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Solarisがオープンソースになる 〜 サンの戦略を読み解く
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第2回:コミュニティとロードマップ
著者:風穴 江   2005/6/23
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OpenSolarisのロードマップ

   OpenSolarisは、公式には「2005年第2四半期」に公開されることになっている(一部分であるDTraceの機能はすでにソースコードが公開されているが)。一説には、2005年6月中旬のリリースになるという噂もある。

   現時点で明らかにされているOpenSolarisのロードマップは、表2のようになっている。これによると、OpenSolarisの正式リリース時には、OS環境としてビルド可能なソースコードがすべて公開され、同時に、開発プロセスを具体的に進めるためのファシリティ──開発メーリングリスト、バグトラッキングシステム、CVSリポジトリなど──が提供されることになっている。

フェーズ 行公開 OpenSolaris正式公開 公開後
時期 2005年1月25日〜 2005年第2四半期 正式公開以降
内容
  • DTrace のソースコードを公開
  • OpenSolaris.orgサイトをオープン
  • OS としてビルド可能なソースコードを公開(カーネル、ネットワーク、ライブラリ、コマンドなど)
  • 開発メーリングリストを開設
  • バグデータベースを公開(バグ報告、バグ検索のみ)
  • コンパイラを提供
  • CVS リポジトリを公開(read-only)
  • 「Open Solaris Developer's Guide」を公開
  • コミュニティアドバイザリボードを設置
  • 周辺プロダクトのソースコードを公開(Install など)
  • OpenSolaris テストスイートを提供
  • バグ/パッチ管理ツールを提供
  • OpenSolaris 開発プロセスを公開(ソースコードツリーを管理する仕組みを提供)
  • Solaris 設計ドキュメントを公開
  • OpenSolaris 開発の主導権をコミュニティに移行

表2:OpenSolaris のロードマップ


CDDLとは?

   「CommonDevelopmentandDistributionLicense」(CDDL)は、サンがSolarisのオープンソース化に合わせて新たに作成した、オープンソースソフトウェアのためのライセンスである。OpenSolarisとして公開されるソースコードは、可能な限りすべて、このCDDLが適用されることになっている(Perlやbash、GNUutilsなども含まれているので、OpenSolarisのすべてがCDDLというわけではない)。また、今後の開発で追加されるソースコードは、原則としてすべてCDDLを適用することになっている。

CDDLのコンセプト

   サンによれば、OpenSolarisをオープンソース化すると決めた時点では、ライセンスは、すでにあるオープンソースライセンス(OSIによって50種以上が認定されている)の中から選択する予定であったという。しかし、同社の要望にぴったりフィットするものがなかったことから、新しいライセンスを作成することになった。同社が求めたのは、コピーレフトの考え方をサポートしつつ、コマーシャルベースでも手軽に利用できるライセンスだった。コピーレフト(copyleft)というのは、GNUプロジェクトを始めたリチャード・ストールマン氏が「コピーライト」(copyright:著作権)をもじって命名した考え方で、複製や改変、改変したものの再配布といった利用の自由を保証しようとするものである。

CDDLのポイント

   CDDLについては、しばしば、MozillaPublicLicense(MPL)をベースにしていると説明されることがある。これはこれで間違いではないのだが、MPLがそもそもポピュラーではないこともあって、何やら分かったようで分からない説明だと感じている人も多いだろう。

   CDDLの内容を詳しく見ると、実はGNUGeneralPublicLicense(GPL)からも強い影響を受けてることが分かる。個々の条文で慎重な表現が選ばれている部分は「GPLでは曖昧だった点を明確にしよう」という意図がうかがえる。少なくともGPLの記述を強く意識しながら作成されたことは間違いない。

   CDDLのポイントを大まかにまとめると以下のようになる。

許諾されること
使用、複製、修正、表示、実行、サブライセンス、頒布

許諾の条件
  • バイナリ形式で頒布する場合は、ソースコードも提供する
  • 修正したコードにもCDDLの条項が適用される

   こうして枝葉を省いてエッセンスだけ抽出すれば、言っていることはGPLと非常によく似ていることが分かるだろう。特に「修正したコードにもCDDLの条項が適用される」という条件は、GPLの特徴である「再帰的な適用」とよく似ている。CDDLでも基本的には、CDDLが適用されたソースコードを修正したら、自分が行なった改変部分も含めて、すべてをCDDLで提供しなければならない。

   ただしCDDLの場合は、「LargerWork」(CDDLが適用されるソフトウェアに、他のライセンスが適用されるソフトウェアを組み合わせたもの)についての条項を盛り込み、CDDL以外のライセンス(いわゆるプロプライエタリなライセンスでも構わない)が適用されるソフトウェアと組み合わせて利用することに道を開いている。この点は、GPLと決定的に異なっている。この条項により、たとえば、CDDLが適用されているOpenSolarisのソースコードの一部と、自分が独自に開発したソースコードを組み合わせて1つのソフトウェアを構成した場合も、自分が開発した部分については、独自のライセンスを適用することが可能になる。
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風穴 江
著者プロフィール
風穴 江
TechStyle編集長、コラムニスト。1990年から「月刊スーパーアスキー」誌(アスキー刊)の編集に参加。GNUプロジェクトなどの動向を担当していた関係から、Linuxは、それが公開された直後からウォッチし続けている。1998年にフリーランスジャーナリストとして独立。そのかたわら、日本で初めてのLinux専門情報誌「月刊Linux Japan」の編集長を務める。2002年3月には「TechStyle」を立ち上げ、編集長に就任。2003年8月から、オープンソースビジネスのための情報サービス「Open Source Business Review」を提供している。


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