TOP
>
プロジェクト管理
> 明確にしていくこと
経験が物語る実践型プロジェクト管理
第1回:システム開発のスピードアップをはかる
著者:
イマジンスパーク 深沢 隆司
2006/2/15
前のページ
1
2
3
次のページ
明確にしていくこと
ここまでで、「システム開発において、開発のスピードをあげることが必要」と述べてきましたが、それを実現するためにしなくてはならないことがあります。開発者向けの書籍や雑誌記事に繰り返し書かせていただいてますが、プロジェクトの初期段階で表2のような質問についての答えを明確にしていくことが必要です。当たり前の質問ですが、この作業によって様々な作業を早く進めることができます。
何のために今回の開発を行うことになったのか
必ず実現したいことは何か
きっかけとなった具体的なことがらは
これまでのシステム化で、何が難しかったか
何が原因と考えているのか
何か危惧していることはないか
ユーザ側のシステム開発に対する体制はどうなっているか
指揮系統は明確か
承認者とその権限、スケジュールは現実的か
関係部署とそれぞれの責任者は誰か
何か重要視していることがあるか
パフォーマンス(レスポンス/データ量)
開発の進行(作業場所/機器の指定など)
納期重視かコスト重視か
何かプロジェクトに影響しそうなことはないか
人事異動でプロジェクトが終わらないうちに重要な関係者が異動にならないか
プロジェクトに大きな影響をおよぼすイベントはないか
表2:システム開発のスピードを上げるために明確にすべきこと
表2の項目は以降の大小さまざまな意志決定や個々の行動の指針となります。これはシステム開発のスピードをあげるためにとても役立ち、成果物の品質の向上を実現できます。このように意志決定や個々の行動の指針を明確にしていれば、それに基づいて行われた意志決定は誰からも責められることではないので、不安感なく(素早く)意志決定を行えるわけです。
そして、プロジェクトマネジャーは表3の能力を必要とされます。
どれだけ多くの事柄を指針として明確にできるか
どれだけ多くの指針をユーザ側から引き出せるか
現実の問題にいかに適切なバランスで素早く意志決定に適用できるか
明確化した指針と照らしあわせて、その意志決定を矛盾なく説明できるか
表3:プロジェクトマネージャーがすべきこと
こういったことから、「指針などが示されないため、特に確認をすることなくそのままにしておく(明確に確認を取っていないという意味では、わりとよく見かけます)」というのは、開発側のマネジメントとして最もしてはいけないことになります。そういったマネジメントでは、何をやっても誰かに責められるというような事も起こってきます。
ユーザ側に理解してもらいたいこと
そして顧客であるユーザ側には、表4についての理解が必要となります。
ユーザ側の担当者、承認者や責任者は想像以上の時間をシステム開発に割かなければならないこと
現場見学や現場ユーザからのヒアリングほか、開発側の作業のために様々な調整業務を行うことになること
関係各部署への事前の協力依頼をしておくこと
テスト段階で、日頃実際にシステムに接することになる人々の運用テストを綿密に行ってもらうようになること
表4:ユーザ側に理解してもらうこと
システム開発の成功は、最終的に現場のユーザからの協力をどれだけ得られるかにかかってきます。多くの場合、ユーザの現場の手を煩わせたくないという気持ちから、なかなか協力を得ようとしない方向へ進んでしまいがちです。
しかし過去の経験からして、最終的にできあがってくるシステムのことを考えれば、開発側にしっかりと現場を見に来て欲しいと考えているのが現場のユーザの基本的な要望です。現場ユーザ以外の人が勝手な判断をしないように注意しなければなりませんし、そのためにも現場ユーザの協力は必ず得なければなりません。
前のページ
1
2
3
次のページ
著者プロフィール
株式会社イマジンスパーク 深沢 隆司
株式会社 イマジンスパーク 代表取締役
陸上自衛隊少年工科学校第25期生。対空戦闘指揮装置の修理要員として自衛隊に勤務。退職後に一部上場企業や官庁でのシステム開発等で仕様策定、プロジェクトマネジメントに従事し、独自の手法で成功に導く。著書は『SEの教科書』他。
INDEX
第1回:システム開発のスピードアップをはかる
はじめに
明確にしていくこと
理念を行動に移すには