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IT戦略と人材マネジメント〜IT効果による人材革命
IT戦略と人材マネジメント〜IT効果による人材革命

第2回:日本と欧米の人材マネジメント
著者:日本ピープルソフト  小河原 直樹   2005/8/11
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日本型経営システム

   終身雇用や年功序列が日本企業に根付いたのは、戦後の日本企業の特殊環境下というだけでない。日本人の文化的資質が日本型経営を受け入れたのだ。日本人の美意識の中に、自己の所属する集団の繁栄を願い、その発展の為に自己犠牲もいとわない考えを人事制度として具現化したのが、終身雇用であり年功序列制度である
終身雇用制度

   年功序列や終身雇用が日本型経営システムとして意識されたのは、1958年にアメリカの経営コンサルタントのジェームス・アベグレンの「日本の経営」が出版され、その中で、終身雇用という言葉が日本語訳されてからだ。アベグレンは、終身雇を「Lifetime Employment」でなく「Lifetime Commitment」と表現していた。終身雇用の実態からいうと、終身コミットメントとした方がより的を得ているといえよう。

   終身雇用制度とは、会社の経営が破綻状況に陥らない限り、定年まで従業員の雇用を保証する制度である。ただ、これは会社と従業員の契約でもなく、法的な制度でもない。日本社会の「慣習」に過ぎないのだ。ただ、企業が従業員を合法的な理由なしに解雇することは、日本の社会の慣例上認められない。裁判所ですら、法的に根拠がなくても、今までの慣例から従業員の不当解雇を認めてはいない。

   戦後からの経済成長期にかけて、日本企業は会社独自の技術を身につけた。熟達した従業員が多数必要になったのだ。企業は必要な人材を育成する為、時間をかけて企業文化の価値観を共有し、その企業に必要な人材を社内で育てていった。その為に、長期雇用を前提とした終身雇用制度と新卒の一括採用を行なった。長期雇用を前提にすれば、従業員も自分の将来設計も立てやすくなる。そして企業に対する忠誠心も強くなる。

   終身雇用を円滑に運用し、従業員に長く働いて貰う為に、日本企業が考えたもう1つの人事政策が年功序列制度である。


年功序列制度

   年功序列制度とは、勤続年数に従って給与及び役職が上がっていく人事制度のことである。図3は年功序列下の賃金制度の考え方である。入社から数年間は、企業文化に慣れる為の投資の期間として捉えている。その為、賃金は従業員が生みだす生産性より高く支払うことになる(図2:Area1)。その後、熟練度を積んだ従業員が、賃金以上の生産性を生みだして、会社に貢献していく(図2:Area2)。そして一定の年齢を過ぎて、従業員は年功序列下の賃金制度の恩恵を受け、生産性以上の賃金を受けることになる(図2:Area3・4)。

   要は、一生涯勤めることを前提に、若いうちは老後の担保として給与水準を抑え、その分を定年までの賃金と退職金で取り戻す賃金制度である。従業員にとって、長く働けばそれだけ有利であり、会社に長期間働く動機付けになる。

年功序列型賃金制度
図2:年功序列型賃金制度

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日本ピープルソフト社 小河原 直樹
著者プロフィール
日本ピープルソフト株式会社  小河原 直樹
米国Baylor大学大学院国際ジャーナリズム学科卒業後、SAPジャパン(株)にHRコンサルタントとして入社。その後、外資系金融企業で日本及びアジア地域の人事責任者として勤務。現在日本ピープルソフト(株)でHCM Global Product Strategy. Senior Managerとして日本の製品戦略の責任者。


INDEX
第2回:日本と欧米の人材マネジメント
  日本と欧米の価値観の違い
日本型経営システム
  成果主義の実態