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ソフトウェアプロセスレベルを向上させるCMMI活用術 〜 ソフトウェア開発の品格
第3回:CMMI導入がもたらす光と影 〜 日本の文化にあったプロセス改善
著者:
日本コンピューター・システム 新保 康夫
日本和光コンサルティング 久野 茂
2006/5/10
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CMMI導入による効果と負荷
今回はCMMI導入による効果(メリット)と負荷(デメリット)について3項目ずつ比較します。そして最後に、筆者がCMMI導入のもう1つの効果と考えているソフトウェア開発における品格について説明します。
図1:CMMI導入の光と影を表すマインドマップ
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
CMMI導入による光 〜効果(メリット) 〜
まず、プロジェクト管理の視点からCMMI導入によるメリットを考えていきます。ここでは、「品質」「見積精度」「プロセス」の3点の効果について説明します。
品質
CMMI導入によるメリットとして、まず開発成果物を含めたソフトウェアの品質の向上があげられます。CMMIでは「プロセスと成果物の品質保証」がCMMIレベル2のプロセス領域に定義されており、プロセスと成果物に対する品質を保証するための仕組みをCMMIに組み込むことが必要です。
この仕組みはプロセスと成果物を客観的に評価できるとともに、この仕組み自体も客観的に評価できる必要があります。客観的に評価するということは、事前にそれらの手順・基準が定義されており、測定・分析・評価し、結果がフィードバック・フィードフォワード(注1)されることをいいます。そしてCMMI導入によってソフトウェアの品質が高くなるといわれるのは、このような仕組みを持っているからなのです。
※注1:
フィードバックは結果を受けて調節する振り返り型の行動をいう。それに対して、フィードフォワードは目標を先に決めて外部要因を評価しつつ、達成に向けて修正を加えることをいう。
このことは、組織としてその仕組みを持っていて、あらかじめ何かしらの形で定義されていることになります。そのような環境下でプロジェクトがシステム開発を行うと、ソフトウェアの品質は一定の水準を確保されやすくなるといえます。すなわち、組織としてプロセスが確立しているCMMIレベル3以上の成熟度がある組織では一定の高い品質を保つことができるといえるのです。ただしこの仕組みをしっかりと実施し、評価していることが前提になります。
ISO9000による品質マネジメントにおいても事前に手順・基準が定義されており、測定・分析・評価され、その結果をフィードバック・フィードフォワードすればソフトウェアの品質についてはCMMIと同様の効果があるといえます。CMMIであれISO9000であれ、しっかりと実施・評価していれば、どちらの指標を掲げていたとしてもソフトウェアの品質は保証されるといえるでしょう。
見積精度
CMMIでは各プロセスの測定・分析が求められています。それは単に品質だけではなく、個々のWBS(Work Breakdown Structure)についても測定・分析が必要となってきます。
こういう表現をすると非常に難しいことのようですが、「成果物の規模/関わった時間/難易度/メンバーのスキルなどの実績を記録」と言い換えればわかりやすいと思います。しかしこれは測定した結果であって、データでしかありません。
これを分析し、メンバーの生産能力や組織の生産能力、そして自社の生産能力をしっかりと見極めることが必要となります。つまり、分析を行うということであり、言葉を変えれば、生産性・品質性を見ることなのです。ここではじめて、データから情報になり、その情報を活かすことが見積りとなります。
見積りの精度を高めるには、多くのプロジェクトからのデータを収集し、分析することが必要になります。CMMIを導入した組織では各プロジェクトについて測定・分析が必要ですので、そのデータを蓄積して分析し、情報を有効活用していれば見積精度は自然に高くなっていきます。
このデータですが、個々のプロジェクトリーダーなどが個人で持っているなど管理システムの中に眠っているものです。皆さんの組織の中を見渡してください。見積りにつながるデータが発見できるかもしれません。
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著者プロフィール
日本コンピューター・システム株式会社
新保 康夫(しんぼ やすを)
本部企画室 コンサルタント、ITコーディネータ/ITCインストラクタ、システム監査技術者、ISMS主任審査員資格。
1975年 日本コンピューター・システムに入社。システム開発に従事し、プロジェクトマネージャを経て現在、コンサルタント業務に従事する。コンポーネントベース開発やアジャイル開発にも関与する。
日本和光コンサルティング(株)
久野 茂(くの しげる)
日本和光コンサルティング(株)代表取締役副社長、ITコーディネータ。日本電気(株)、(株)日本総合研究所に勤務。現在日本和光コンサルティング(株)代表取締役副社長。
1978年徳島大学工学研究科修了、1998年電気通信大学大学院IS研究科博士課程単位取得満期退学。著書に「中国オフショア開発ガイド(共著)」コンピュータエージ社、他 多数。
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