じることにより、データの安全性は高まります。手段と目的を勘違いせずに、データ保護のエキスパートになってください。

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バックボーン・ソフトウエア
著者プロフィール
バックボーン・ソフトウエア株式会社  青木 浩朗
ストレージ専業ベンダーにて、SEおよび企画を担当した後に、2001年にBakBoneSoftware入社。主に大手ベンダーのSEを担当しながら、テクニカル・マーケティングとして、各種講演や執筆活動を行っている。最近は、特にデータベースとクラスタリングに注力し、検証レポートを作成するのをライフワークとしている。


INDEX
第10回:今後のバックアップに対する期待と現実
  バックアップに関する今後の課題
  ディスクへの集約型バックアップ
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