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玉石混交のインドOSS事情
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ローカライゼーションの重要性といえば、インドもその必要性が非常に高い国のひとつです。インドでは英語を話す開発者も多いのですが、公用語が18種類もあるためソフトウェアの現地語対応は大きな課題となっています。余談ですが、実際に話されている言語は1,500種類もあるとのこと。
2003年5月にインドの首相はOSSをサポートするという声明を発表しました。実際には、情報省管轄の研究開発機関であるCDAC(Center for Development of Advanced Computing)が中心となって、インドのOSS普及活動を推進しています。ムンバイにあるCDACムンバイセンターを頂点にし、その下には各地域のセンターが配置され、さらにそれらのセンターが各コミュニティやプロジェクトをサポートするといった階層構造によって、OSSに対して様々な支援が提供されています。
さらにインドでは、地方政府によるOSS推進プロジェクトも盛んにおこなわれています。インド南部のケラーラ州では、OSSを積極的に取り入れた電子政府プロジェクトを実施しています。中南部のマハラシュートラ州では、Linuxを利用したキオスクサーバによるインターネット接続拠点を地方に配置するプロジェクトが展開されています。
世界各国からのアウトソース先として、バンガロールを中心にソフトウェア産業が急成長しているインドには、OSS関連企業も多数進出しています。それらの企業がインドにおけるOSSの牽引役を担っていることもまた事実です。インドにはFSF(Free Software Foundation)のインド支部であるFSF Indiaも存在します。2004年からは、LinuxAsiaという大規模なカンファレンスも毎年開催されるようになりました。
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オーストラリアでもOSS利用が加速中
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最後に、オセアニアを代表してオーストラリアのOSS事情に目を向けてみましょう。オーストラリアは世界でもOSS開発者を多く抱えている国のひとつです。UNIXサーバでWindowsファイル共有を実現するSambaは、オーストラリアの学生によって開発され、今では世界中で利用されています。
オーストラリアでも、政府レベルでOSS採用の検討が進められてきました。2003年12月には、首都特別区で「オープンソース法案」が可決されています。この法律により、政府調達でコンピュータソフトウェアを調達する際にはOSSが必ず検討されることとなりました。
また政府機関のいくつかでは、実際にオープンソースソフトウェアの導入が進められはじめています。例えば2004年12月には、DVA(Department of Veterans Affairs:復員軍人援護局)が、3,000人規模によるOpenOffice.orgへの移行を計画していることを明らかにしました。
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政府のOSS採用を支援する活発なユーザグループ活動
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オーストラリアでは英語が利用されているため、現地語化の必要がありません。前述したアジア諸国と比較すると、そのことは大きなアドバンテージとなっています。
ユーザグループの活動も盛んで、オーストラリアのUNIXユーザグループはオープンソースシンポジウムや技術的な研究会を開催したり、官公庁におけるOSS利用調査を実施したりと、積極的に活動しています。オーストラリア政府のOSS採用を支援して公平な政府調達を目指す一方で、アジア諸国と連携した効果的なOSSの開発と普及を視野に入れた活動も進めています。
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(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
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著者プロフィール
株式会社三菱総合研究所 飯尾 淳
情報技術研究部 主任研究員
1994年(株)三菱総合研究所入社。並列計算機関連、ソフトウェア工学、音響・画像処理関連と幅広いテーマで先端情報技術の研究開発業務に従事。専門は、画像処理とユーザインタフェース。著書に「Linuxによる画像処理プログラミング」、「リブレソフトウェアの利用と開発〜IT技術者のためのオープンソース活用ガイド〜」など。技術士(情報工学部門)。
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