— 本当の意味で、オープンソースで上場した企業はまだないと思いますが、初の企業になるという目標でやってきたわけですか
嵐氏:上場すること自体が目的ではないです。今は「オープンソースって使っても大丈夫なの?」とよく言われます。ベンチャーキャピタルから投資を受ける時にも、「オープンソースに初めて投資しますけど、本当に大丈夫なんですか」とさんざん言われました。カテゴリー申請しても作ってもらえなかったり、業務内容を理解してもらうだけでものすごいエネルギーがいる。
でも、オープンソースを専業でやっている会社が株式公開すれば、それはすごく意味があると思います。オープンソースは大丈夫だというお墨付きをもらうようなものですね。つまり、上場することは、会社へのお墨付きというよりオープンソースへのお墨付きだと思っているのです。それによって時代が一気にオープンソースに向くだろうと思います。
— 最初の技術者はどのように集めたのですか
嵐氏:以前の会社で採用関係の仕事もしていたのですが、その時に、すごく優秀な技術者に会いました。ある企業に採用したほうがいいですよと勧めていたのですが、彼が元の会社に引き止められて4ヶ月後まで辞められなくなってしまった。しかもその時採用するはずだった企業の方針が変わって、彼が力を発揮できそうだと思った仕事はやらなくなってしまった。
で、4ヶ月後ならちょうどいいなと思って「君がやりたいと言っていたことはやらなくなってしまったんだけど、僕が起業するので一緒にやらない?」と口説きました。彼と出会って、これでスタートできると思いました。技術者は仲間を求めるので、優秀な人がいると自然と集まってきます。
— 技術者のモチベーションや技術力を維持するには、どのような工夫をされていますか
嵐氏:やりたいことをやらせてあげることです。仕事を通じてキャリアアップできるのが一番なので、僕はそういう環境を作り上げるのが仕事です。また、技術力だけではだめだと思います。もちろん技術力は大前提ですが、いい製品を作れば売れるというものではない。お客様に対してサポートサービスができることが重要です。あとは、お客様と直に対面することによって、きちんとしたシステムが作れます。間に何階層も入れると、要求されたものとずれてしまうことがある。我々は総合力で勝負して信用を得ています。
よく、オープンソースコミュニティの優秀な人がいるとかいないとかという話になりますが、それはあまり重要視しません。個人プレイより組織力のほうが絶対強いですよ。発注側は、その人がいるから発注するわけではなく、企業としてきちんと仕事するから発注するんです。技術はあって当たり前。その先の品質管理もきちんとするということが大事ですね。
— 2000年当時に比べて、2005年はオープンソースでのビジネスはやりやすくなっていますか
嵐氏:オープンソースをゼロから説明しなくても、知ってる人が増えましたね。あとは会社の資本金や社員数が増えたおかげで、いかがわしい団体だと思われることはなくなりましたから、変な説明はいらなくなりました。有限会社から株式会社化した時にもっと早く株式会社化すればよかったと思いましたが、全然違うんですよ。さらに3年、5年と時を経てくると、それだけで信用がつきます。あとは導入の事例をあげると、あそこが使ってるならうちも使いたいとなりますね。
— 契約金額はどのくらいですか
嵐氏:だいたい5000〜6000万円くらい。大きいものだと、年間通して1億円程度というものもあります。オープンソースはブレイクしている最中なので、まだ数字は小さいですよ。少し前までは1000万円以下も多かったし、2年前でも最高で3000万円程度です。1億円の開発には1億円分の技術者が必要です。今は社内にそれだけのリソースがあるので受けられますが、10人とか20人の会社に1億円の発注をする会社はありません。まるごと自分たちで開発できるわけないので、結局いろいめろな寄せ集めで開発するということが分かってしまいますから。
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