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ERP市場の実態と中期展望

第2回:2004年のERP市場のインパクト
著者:矢野経済研究所  赤城 知子   2005/9/12
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2004年のERPマーケットにおけるインパクト

   ERPマーケットにおけるインパクトについて2004年を振り返る。まずは、米Oracle Corpによる米PeopleSoft買収があげられる。ERPパッケージベンダー間の合併動向は2003年より活発化していた。

   日本国内ではそれらERPパッケージを導入している顧客企業の多くは、大手SIベンダーが間に入って構築していることから、危機感はさほど大きくないのではないか?といわれていたが、2004年の大手企業におけるERP導入不振に少なからず、これら企業合併が影響していることは事実である。

   PeopleSoftは国内において直販ビジネスを展開してきたことから、顧客企業数は同じ外資系ERPパッケージベンダーのSAPやOracleと比較すれば少ない。

   しかし2003年にPeopleSoftがJD Edwardsの買収を完了していたこともあり、中堅のAS/400ユーザ(JD Edwards)から大手のPeopleSoftユーザまで、自社で導入したERPはどうなるのか?という不安は大きかったであろう。

   またPeopleSoftのOracle合併が決定した現在においても、その不安は解消されていないのではないだろうか。すでにそれらPeopleSoftユーザへのリプレース攻勢がはじまっていると聞く。

   また、国産系ERPパッケージでは、大手企業向け人事給与パッケージでシェアの50%以上を握るワークスアプリケーションズが2004年12月に会計パッケージを発売開始したことも2005年の市場活性化につながりそうである。ワークスアプリケーションズは国産系ERPパッケージ初の大手企業向けパッケージであるが、会計パッケージは全モジュールを合わせても平均して1〜2億円程度だという。SAPやOracleと比較すれば3分の1から5分の1程度のライセンス価格ではなかろうか。

   ワークスアプリケーションズでは、ノーカスタマイズによる会計パッケージの導入を実現するために、外部企業60社以上のCOMPANYシリーズに特化したコミュニティを利用し、コミュニティから寄せられる年間1000件以上の要望をすべて吸収し、バージョンアップで還元するという手法を用いている。

   コミュニティに参加している企業のほかに、40社以上に対してヒヤリングを実施し「日本の大企業のあらゆる商取引・商習慣にノーカスタマイズで対応できる」とする本製品のコンセプトが実力として示されれば、ERPパッケージによる基幹システムの構築を断念した大手企業にとってこれほど願ったりの製品はないだろう。

   つまり、一度はERPパッケージの導入を検討したが断念した経緯のある大手企業などが、このワークスアプリケーションズの会計ソリューションをどう評価するのか、その動向が注目される所である。「ノーカスタマイズによる導入」の成否は2005年中頃までにはかなり明確な答えが出てくると思われる。

   中小企業向けERPパッケージマーケットではインフォベックがERPパッケージ「GRANDIT」の発売を開始した。GRANDITの開発は国内ユーザ企業7社が協力しており、日本の商習慣に合わない外来製ERPパッケージからユーザ企業中心にパラダイムシストの必要性を目的に、ユーザ系SIベンダーが寄り合う形で製品開発を行った。

   GRANDITの開発に参加したSIベンダーはインフォベックのほかに、インフォベックの親会社であるインフォコム、ITエンジニアリング、ウチダユニコム、NECネクサソリューションズ、オリンパスシステムズ、JR東日本情報システム、双日システムズ、日商エレクトロニクスの8社、また技術支援としてマイクロソフトとインテルも参加している。

   GRANDITはMicrosoft.NET、SQLサーバで稼働するWebベースのERPで、会計、販売、調達、在庫、製造の各モジュール2004年5月より集荷開始した。さらに人事給与、経費、資産管理システムの各モジュールを追加リリースし、BI(ビジネスインテリジェンス)やワークフロー管理など従来の国産系ERPパッケージが標準搭載していないような機能についても標準搭載している。

   Webベースを採用など製品機能的にはProActiveやGLOVIAシリーズ以上との声もあり、市場参入2年目となる2005年は正念場の年となるであろう。

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株式会社矢野経済研究所 赤城 知子
著者プロフィール
株式会社矢野経済研究所  赤城 知子
1989年矢野経済研究所入社。半導体・電子デバイスのマーケット担当から、1996年より「クライアントサーバを中心とした企業のコンピュータシステム導入実態調査」を手がける。1998年よりリサーチのフィールドをソフトウェア業界へと移し、主にERPやCRM、SCMといった企業向けアプリケーションパッケージのマーケットを専門に調査・分析を行う。


INDEX
第2回:2004年のERP市場のインパクト
  大手企業をターゲットとするERPベンダーの動向
  ERPの導入率は20%台
  ERPパッケージの導入で企業価値は上がるのか?
2004年のERPマーケットにおけるインパクト