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本格化するシステム運用マネジメント強化の取り組み
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第2回:システム運用マネジメントの改革とその足枷
著者:野村総合研究所 浦松 博介 2005/06/22
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アカウンタビリティ欠如の「カベ」
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運用業務はアプリケーションやミドルウエア、OS、ハードウェアなどの多くの構成要素が複雑に絡み合っている情報システムを毎日ミスなく確実にこなしてゆく、ストレス性の高い業務である。
ところが、システム運用が情報化運営サイクルの最下流に位置することや大規模な障害や情報システムに関連する経費の大半が運用段階で発生していることなどから経営者には成果が非常に見えにくい。このような理由からシステム運用に関する予算措置が難しいというCIOは少なくない。
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運用マネジメント軽視の「カベ」
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第1回でも述べたが、1990年代の後半以降に多くの企業がシステム運用に関する業務をITコスト削減の対象と捉えて、人員の削減やアウトソース化、企画・開発へのリソースシフトなどを行ってきた。そしてこれらの削減された運用部門の管理業務を、システムの企画部門が代わりに担っている企業は現在多い。
しかし情報システムの企画部門が、標準化もなされず属人的に運営されている状況や管理不在のままアウトソース化された結果ブラックボックス化している状況で運用の管理・統制を行うことは至難の業である。
実際、システム運用の「Control(統制)」が十分に機能しなくなり、運用部門の弱体化を招いてしまっている企業が現存している。それでも、自社の情報システムの運用に関するマネジメントは企画部門やアウトソースサービス提供者が代行しており、大きな障害もないので問題は感じていないと主張する企業は多い。
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短期指向の「カベ」
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システム運用のマネジメントを強化する際には、属人化した運用プロセスの標準化やツールの導入や構築、そしてこれらを使いこなす人の習熟にそれぞれ期間を要する事になる。実際のコンサルティングの現場でも、効果があらわれるのは、運用マネジメント強化の取り組みを開始してから2〜3年程度はかかるというのが実感である。
しかし、システム運用のマネジメント強化の支援を行う際に、半年や1年程度で業務改善効果やコスト削減効果を得られるとして、コンサルティング案件の社内稟議を通している企業は少なくない。
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組織縦割りの「カベ」
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システム運用はその業務の特性上、さまざまなステークホルダ(情報システムの企画・開発部門や利用者、企業の最終顧客、アウトソーサなどの協力ベンダーなど)との接点がある。したがって、運用プロセスの変更や新たな運用のマネジメント手法の導入を行う際には、これらステークホルダの了解や協力を得ることが必須となる。
しかしながら、コンサルティングを依頼する企業の中には高く厚い組織の「カベ」が存在しているところもある。これらのステークホルダが運用部門の改革に対して、他人事として捉え、協力を依頼しても非協力的な態度を示すケースを見かけることもある。
システム運用が情報子会社やアウトソースサービスの提供者側で行われている場合、プロセスや役割分担の変更によりOLA(Operational Level Agreement)や契約の見直しなどが伴うこととなるためこの傾向は特に顕著となる。
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余力不足の「カベ」
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運用現場では、稼働中のハードウェアやアプリケーションシステムごとに担当が分かれていることがほとんどであるため、システム運用のマネジメント強化など運用業務全体を見渡し、そのあるべき姿の検討を行う際には、運用部門の多数の現場担当者の時間と労力を費やすこととなる。
ところが、これまでの人員削減などの取り組みにより、現場担当者は日々の業務への対応や障害対応で手一杯となっている場合が多々あり、検討に時間を割けない場合や担当者が一堂に会して議論をする必要のある会議に出席できないなどの事象も発生する。ましては大規模障害が発生した場合は、検討を一時中止しなければならなくなることもよくある。
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人の意識の「カベ」
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システム運用のマネジメント強化の取り組みでは、運用部門が従来からの受動的な業務から脱却し、運用品質の管理責任者として能動的な役割を果たすことが求められる。これは最終的に運用担当者個々人が、運用サービス品質管理者としての責任を認識し、能動的に活動を行うといった意識改革が求められることとなる。
しかし運用担当者の中には、日々の業務を確実にこなすことに長けていても、人前で話すことや共同でディスカッションすることに不慣れな人も少なくない。よって、このような新しい取り組みでは、率先的に活動に参加したり、発言をしたりといった行動が見られないことも多い。
更にプロセスの分析や標準化、ツールの導入・構築などの業務が未経験な人も多いため、運用品質の向上という本来の目的が検討の途上で形骸化し、プロセスの標準化やツールの導入や構築そのものが目的化してしまうことが少なくない。結果として、ディスカッションをしていても担当者間で議論がかみ合わなくなり、検討が空回りしてしまうことも少なくない。
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仕組みの未整備の「カベ」
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システム運用のマネジメント強化の取り組みは、実際の効果があらわれはじめるまでには、2〜3年程度はかかるという話を先ほど書いた。
日々の運用業務と兼務の運用担当者の時間を長期間拘束し、担当者の意識改革も含めた運用業務の改革を確実に実施するためには、表3にあるような仕組みの整備なども必要となる。
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ステークホルダとのコミュニケーションの場の設定 |
情報共有を確実に行うための仕組み |
フェーズ毎の活動に対する明確な目標設定の実施 |
運用担当者の改善・改革活動を評価するための仕組み |
定期的な定着状況の評価の実施 |
運用担当者に改善・改革活動の達成状況を明確に知らせる仕組み |
ツールの導入 |
新しい管理プロセスを効率的に運営するための仕組み |
フェーズド・アプローチ |
新しい運用マネジメント強化の取り組みへの理解を組織として確実に定着させる仕組み |
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表3:システム運用マネジメント強化を行うための主な工夫
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これらの仕組みの整備を怠り、システム運用部門内部に閉じた改善活動に終始してしまった場合には、これまで説明してきた6つの「カベ」を壊して改革することが困難となり、結果運用マネジメント強化の取り組みが志半ばで頓挫してしまうのである。
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まとめ
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今回はシステム運用のマネジメント強化の取り組みの概要と期待される効果、そして改革を行う上での課題について報告した。次回はシステム運用のマネジメント強化のアプローチ方法とITILの概要及び留意事項について報告する。
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著者プロフィール
野村総合研究所株式会社 浦松 博介
野村総合研究所 システムコンサルティング事業本部 産業ITマネジメントコンサルティング部 システムマネジメントグループマネージャ。入社後、アプリケーションエンジニアや海外留学などを経て現職。現在はシステムコンサルタントとして情報システムの運用改革や調達支援、プロジェクトマネジメント支援などの業務に携わる。
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