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本格化するシステム運用マネジメント強化の取り組み
本格化するシステム運用マネジメント強化の取り組み

第4回:システム運用マネジメントの強化と情報化運営の高度化

著者:野村総合研究所  浦松 博介   2005/7/6
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情報化運営の全体最適の実現に向けて

   情報化運営の全体最適に実現に向けては、これまで説明をしてきたシステム運用の視点からのボトムアップのマネジメント強化の取り組みだけではなく、図5に示すようなトップダウン・ボトムアップ双方のアプローチが求められる。
情報化運営の最適化へ向けた取り組みの例
図5:情報化運営の最適化へ向けた取り組みの例
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   これらの情報化運営の最適化へ向けた取り組みについて、経営視点での「IT統括力(ITガバナンス)強化」、利用者視点での「IT利用力(ITガバナンス)強化」、提供者(情報システム部門など)の視点での「IT提供力(ITケイパビリティ)強化」と分類することができる。


ITガバナンスとは

   企業経営の分野では、近年、「ガバナンス」が重視される傾向にある。ガバナンスとは「統治」を指し、企業経営についてはコーポレートガバナンス(企業統治)の強化、確立が重要なテーマとなっている。

   情報システムに関しては、企業における情報化の目的が単なる業務の効率化から経営・事業戦略の実現へと変化する中で、コーポレートガバナンスの一部を司るものとしてITガバナンス(IT統治)確立の重要性が論じられている。

   ITガバナンスについては、国内外を問わずさまざまな研究や議論が行われているが、その定義については諸説があり、また概念的であるとか、捉えにくいなどといった話もよく聞かれる。

   ITガバナンスの確立を巡る議論の中で、「情報システムに対する投資を誰がどのように決定するのか」などのテーマが含まれることから、概ね「情報システムの所有者(経営者、利用部門)が企業本来の目的に沿って情報システムの導入・利用が決定されるよう、その方向性を統率していくこと」と受け止めてよいと考える。


ITケイパビリティ

   ITケイパビリティとは、「企業本来の目的に沿った情報システムやITサービスを提供することができる能力」である。これまで筆者が説明してきたシステム運用のマネジメント強化に関する議論も、このITケイパビリティの向上に資する話と見ることができる。

   ITガバナンスとITケイパビリティは、図6に示すように、期待されるITサービスの実現とその効果を企業全体(特に経営とIT利用組織)の側から見たものがITガバナンスであり、それをITサービス提供側(主に情報システム部門)から見たものがITケイパビリティという、表裏一体の関係にあると見ることができる。

ITガバナンス(統括力)とITケイパビリティ(提供力)との関係
図6:ITガバナンス(統括力)とITケイパビリティ(提供力)との関係

   企業の経営層がITガバナンスの重要性を切実に訴えても、そのITガバナンスに見合うだけのITサービスの提供や、それらを使いこなすための仕組みが整備されていなければ、情報化運営の全体最適は実現しえない事に十分に留意したい。


おわりに

   本連載では、システム運用マネジメントの強化をテーマに、システム運用マネジメント強化に関する取り組みが盛んとなってきた背景や、これらの取り組みの重要性、そして期待される効果やアプローチの方法などについて説明をしてきた。

   読者の皆さんにおかれては、これらの取り組みに様々な形で関与する場面に遭遇した際に、筆者の報告をご参考にしていただければと思う次第である。

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野村総合研究所株式会社 浦松 博介
著者プロフィール
野村総合研究所株式会社  浦松 博介
野村総合研究所 システムコンサルティング事業本部 産業ITマネジメントコンサルティング部 システムマネジメントグループマネージャ。入社後、アプリケーションエンジニアや海外留学などを経て現職。現在はシステムコンサルタントとして情報システムの運用改革や調達支援、プロジェクトマネジメント支援などの業務に携わる。


INDEX
第4回:システム運用マネジメントの強化と情報化運営の高度化
  システム運用マネジメント強化による3つの効果
  1. 情報化プロセスにおける運用観点でのチェック機能の組み込み
  2. サービスレベル管理の高度化(業務範囲の見直しも含む)
情報化運営の全体最適の実現に向けて