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第3回:開発形態と開発会社の規模による違い

著者:システムクリエイト  田中 徹   2004/12/3
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開発会社の規模による違い

   システム開発を発注する開発会社には、どのような会社があるのでしょうか。大手から中小まで、規模や業種によって、特徴があります。開発会社の特徴をつかむことは、発注担当者にとって大切なことです。それでは、それぞれの特徴を見ていきましょう。
大手開発会社

   メーカー系の関連会社などのシステム開発会社の場合、業種による不得意というのはあまりありません。金融事業部、流通事業部、製造事業部というように、業種ごとに事業部化されており、時代を反映しながら、人員の調整を行っています。その事業部に技術者が少なく、手が廻らないということはあるでしょうが、特定の業種の開発はやらないということはあまりありません。

   また、大手開発会社の場合、受注する開発費の下限を決めているところも多く、億単位以下は受け付けないとか、5千万以下はやらないということがあります。社内基幹業務のシステム開発を例にとると、人事管理、給与管理、財務管理、仕入・在庫管理、顧客管理、と統括的な受注になれば規模も金額も大きくなるので大手も開発します。しかし、勤怠管理と給与管理だけというシステムでは金額次第で受け付けないこともあります。

   ハード込みの開発、つまり、システムで使用するPCを相当数納品する開発の場合、関連会社などで手掛けていれば、価格面、サポート面で有利になりますので、得意な開発形態となります。

   新しい言語、ツール、データベースなどに対する反応は、その業種の流れやスタンダードスタイルに合わせることが多いので、状況を見ながら、ということになります。何が何でも最新技術に飛びつくという姿勢ではないようです。


ソフトウェアハウス

   技術者10名前後の小さな会社から、300名以上の会社まで規模はさまざまですが、システム開発関連のソフト開発のみを行っているところをソフトウェアハウスと呼びます。こういったところは、どういう人が社長なのかということで特色が出ています。大手開発会社や非コンピュータ企業の元社員という場合、元いた会社からの下請け仕事が多く、仕事量により業種が偏り、案件が多い業種が必然的に得意分野になります。たとえば「うちは物流に強い」というソフトウェアハウスの社長がいたとすれば、特定の流通会社(元社員として働いていた)からの受注が多く、従って業務知識、開発経験も多くなり、その開発経験を活かして、流通業での営業展開が多いということになるわけです。

   非コンピュータ企業で、子会社として開発会社を持つところも多くあります。そういう会社は親会社の仕事のみを受注しているところが多く、親会社からの仕事量が減れば、他社からの仕事も引き受けるという感じです。

   一方、他社とのしがらみがまったくない技術者が立ち上げたソフトウェアハウスの場合は、さまざまな業種を開発しています。得意業種を作るというよりは、仕事量が多い業種が必然的に開発経験も増え、業務知識も付き、得意分野になっていきます。親会社や安定した発注先が保証されていない分、時代の流れに敏感で、新しい言語、ツール、データベースなどの習得には反応が早いのも特徴です。数年前に「オブジェクト指向」という開発の考え方が登場したときなども、早い反応をみせましたし、最近では「オープンソース開発」ということにも反応しています。これは決して大手が遅れているということではなく、大手の開発の場合、システムの規模が大きく、開発期間も長期に渡ることから、結果、そうなりやすいということです。


発注側としてはどう判断すればいいか

   大手開発会社でもソフトウェアハウスでも、不得意分野に対して、「今後もその分野、業種の開発はあまりする気がない」場合と「たまたま開発経験がないだけで、機会があれば開発したい」という2つの意見に分かれるのではないでしょうか。まず、発注担当者として、相手の会社がどちらなのか聞いてみましょう。

   やる気のない開発会社に依頼する必要もありませんが、いままで経験していないだけで、優秀な技術者が多くいるなら、じっくり検討してください。開発するシステムによっては、業務知識より開発知識が優先されることもあります。開発にあたっての業務知識習得が容易なら、優れているSEのいる開発会社を逃す手はありません。


この連載は、ユーザ企業のシステム発注担当者向けのものです。発注担当者の方で、悩みを抱えられている方は、編集局までメール<info@thinkit.co.jp>でご相談ください。この連載を担当している田中徹氏がその解決法をお答えします。
※全てのご相談にお答えできるわけではありません。予めご了承ください。
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著者プロフィール
システムクリエイト有限会社  田中 徹
代表取締役。1963年生まれ。MS-DOS時代から、汎用機−PCでのデータ送受信を行ってのチャート(金融業)、表・グラフ描画(財務系)などのシステム開発を行う。 社内人事管理(勤怠・人材活用)、流通業、制御系の分野や集計業務なども手掛ける。ソフトウェアハウスや大手開発会社まで多数の現場で開発を経験し、33歳で独立。現在は各業種・分野でSEとして、またシステムコンサルタントとして活動中


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