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本格化するシステム運用マネジメント強化の取り組み
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第4回:システム運用マネジメントの強化と情報化運営の高度化
著者:野村総合研究所 浦松 博介 2005/7/6
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1. 情報化プロセスにおける運用観点でのチェック機能の組み込み
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情報化プロセスにおける運用観点でのチェック機能の組み込みについては、第2回の報告においても、「システム運用部門から企画・開発部門や情報システムの利用者に対して、情報化の証跡に基づいたフィードバックを行う」という表現でその重要性を述べてきている。
これらのチェック機能や情報のフィードバックは、図2に示す通り、「必要なタイミング」に、「必要な情報」をフィードバックすることにより、一層の効果を見込むことができる。
図2:情報化プロセスにおける運用観点でのチェックポイント (画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
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企画におけるチェック
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企画段階では、中長期的に情報化対応が必要となる事業やサービスなどの見極めを行いつつ、情報化施策の明確化やIT投資の規模概算、単年度毎の予算策定などの検討作業を行うこととなる。
企画内容の精度を上げるためには、これらの検討の過程において現在稼働中の情報システムに関する構成要素(ハードウェア、ミドルウェアなど)のライフサイクル情報(ハードウェアのキャパシティや保守サポートの限界など)や、新たな事業やサービスを提供する上で転用や流用が可能と考えられる構成要素の情報、経費に関する情報(単年度、経年など)などのフィードバックが有用となる。
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IT調達におけるチェック
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IT調達段階においては、調達対象となっているシステム運用に関連する技術やITサービスについて、企画段階で収集を行った情報や、現在稼働中のシステム運用基盤やサービス技術などの情報を元に、本番稼働を想定したコスト効率や作業効率に与える影響などの分析を行い、その結果をフィードバックする事が有用である。
第1回目のコラムでも記述したように、IT基盤や運用基盤については、自社が採用すべき技術や情報システムの全体構造などの標準化を検討し、その結果を「ITアーキテクチャ標準」として取りまとめてIT調達で活用すると、後の運用方式設計や運用環境構築において、無用な技術拡散を防ぐのに効果的である。
なお、最近では、自社以外の製品を組み合わせたSIや、開発・運用のサービスを提供するIT関連ベンダーも増えてきているため、ユーザ企業が採用技術の標準化ルールを策定し、同ルールを組み込んでIT調達を行うことは、以前と比して容易に行えるようになってきている。
ユーザ企業は、このような取り組みを主体的・継続的に行うことで、中長期的には、本番稼働環境の標準化や運用部門への技術移転の促進、情報システムの構造の簡素化などを目指すことが可能となる。
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運用方式設計・運用環境構築におけるチェック
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運用方式設計の段階では、現在構築を検討しているシステムが本番稼働する事を想定した、運用面での効率性(作業効率やコスト効率など)を念頭に、現在稼働中のシステム運用基盤の現状に基づいた、新たな運用基盤の構造の定義や、運用方式の検討、標準化を行う事が効果的である。
これら設計作業を受けて、既存のサービス内容の見直しを行い、必要に応じて新たな運用サービスの設計やサービスレベルの設定を行う事もこの段階での重要な検討事項となる。
運用環境の構築においては、運用設計の内容を元に物理的な環境の設定・構築などの作業を実施する。これらの作業を実施するにあたっては、現在稼働中のシステムの運用環境の設定情報などを参考として、効率的に作業を進めることが可能な場合が多い。
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システムテストにおけるチェック
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システムテストの段階では、基盤設計の内容に基づいて新たな本番稼働環境(疑似本番環境)が構築され、その環境を利用してシステムの本番稼働を想定した様々なテストが実施される。
運用環境については、これらのテストを通じて、運用の方式設計の精度や構築した運用環境の物理的な稼働確認を行うこととなるが、これらの確認作業を通じて既存の運用業務に与える影響の最終確認を行い、近々カットオーバーされる予定の運用基盤が効率的に運用される事を目途に、最終的に必要な修正ポイントを指摘し、反映を行う事がこの段階で求められる。
上記チェックと並行して、新システムの導入に伴い、サービスレベルの見直しや新たなサービスの提供を行う場合には、このタイミングで既存のサービスへの影響確認や新たなサービス定義、サービスレベル設定の妥当性の最終チェックを実施する。
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カットオーバーにおけるチェック
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カットオーバーの段階では、これから本番稼働を迎えようとしているシステムについて、これまでの企画〜開発〜テストを通じた全体の障害の発生及びそれらの収束状況などを評価し、本番稼働へのリリース判断をすることがシステム運用部門に求められる。
ここでは、過去にシステム運用部門で受け入れてきたシステムに関する稼働後の障害の発生状況や、それらのテスト段階におけるテスト実施密度、障害発生状況などの情報を収集・分析し、これから本番稼働を迎えようとしている情報システムの品質の分析を行う。
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案件事後評価におけるチェック
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事後評価は、事業やサービスを開始してから(=システムが本番稼働してから)一定期間を経た後に、運用サービスを利用しているユーザ企業の事業やサービスの収益性の評価などの効果測定の一部として実施する。
運用の観点からは、稼働後のシステムの維持管理に係わる各種費用(ソフトウェアのライセンス費用やハードウェアの保守サービス費など)や、システム障害の対応経緯費の発生状況について、事業運営経費の一部として報告する。
上記の定量的な報告とは別に、システムの最終利用者からの問い合わせ内容などを分析し、情報システムの設計品質や、評価対象の事業やサービスのプロセスの定着状況、システム利用の習熟状況に関するフィードバックを行うことも運用部門の重要な役割である。
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著者プロフィール
野村総合研究所株式会社 浦松 博介
野村総合研究所 システムコンサルティング事業本部 産業ITマネジメントコンサルティング部 システムマネジメントグループマネージャ。入社後、アプリケーションエンジニアや海外留学などを経て現職。現在はシステムコンサルタントとして情報システムの運用改革や調達支援、プロジェクトマネジメント支援などの業務に携わる。
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