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世界各国政府のオープンソース採用動向
世界各国政府のオープンソース採用動向

第5回:アジア・オセアニア編
著者:三菱総合研究所  飯尾 淳   2005/5/18
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今回は

   今回は、前回で解説した中国と韓国を除いたアジア・オセアニア諸国におけるオープンソースソフトウェア事情を解説します。東南アジア、南アジアとオセアニアにおける各国政府のオープンソース採用動向を概観します。
東南アジアにおけるOSS先進国、タイ

   タイはアジアOSSシンポジウムの第1回が開催された国でもあり、東南アジアの中ではOSSの活動に積極的な国のひとつです。国の機関であるNECTEC(National Electoronics and Computer Technology Center)が中心となり、LinuxやOpenOffice.orgのタイ語化、普及啓蒙のための国内シンポジウム開催、周辺各国との国際協調など、OSSに関連した幅広い活動が進められています。

   2003年の4月には、低価格PCを販売することで国内のコンピュータ普及率を高めようという「ICT PCプロジェクト」がICT省から発表され、大きな話題になりました。このプロジェクトはエントリーレベルのPCに、タイ語版のLinuxであるLinux TLE(Thai Language Extension)とOpenOffice TLE 1.0.2をバンドルし、日本円にして3万円強で提供するというものでした。このプロジェクトで10万台以上ものPCが販売されたといいます。

   また、このプロジェクトはタイのPC市場に大きなインパクトを与えました。関係者によれば、PC本体、モニタ、周辺装置といったハードウェアや教育コース・教材などの市場価格がぐんと下がっただけではなく、タイ国内向けのMicrosoft Windows XPとOfficeでさえ、このプロジェクトに対抗して価格を下げてきたそうです。

デジタルデバイド解消のための政策

マレーシアでは政府と各種団体がOSSを推進

   マレーシアもOSSに対して積極的な活動が目立つ国です。2002年にエネルギー・通信・マルチメディア省の各大臣が「政府では様々な省庁でOSSを配備する」と発表しました。それ以来、政府と情報通信分野の業界団体を中心としてOSSの利用が積極的に推進されています。

   2003年には政府出資の企業であるMIMOS(The Malaysian Institute of Microelectronic Systems)がASIAOSC(Asian Open Source Center:アジアオープンソースセンター)を設立し、アジア地域におけるOSS普及促進のための活動をはじめました。

   さらに2004年7月には、MAMPU(Malaysian Administrative Modernization and Management Planning Unit:マレーシア行政近代化管理院)によって「公的機関オープンソース・マスタープラン」が発表されました。このマスタープランに基づき、公的機関にOSS普及を推進する組織「OSCC(Open Source Competency Center)」が設置されています。OSSに関する政策・ガイドラインの策定、研究開発、情報と教育の提供などがOSCCのミッションです。

   現在、マレーシアではOSCCをハブとして、政府、研究機関、民間企業が一体となったプロジェクトを実施しています。

ソフトウェア産業の振興にOSSを利用

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三菱総合研究所
著者プロフィール
株式会社三菱総合研究所  飯尾 淳
情報技術研究部  主任研究員
1994年(株)三菱総合研究所入社。並列計算機関連、ソフトウェア工学、音響・画像処理関連と幅広いテーマで先端情報技術の研究開発業務に従事。専門は、画像処理とユーザインタフェース。著書に「Linuxによる画像処理プログラミング」、「リブレソフトウェアの利用と開発〜IT技術者のためのオープンソース活用ガイド〜」など。技術士(情報工学部門)。


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第5回:アジア・オセアニア編
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  玉石混交のインドOSS事情