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IT戦略と人材マネジメント〜IT効果による人材革命
第6回:戦略的人材情報システムの導入アプローチ
著者:
日本オラクルインフォメーションシステムズ 小河原 直樹
2006/4/25
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人材情報システムの浸透
先の項目で解説したのが、企業戦略と従業員の目標を一致させ、経営資本としての人材が企業活動の中で最適に活かされるように、人材価値を可視化して、スピード経営を実現するための人材情報システムで実現できる具体例である。
社内の人材価値の棚卸を行い、企業戦略に必要な人材を調達していくプロセスをシステム化することにより、適材適所を可能にして、人材価値を高めていくことができる。
人事に求められるものは、経営目標を達成するために必要な人材の採用・育成、そして有能な人材にとって魅力あるビジネス環境を提供することである。そのために企業戦略と従業員の行動を一致させる人事政策を作り、それを社内に浸透させることである。人事制度を社内に浸透させるための媒体が必要になるからだ。人事情報システムの運用は体内に必要な栄養分を運ぶ血液の役割を果たす(図4)。
図4:企業戦略と従業員目標の一致による経営
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
しかし、どんなに素晴らしいシステムを作っても、それが社内に隅々まで広がり、運用できなければ意味がない。そこで現場への権限委譲を加速させる仕組みが必要となる。社内(現場)へ人材マネジメントを浸透させていために、社内情報システムの整備、特に人材情報システムが必須となる。人材情報システムの完備によって、情報の伝達量とスピードは100倍になる。
道具をうまく運用することで、本来の目的以上のことをも達成できる。土台は人材マネジメントである。しかしそれを何に乗せるかで運用効果が大きく異なってくる。
新しい人材マネジメントが産業革命だとしたら、人材情報システムは鉄道にあたる。1829年に鉄道が現れ、世界の政治と経済と社会は一変した。鉄道によって、人々は世界を身近なものに実感した。発明が身近なものになるのは、お手軽な利用によってはじめて可能になる。
余談であるが、著者の知り合いが採用担当として働きはじめた。以前はアパレルメーカーの販売員の仕事をしていたが、一念発起して全く新しい職務にチャレンジしている。
アパレルの営業員と人事の仕事は何の繋がりもないので大変じゃないかと聞いてみると、「お客様」を相手にする意味では同じだという返事が帰ってきた。企業の競争力の源泉である従業員を、お客様と捉えてサービスを提供する姿勢は、人事としての基本である。
どんなに優れた制度やシステムを導入しても、現場サイドに心が篭っていなければ人材改革などままならないだろう。「暖かい血液」を体内に循環させるために、彼女のような「人財」が、人事の現場で活躍することを期待したい。
次回は
戦略的人材マネジメントが上手く機能するかどうかは、戦略的人事情報システムを構築できるかどうかにかかっている。次回は、社内への人事情報システムの浸透と、人事政策が経営指数にどのように反映されるかを測定し、経営支援ツールとしての働きについて考察する。
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著者プロフィール
日本オラクルインフォメーションシステムズ 小河原 直樹
米国Baylor大学大学院国際ジャーナリズム学科卒業後、SAPジャパン(株)にHRコンサルタントとして入社。その後、外資系金融企業で日本およびアジア地域の人事責任者として勤務。現在、日本オラクルインフォメーションシステムズ(株)でHCM Global Strategy. Senior Managerとして日本の製品戦略の責任者。
INDEX
第6回:戦略的人材情報システムの導入アプローチ
人材情報化投資の実情
人員計画の可視化
人材情報システムの浸透