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ビジネス・プロセス・マネージメントの現状 〜 「経営と情報の架け橋」の実現にむけて |
第4回:ビジネス・プロセス設計におけるARISの機能
著者:IDSシェアー・ジャパン 渡邉 一弘 2005/7/13
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モデルの活用例
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モデルの活用例としては、ビジネス・プロセスを分析することが挙げられます。
例えば、図5に示すように、縦軸に業務オブジェクトを配置し、横軸に業務パターン・シナリオを配置したとします。そして、パターン毎に、業務を行うか/行わないかの洗い出し、eEPCモデルを記述したとします。
次にパターン毎のeEPCモデルを下記の観点で分析します。
- プロセスのトリガーとなるイベントは本当に十分か?
- すべての業務パターンでまったく同じやり方でいいのか?
- すべての業務パターンで同じやり方で統一すべきではないか?
- 何故一部の業務パターンだけ、プロセスがないのか?
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図5:ビジネス・プロセスの分析例 (画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
このような観点でプロセスを分析することで、業務の抜け漏れを発見し、更には業務の無駄とり、業務標準化を行うための課題を抽出します。
そして、特に抽出された標準化の課題に対し、それを業務の変更で解決するのか、もしくはIT導入による自動化で解決するのかを決定します。この作業は、自らが望むビジネス・プロセスの姿を描く第一歩になります。このように、現状のプロセスを可視化し、そこから抽出される課題に加え、自らが望む姿になるための要因を加え、あるべき姿としてのビジネス・プロセスをモデル化していくわけです。
ここで、特に、日本のシステム開発においては、ソフトウェア・パッケージを業務に合わせてカスタマイズや新規機能開発をする傾向があります。そのような状況において、業務ありきで業務の標準化をすることなしに、システムありきでのアプローチをとることが多いせいか、本来であれば標準化された業務ひとつに対して1件のカスタマイズを行えば良いものを、標準化される前の業務要件すべてに対しそれぞれカスタマイズを行うがために、非常に多大なコストが発生することがしばしばあります。
しかし、 図6に示すように、まずはビジネス・プロセスありきで、ビジネス・プロセスをモデルとして可視化し、業務の抜け漏れを発見し、無駄とり、標準化を行い、業務改善を図る部分とITによる自動化を図る部分を明確に区分することが非常に重要です。そして、ITによる自動化で解決できる範囲について、可視化された現状のビジネス・プロセスを見ながら、システム導入された状態の次期ビジネス・プロセスを描いていくことでシステム化要件を明確にし、システム機能開発を行うアプローチをとることが、システム導入の短期化(要件漏れによる手戻り発生頻度の低減など)・導入コストの低減につながります。
図6:ビジネス・プロセスありきのアプローチ (画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
このような次期のあるべきビジネス・プロセスの姿を描く作業が、この設計フェーズでは、最もクリエイティブで最も困難な作業です。現在でも、この最も困難な作業に対し、各社各様にアプローチしており、決まりきった答えは、今のところないように思えます。しかし、企業が、他の企業との差別化を図り、競争優位を保つためには、常に企業自らが、この困難な作業に対していかなければなりません。実際に私がお世話になっているお客様は、この困難な作業に自ら相対していらっしゃっており、お客様にお会いするたびに本当に頭が下がる思いでいっぱいです。
さて、この困難な作業を乗り切った次には、、あるべきビジネス・プロセスの姿に従って業務の改善・変更、もしくはシステム導入を行わなければなりません。これは、BPMサイクルにおいては、ビジネス・プロセスを導入・実行するフェーズに移る事になります。詳細に関しては、次回で紹介します。
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著者プロフィール
IDSシェアー・ジャパン株式会社 渡邉 一弘
工場でのHDD製品設計を経験後、SEとしてシステム構築を担当。日々、現場の業務とシステム機能の「ギャップ解消」に悩み、業績に直結するシステムやROIを求める経営者に対し、解決策として見出したのが「プロセス管理」というキーワード。現在は、IDSシェアー・ジャパンにてプロセス管理ツール「ARIS」のプロセスコンサルタントとして従事。
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