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Solarisがオープンソースになる 〜 サンの戦略を読み解く |
第2回:コミュニティとロードマップ
著者:風穴 江 2005/6/23
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OpenSolaris開発コミュニティ(2)
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最終的にサンが目指すのは、たくさんの人が開発に参加することによってオープンソースのメリットを最大限に享受できる体制へと、OpenSolaris開発コミュニティを持っていくことである(図4)。ここで重要なのは、開発プロセスがサンの社外にあり、Open Solarisの開発コミュニティとしてある程度の独立性を保つことにある。そうすることで、開発コミュニティに集まる人が増え、活動が活発になり、オープンソース開発モデルの利点を享受しやすくなる。
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図4:将来の開発形態
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もちろん、将来的にも、Solarisでビジネスを行なう最大の企業がサンである限り、その開発プロセスへのサンの貢献度(=影響力)は決して小さくなることはない。現実には、図3にあるような形とさほど変わらない体制が当面続くことになろう。しかし、オープンソースの開発コミュニティとして多数の人材を集め、それらが奔放に活動できるようにするためには、サンとの間に一定の距離感を保ち、ある程度の独立性、自立性を保つ(あるいは、保っているように見える)必要がある。オープンソースソフトウェアの開発者たちは、サンのために骨身を削るわけではなく、あくまでも自分たちのメリットのために貢献を惜しまないのだから、それが実感できるだけの独立性や自由度は不可欠だ。
サンにとっては、OpenSolarisの開発の主導権を握り続け、それを自社に有利な方向に持っていくことと、OpenSolaris開発コミュニティにある程度の独立性を持たせることとは、時に相反するベクトルとなりかねない。どちらかに寄りすぎても結局はうまくいかないことになるので、ここでのバランス感覚が非常に重要となる。
このような「バランス」を注意深く維持するために、サンは、OpenSolaris開発コミュニティの「舵取り役」を担う「OpenSolarisCommunityAdvisoryBoard」(OpenSolarisCAB)を設置する。OpenSolarisCABは、5人のメンバーで構成され、2人はサンから、2人はOpenSolarisパイロットコミュニティから、残る1人は既存のオープンソースコミュニティから選ばれている(表1)。ここでの意志決定は、多数決ではなく、基本的に5人全員の合意に基づいて決めていくとされているが、実際にどのように機能するのかは不明な点も多い。
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名前 |
選出カテゴリ |
主な肩書き、経歴 |
Al Hopper |
パイロットコミュニティ |
エンジニアリングコンサルタント |
Rich Teer |
パイロットコミュニティ |
Solaris コンサルタント、「Solaris Systems Programming」の著者 |
Roy Fielding |
オープンソースコミュニティ |
Apache Software Foundation |
Simon Phipps |
サン |
チーフテクノロジエバンジェリスト |
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表1:OpenSolaris Community Advisory Board のメンバー(敬称略)
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なお、OpenSolarisCABに限らず、OpenSolaris開発コミュニティについては、現時点での予想であり、また、サンとして描いている青写真に過ぎない。実際にどうなるのかは、まずOpenSolarisが公開され、開発コミュニティの活動が始まってみないことには何とも言えない面があることは、踏まえておいていただきたい。
とはいえ、いずれにせよサンは、オープンソースの歴史からさまざまな点を学び、OpenSolarisの試みを成功させるために、あらゆる手だてを講じようとしていることは確かである。これまでにも、コマーシャルライセンスのソフトウェアをオープンソース化する試みはいくつもあったが、ここまで緻密に方法論を模索し、真剣に準備してきた例は少ない。その意味でOpenSolarisは、当初の目標を達成できずに消えていった数々のオープンソース化の試みとは一線を画すものであり、今後の動向が興味深いプロジェクトであるといえるだろう。
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著者プロフィール
風穴 江
TechStyle編集長、コラムニスト。1990年から「月刊スーパーアスキー」誌(アスキー刊)の編集に参加。GNUプロジェクトなどの動向を担当していた関係から、Linuxは、それが公開された直後からウォッチし続けている。1998年にフリーランスジャーナリストとして独立。そのかたわら、日本で初めてのLinux専門情報誌「月刊Linux Japan」の編集長を務める。2002年3月には「TechStyle」を立ち上げ、編集長に就任。2003年8月から、オープンソースビジネスのための情報サービス「Open Source Business Review」を提供している。
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