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ITインフラの新しい展望
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第1回:IBMのITシステムのパラダイムシフト
著者:日本アイ・ビー・エム  出澤 研太   2005/10/11
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Virtualization(仮想化機能の強化)

   1つめの柱はVirtualization(仮想化機能の強化)です。ITシステムの管理・運用にかかるコストは、インフラストラクチャーが複雑になるにつれて増加します。また、ITコストの中では初期投資よりも管理のほうが大きく占め、増加率も速いのです。

   Virtualizationは複雑化したITインフラを仮想化し、運用・管理をシンプル化し、コスト削減と変化に柔軟に対応できるシステムを実現します。40年以上にわたり開発実装を続けてきた仮想化技術をさらに強化し、サーバー、ストレージ、ネットワークなどインフラ全体にわたり実現することで、異機種混合のIT環境における管理の複雑さを軽減、高いセキュリティーと可用性をもったシステムを構築が可能です。


Openness(オープンへの取り組み)

   次の柱は、Openness(オープンへの取り組み)です。IBMは、Linux、Java、Webサービスなど、オープンな技術に対して大きく貢献する一方、IBM製品への実装も積極的に行ってきました。IBMのオープンへの取り組みは、「標準」を拡張しながらも「機能」を向上させる包括的なアプローチです。

   オープン・スタンダードは、現在の投資を保護、活用する上で高い柔軟性と可能性を提供します。IBMはオープン・スタンダードをもとに、高度に統合されたシステムから、既存の構成に組み込む各コンポーネントまで、Power.orgやBlade.orgなどの技術革新を基盤にしてあらゆるIT環境に適合するさまざまなシステムを提供することができます。


Collaboration(協業・連携)

   そして3つめの柱がCollaboration(協業・連携)です。ビジネス環境の多様化・複雑化により、企業の価値を高めるとともに企業の変革を実現するためには、多くのパートナーやお客様と協業・連携することが求められています。IBMは、個々の力の有機的な結合が、テクノロジーやビジネスを支えるITシステムの飛躍的な革新を実現すると考え、単に製品を提供するだけでなく、製品開発で培ったテクノロジーを部品化して提供していきます。


ITシステムが抱える複雑さの課題にどう対応するか

   最近は複数の企業のCEOから、「会社の状況が常にわかるようなシステムになっていなければいけない」という意見を聞きます。自社だけでなく、パートナー企業を含めた複数の企業がバリューチェーンを形成しているケースも多く、このような場合に、その全体の状況をエンド・ツー・エンドで常にリアルタイムに状況を把握できることが求められているのです。

   変化の激しいオンデマンド時代において、ビジネス戦略や業務プロセスは状況に応じ迅速に対応できるものでなければなりません。それを支えるITインフラは、急速な変化に対応しうる柔軟性、情報資産を保護する堅牢性・安全性、そして部分最適にとどまらない全体最適の実現が強く求められます。

   しかしながら、これまで企業は個別にITインフラを形成してきた事情から、企業内外に散在するさまざまなIT資源をシームレスにつなぐことは、一見容易なことではありません。かといって、全部「スクラッチ」して作り直すのも、非常に時間とコストがかかり、オンデマンド時代に対応することができなくなってしまいます。

   これらの課題を解決するためには、個別のベンダーやオペレーティング・システムなどシステム間の違いにとらわれず、分散環境をあたかも1つのシステムのようにハードウェア、ソフトウェア、データを一元管理・最適化できる、複雑さのない環境への移行、つまりSystems Agendaで提唱されている、「Virtualization(仮想化機能の強化)」によるITの簡素化と、最適化がまさに必要なのです。

   仮想化技術を活用してIT資産の一度整理・統合すれば、サーバー統合、ストレージ統合に代表されるパーティショニング技術を利用したシステム統合により、散在するサーバーやストレージをより強力なシステムに集約化を進めます。このパーティショニング技術に代表されるのが「仮想化テクノロジー」です。仮想化は、単にシステムの集約化だけにはとどまりません。

   仮想化の次のステップとして、ネットワークをまたがった異種混在環境でIT資源を論理的に捉える技術を活用しましょう。これによって、企業内外にスコープを広げ、より効果の高い部門間・企業間のシステムの全体最適化の実現可能となるでしょう。

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日本アイ・ビー・エム株式会社 出澤 研太
著者プロフィール
日本アイ・ビー・エム株式会社  出澤 研太
日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員
システム製品事業担当
1973年、システム・エンジニアとして入社。社長補佐、米国IBM勤務を経て、1994年、RS/6000(現pSeries)製品事業部長。アジア太平洋地域のハードウェア事業ゼネラル・マネジャー、インテグレーテッド・テクノロジー・サービス事業部長を歴任。2000年4月、取締役に就任。2001年、金融業界のお客様を担当し、2005年1月より現職。サーバー、ストレージ、プリンターにわたる日本IBMのハードウェア事業を統括。


INDEX
第1回:IBMのITシステムのパラダイムシフト
  ビジネスの基本はe-business以前も以後も同じ。それでは何が変わったのか
Virtualization(仮想化機能の強化)
  仮想化がもたらすメリット