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本格化するシステム運用マネジメント強化の取り組み
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第1回:システム運用マネジメントの問題
著者:野村総合研究所 浦松 博介 2005/06/15
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急増するシステム運用改善の取り組み
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企業の情報システムやその運営を担う情報システム部門の位置づけが変化していく中で、取り残されていた感のある情報システムの運用部門だが、最近これらを見直す動きが盛んになっている。これら見直しの契機について述べる。
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法規制(コンプライアンス強化)への対応
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コンプライアンス強化が経営課題と言われて久しいが、最近これらコンプライアンス強化が単なる号令ではなく、具体的な動きとなって現れ始めている。特に今年の4月から個人情報保護法が本格的に施行されたことは大きく、個人情報の取り扱いを疎かにするとその企業経営者は刑事罰の対象となった。
米国では、エンロン事件などを契機に2002年から上場企業に対して財務諸表の正確性の保証や企業の内部統制の有効性の評価を義務づける企業改革法(サーベインス・オックスレイ法)が施行された。日本でもこの流れを受けて2003年3月に「企業内容などの開示に関する内閣府令」の改正や、西武・コクド事件をうけて、東京証券取引所が今年1月から東証上場企業に対して有価証券報告書に不実の記載がない事を経営者が認識している事の通知、適時開示に関する社内体制の開示の義務づけなどを行っている。これ以外にも経済産業省・金融庁・経済団体連合会など官民様々な団体で企業統治に関する法律・規制の見直しの契機が高まっている。
ほとんどの上場企業が個人情報や財務諸表の元となる情報を情報システムで管理・作成していることを考えると、これらの法規制に対応するためには、情報システムそのものや運用プロセスまで含めた見直しを行う必要性が出てくるのである。
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アウトソース契約の見直しのタイミング
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数年前に情報システムの運用業務のアウトソースや、情報関連子会社の丸ごとアウトソース(情報関連子会社のアウトソース事業者への売却を含む)を行った企業の多くが契約見直しのタイミングにきている。
当初の期待通りの効果が得られていない理由は何か、アウトソース事業者は真剣に運用業務改善に取り組んでくれているのか、アウトソースの効果を享受するために今後どのように運用業務を考えていくべきか、といった事から新たな契約スキームの導入を検討している企業は少なくない。
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ITILの登場
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日々の業務に埋没しており、属人化してしまっている運用部門を抱えているCIOにとっては、自社の運用業務の水準をベストプラクティスと比較ができるようになったということ、そして運用業務の改善に向けた定量的な目標値を運用要員に対して与えられるようになったという2つの意味で、ITILの登場はインパクトが大きいといえる。
別途ISO化の動きもあるため、情報システム運用のアウトソースサービスを提供する企業でも、「ITIL準拠」という看板を得るための動きが活発化している。ITILについては、後の回で解説する。
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企業業績が上向き、余裕が出てきた
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最近、全産業で経常利益が過去最高を記録するなどの記事がメディアをにぎわしている。6月6日に財務省が発表した1〜3月期の法人企業の統計調査によると、企業の設備投資は全産業平均で前年同期を大きく上回った結果となっている。
経営者が設備投資を積極的に行う環境が整い、その一環として情報システムの運営や在り方について改めて見直す余裕が生まれてきたことが、現在の情報システム運用の改善・改革の取り組みが急増している最大のきっかけであると考えられる。
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まとめ
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今回は情報システム運用に関する取り組みが急増している背景やきっかけについて報告した。次回はシステム運用マネジメント強化の取り組みを行う上での課題について報告する。
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著者プロフィール
野村総合研究所株式会社 浦松 博介
野村総合研究所 システムコンサルティング事業本部 産業ITマネジメントコンサルティング部 システムマネジメントグループマネージャ。入社後、アプリケーションエンジニアや海外留学などを経て現職。現在はシステムコンサルタントとして情報システムの運用改革や調達支援、プロジェクトマネジメント支援などの業務に携わる。
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