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情報化による業務システム改善
第3回:規定・制度、組織・機構を改革する
著者:
みずほ情報総研 片田 保
2006/6/5
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BPRに「魂」を入れる
いざ、BPR(業務プロセス改革)に着手しようとすると、「そのような規定になっていない」「所管部署の了解が得られていない」「実施できる体制ではない」といった反応が、あちこちの部課から湧き上がってくる。
これは第2回でも指摘した「BPRを進める上での阻害要因」の典型だ。それならばできることから着手することも1つの推進方法ではあるが、とりあえず身近なところから場当たり的に対策を講じてみても、思ったほど効果はあがらない。これは、前回も紹介したように「改善」の限界点であるからだ。
では、これらの阻害要因を乗り越えるためには、業務プロセスの見直しとあわせてどのような取り組みが必要になるのだろうか。少し古い調査になるが、内閣府が実施した企業行動に関する調査「ITがもたらす企業経営改革」が参考になる。この調査が行われたのは平成12年時点で、ITによって生ずる「過去3年間」と「今後3年間」の経営組織の変化について分析している。
図1:経営組織の変化
出典:内閣府経済社会総合研究所 平成13年4月 平成12年度企業行動に関する
アンケート調査「ITがもたらす企業経営改革」
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
経営組織に関する調査項目は図1のとおりであるが、組織変化が大きくあらわれているトップ3は、「情報伝達のボトムアップ化」「情報伝達のトップダウン化」「組織のフラット化」であった。この調査結果を見ると、あたかもIT導入によって組織が変わったように思えるが、現実を想い起こして欲しい。留意すべき点は「IT導入にあわせて組織改革を行ったかどうか」にある。
たとえば、電子決裁システムを導入する場合、旧来の業務プロセスや決定関与者(決裁者)を変更しなくても、情報システムは稼動する。つまり、ハンコが電子的なハンコに切り換わるだけで、業務プロセスとしては何も変わらないまま機能する。
さらに、電子化されることによって決定関与者を安易に追加できるので、その場合には電子的なハンコの数が増えて、情報システム導入以前よりも意思決定が遅滞してしまうケースがあるのは第2回でも紹介したとおりだ。
このように、組織改革に着手しなくてもITは導入できる。だが、その効果は保証するところではない。BPRとあわせて、規程・制度、組織・機構の改革に着手することで「魂」が入るのである。図1は5年前の調査なので、今はもっと組織変化は進んでいるだろう。BPRを実施するにあたり、自分の所属する組織の変革がどこまで実現できているか、バロメータとして捉えて欲しい。
次項からは、BPRに「魂」を入れるために具体的に「規定・制度」や「組織・機構」をどのように改革すればよいかを検討する。
規定・制度の改革
まず、規定・制度についてBPRの阻害要因となる項目をあげてみよう(表1)。規定・制度の個別については、各社・各団体でくくり方が異なるので、ここでは一般的な項目と阻害要因・内容を整理した。
決裁権限
決裁権限が状況によって変わってしまうなど、曖昧な運用が行われている
決定関与者が多く、意思決定ルートが複雑である
文書取扱規定
紙文書のみを対象とし、電子データによる処理を認めていない
回覧・決裁文書の分類が不明瞭である(決裁ルート、保存・管理ルールが曖昧になっている)
事務処理規定
人が介在して処理することを前提とした規定となっている(担当者の配属が前提となっている)
業務の括り方(単位)が組織ごとに異なるうえに細かすぎ、現状の組織ありきの事務処理になっている
情報管理規定
情報管理やセキュリティに関する諸規定がない
業務プロセスにおけるリスク管理が不十分である
人事管理規定
従前に捉われすぎた人事管理によって組織や働き方が硬直している
遠隔による処理が不明瞭である(在宅勤務など)
業務プロセス改革のための率先行動に対する人事評価、インセンティブが働かない
表1:BPRの阻害要因(諸規定・制度)
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著者プロフィール
みずほ情報総研株式会社 情報・コミュニケーション部
公共経営室長 片田 保
1991年、早稲田大学教育学部卒業、富士総合研究所(現みずほ情報総研)入社、2004年から現職。専門は、ITを活用した行政経営、地域経営。行政の経営改革に関するコンサルティング、自治体の政策アドバイザーなどの業務に携わる。世田谷区行政評価専門委員を務めるほか、大学・大学院非常勤講師、自治体セミナー講師、論文執筆多数。
INDEX
第3回:規定・制度、組織・機構を改革する
BPRに「魂」を入れる
決裁権限
組織・機構の改革