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ERP市場の実態
ERP市場の実態と中期展望

第3回:ユーザ企業の年商規模別ERPパッケージの販売動向
著者:矢野経済研究所  赤城 知子   2005/9/20
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大手企業におけるERPパッケージの導入動向

   今回、年商501億円以上の企業を大手企業と定義する。またその内訳を年商501〜1,000億円の準大手企業と年商1,001億円以上の準大手企業に分ける。
2002〜2008年のライセンス売上高の推移

企業ユーザにおける基幹システムの導入方法
図2:大手企業におけるERPライセンス売上高2002〜2008年の推移
(エンドユーザ渡し価格ベース)
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   ERPパッケージの大手企業向け出荷金額の推移を見ると、年商501〜1,000億円レンジでは2002〜2008年のCAGRの予測は8.9%であるのに対して、年商1,001億円以上のレンジでは同CAGRは1.3%と予測される。

   特に年商1,001億円以上の超大手企業においては、2002〜2004年のCAGRが-10.4%、2002〜2005年のCAGRにおいても-2.5%の見込みである。長らくERPパッケージのライセンス市場は超大手企業向けの「大型案件」が市場の大半を占めてきた。これは「ビッグバン型導入」ともいわれてきたが「それらの需要は一巡した」といえよう。

   しかしERPパッケージ自体の需要が一巡したわけではない。財務会計を中心にERPの導入を段階的に進めている超大手企業も少なくはない。また、CRMやSCMといった戦略情報系への拡張ソリューションや、最近ではプラントなどでの保守・メンテナンス管理などERPの拡張も企業ニーズに合わせてピンポイント化してきている。

   今までのように超大手企業向けで「大型案件」を一本釣りするタイプの営業から、より業種・業務による企業ニーズの分析を行い、プロフェッショナルな営業組織が超大手企業向けのERPソリューションには必要になっている。

   年商1,001億円以上の超大手企業と比較して、年商501〜1,000億円規模の準大手企業クラスは、2004年に対2002年のCAGRで1.7%と横ばい傾向におちいったものの、2005年は順調に市場回復すると各ERPパッケージベンダーは判断しているようである。

   ERPパッケージベンダー各社の2005年の出荷見込みを積み上げると、対2002年のCAGRは7.9%になる見込み。2002〜2008年までCAGRは、ほぼ8〜9%程度で推移するであろう。


2004年のライセンス売上高シェア

年商1,001億円以上の超大手企業における2004年のERPライセンス売上高シェア
図3:年商1,001億円以上の超大手企業における2004年のERPライセンス売上高シェア

   年商1,001億円以上の超大手企業のライセンス売上高シェア(エンドユーザ渡し価格ベース)は、トップがSAP Japanが手がけるERPソリューションで32.9%、2位はOracle EBSで15.0%、3位はCOMPANYで14.6%、4位はGLOVIAで13.9%、5位はPeopleSoftで4.7%であった。

   SAP Japanは2位以下のベンダーとシェアで格差をつけており、2位以下が激しくシェア争いを展開している。特に年商1,001億円以上の超大手企業クラスではSAP Japanに次いでOracleが強みを発揮するマーケットであるが、人事給与ソリューションで大手企業を攻略してきたワークスアプリケーションのCOMPANYとのシェアの差がわずか0.4%ポイントと追い上げられている。

   4位の富士通GLOVIAは生産管理ソリューションであるglovia.comと会計ソリューションであるGLOVIA/SUMMITの合算数値である。富士通によるほぼ100%直販型のソリューションであり、また富士通のエンタープライズ系ソリューションの要となるアプリケーションであることから富士通の注力ソリューションと位置づけられている。

   以上、上位4社については元来、超大手企業向けのマーケットで強みを発揮してきたソリューション製品である。この超大手企業に5位で食い込んだのは住商情報システムのProActiveで、元々は年商300〜500億円の中堅企業向けマーケットを主軸としたソリューション製品であったが、ここ数年ターゲットが大企業向けへと拡大しているのが特徴である。

年商500〜1,000億円の準大手企業における2004年のERPライセンス売上高シェア
図4:年商500〜1,000億円の準大手企業における2004年のERPライセンス売上高シェア

   年商501〜1,000億円の準大手企業向けマーケットにおけるシェアトップはSAP Japanが手がけるERPソリューションで、シェアは29.8%、2位はProActiveで11.0%、3位はGLOVIAで9.4%、4位はSSAで7.6%、5位はGLOVIA-Cで5.6%となっている。

   年商1,000億円以上の超大手企業向けマーケットに次いでシェアトップをキープするSAP Japanに対して、2位は住商情報システムのProActiveとなっている。しかし、シェア的にはSAP Japanが2位以下のベンダーとシェアで格差をつけており、2位以下は熾烈なシェア争いの様相を呈している。企業シェアとして見た場合は、GLOVIAおよびGLOVIA-Cの合算シェアで15.0%を有する富士通がSAP Japanに次いで2位となる。

   また、この準大手企業向けマーケットでSSAが4位に食い込んでいるのも特徴的である。SSAは旧BaanのERPソリューションを得て、プロセス製造業、組立製造業の両製造業における生産管理を中心としたソリューションのノウハウを有しており、特に準大手企業クラスの生産管理ソリューションでビジネスを着々と展開している結果といえよう。

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株式会社矢野経済研究所 赤城 知子
著者プロフィール
株式会社矢野経済研究所  赤城 知子
1989年矢野経済研究所入社。半導体・電子デバイスのマーケット担当から、1996年より「クライアントサーバを中心とした企業のコンピュータシステム導入実態調査」を手がける。1998年よりリサーチのフィールドをソフトウェア業界へと移し、主にERPやCRM、SCMといった企業向けアプリケーションパッケージのマーケットを専門に調査・分析を行う。


INDEX
第3回:ユーザ企業の年商規模別ERPパッケージの販売動向
  ユーザ企業の年商規模別ERPパッケージのライセンス売上高の推移
大手企業におけるERPパッケージの導入動向
  中堅企業におけるERPパッケージの導入動向