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本格化するシステム運用マネジメント強化の取り組み
本格化するシステム運用マネジメント強化の取り組み

第2回:システム運用マネジメントの改革とその足枷

著者:野村総合研究所  浦松 博介   2005/06/22
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システム運用のマネジメント強化による効果

   解説してきたようにシステム運用のマネジメントを強化することによって、最終的に企業は表1に示すような効果を享受することができるようになる。
  • システム運用の説明責任と業務品質の向上
  • 情報化運営における組織対応力の向上
  • 情報システムの耐障害性の向上とTCO(Total Cost of Ownership)の削減

表1:システム運用マネジメント強化による効果


システム運用の説明責任と業務品質の向上

   システム運用のマネジメントを強化することにより、これまで属人化・ブラックボックス化していたシステム運用業務の内容が可視化され、運用の業務量やその成果と対価の関連が測りやすくなる(システム運用に関する説明責任の向上)。

   また同時に、運用部門内部で横の連携(組織的な動き)が可能となるため、運用起因の障害の再発の抑制効果が望める。そのため、運用ミスによる障害対応のための労力やコストの削減が期待できる。

   さらに付加的な効果として、運用部門内部での横連携の促進によって運用部門横断的な業務改善を推進しやすくなり、運用部門の自立的な改善活動が促進される効果も見込むことができる。


情報化運営面における組織対応力の向上

   運用部門から企画や開発部門に対する、運用コストや企画品質(ユーザからのシステム操作などに関する問い合わせ状況)、開発品質(アプリケーション障害の発生状況)に関するフィードバックを強化することにより、これまで運用の立場を考慮せずに情報化を推進してきた企画、開発部門では、改めて運用の観点での情報化の在り方について議論が行われるようになる。

   そしてこれらの議論を通じて、情報化運営における「企画」、「開発」、「運用」の3者の組織的な連携が高まることになる。


情報システムの耐障害性の向上とTCO削減効果の享受

   運用部門が企画や開発部門に対してフィードバックを行うようになり、組織的な情報化運営が可能となった際には、情報システムの耐障害性の向上やTCO削減効果も期待することができるようになる。

   これは企画や開発部門が、情報システムの運用の効率性や組織としての技術対応力の確保といった観点持つことによって徐々に実現される。

   現在では様々な技術が採用されて複雑な構造となっている情報システムが、企画・開発段階で構造や基盤の標準化が進むことにより、中長期的には採用技術が収束され、構造の簡素化も進むのである。これによって情報システムは障害が起こりにくくなるか、もしくは障害が発生してもすぐに対応が可能となり、障害による機会ロスや対応コストの削減を期待することができる。

   さらに情報システム基盤の標準化が進むことにより、基盤レイヤ(ミドルウェア、OS、ハードウェアなど)のプロダクトに関する企業のバイイングパワーが上昇する。そのため調達時にはこれまで以上に有利な条件で、交渉が可能となることにも期待ができる。

運用から企画・開発へのフィードバックの強化
図3:運用から企画・開発へのフィードバックの強化
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   このように情報システム運用のマネジメントを強化し、システム運用を情報化運営の中心的な存在へと再生することにより、企業は中長期的に様々な形で効果を享受することが可能となる。しかしその一方で、企業に内在する様々な「カベ」によって、これら取り組みが志し半ばで頓挫することも少なくない。


システム運用のマネジメント強化を阻害する7つの「カベ」

   システム運用のマネジメント強化とは、運用部門の組織としての対応力を向上させ、さらには情報化運営全体を適正化する活動へと繋げる取り組みである。

   これらを実現するためには、組織力を底上げするためのプロセスの標準化や効率的に業務を運営するために必要となるツールの導入・構築、新たなマネジメント手法の導入があげられる。そしてこれらプロセスやツール、手法などを使いこなすための人材の育成を行う必要がある。

   表2にこれらマネジメント強化の取り組みを阻害する、企業に内在する7つの「カベ」について列挙した。

  • アカウンタビリティ欠如の「カベ」
  • 運用マネジメント軽視の「カベ」
  • 短期志向の「カベ」
  • 余力不足の「カベ」
  • 組織縦割りの「カベ」
  • 現場の意識の「カベ」
  • 考慮不足の「カベ」

表2:システム運用マネジメント強化を阻害する7つの「カベ」

   次からは、表2の7つの「カベ」について説明する。

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野村総合研究所株式会社 浦松 博介
著者プロフィール
野村総合研究所株式会社  浦松 博介
野村総合研究所 システムコンサルティング事業本部 産業ITマネジメントコンサルティング部 システムマネジメントグループマネージャ。入社後、アプリケーションエンジニアや海外留学などを経て現職。現在はシステムコンサルタントとして情報システムの運用改革や調達支援、プロジェクトマネジメント支援などの業務に携わる。


INDEX
第2回:システム運用マネジメントの改革とその足枷
  システム運用のマネジメント改革が企業にもたらすもの
システム運用のマネジメント強化による効果
  アカウンタビリティ欠如の「カベ」