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情報化による業務システム改善
情報化による業務システム改善

第4回:BPRの効果をコストで示すABC手法
著者:みずほ情報総研   片田 保   2006/6/19
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わかりにくい効果

   最初に、BPRを実践するにあたりよく耳にする経営トップの声を取り上げてみよう。
  • これまで随分、情報化投資をしてきたが、ムダになっていないか?
  • きちんと結果に結び付くような情報化投資ができているか?

   これらの言葉の裏には、これまで大規模な情報化投資を行い、さらにこれからも投資を続けなければならないにも関わらず、その効果が今ひとつよくわからないという経営トップの焦燥感がうかがえる。

   もし、あなたが経営改革や新規事業の立ち上げの担当だったら、上記の問いに対してどのように説明するだろうか。次のような効果は一例だが、具体的な数値を示しながら説明できれば、経営トップも投資対効果(ROI)に満足するだろう。

  • コスト削減効果があり、投資額は十分に回収できた
  • 生産に必要な取引コストが大幅に削減され、スピードアップされた
  • 作業効率が格段にアップし、現場での生産性が飛躍的に伸びた
  • 顧客のフォローアップに役立ち、成約件数が大幅に増加した
  • 顧客からのクレームが減少し、売上アップにも貢献できた
  • 新しい商品やサービス、事業の開発が短期間で実現できた
  • コストのかかる店舗を構えなくても商品やサービスを販売できた

表1:BPRの効果の一例

   しかしながら、こうした効果をどのように示せばよいのだろうか。手っ取り早いのはコスト(金額)であらわすことだ。例えば、これまでに投資してきた金額が5億円だとすると、経営的には、これに見合った回収ができればよい。投資時点でのコスト削減効果が2億円で、年間あたりの売上が1億円プラスになるとすると、3年で投資額を回収できることになる(金利分などの諸経費は除く)。

   このようにコスト削減など「かかった費用」に着目して効果を測定する手法が「ABC(Activity Based Costing)」である。管理会計の一種で、活動基準原価計算と訳される。さらに、コスト以外についても目標を示して効果を明らかにするのであれば、「BSC(Balanced Score-Card)」が有効だろう。BSCは次回取り上げることとし、第4回では、ABC手法について紹介する。


情報化投資やBPRの効果をコストで測る

   ABCは活動基準原価計算といわれているように、「活動(Activity)単位」に業務プロセスを分類して各々のコストを算出する。その積上げによって、サービスや事業などに「いくらかかっているか」が見えてくる。活動を構成する作業が、情報システムによって抜本的に刷新されれば、コスト削減効果として数値化できる。

   後で詳しく述べるが、例えば福利厚生に関する庶務・総務事務において旅行の補助金申請を処理する場合、一連の作業を「誰が、どれくらいの時間をかけて、何回やっているか」という内訳を分析することになる。そしてそれらが、手作業によるものか、パソコンを使っているか、移動を伴うかなど活動の中身(作業)を調べ、さらに各作業では何を行っているか(確認作業、記入・転記作業、文書保管など)を明らかにする。

   このような分析を通じて、旅行の補助金申請の事務処理において年間で要しているコストの総額を把握し、1回の申請あたり1,500円のトータルコストがかかっているというような実態を押さえる。

   この積上げ型によるABCの計算方法は次のとおりである(ほかに、費用割当による計算方法があるが、ここでは積上げ型に基づいて説明をする)。

ABCの計算方法
図1:ABCの計算方法

   ABCは一連の業務プロセスを調査・分析することになるので、どの工程で時間がかかっているか、どのような作業を見直せばよいか、新たな工程を設けることでコストがどれくらい変化するかなどが明確になり、具体的にBPRを実践しやすくなる。

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みずほ情報総研 片田 保
著者プロフィール
みずほ情報総研株式会社  情報・コミュニケーション部
公共経営室長   片田 保

1991年、早稲田大学教育学部卒業、富士総合研究所(現みずほ情報総研)入社、2004年から現職。専門は、ITを活用した行政経営、地域経営。行政の経営改革に関するコンサルティング、自治体の政策アドバイザーなどの業務に携わる。世田谷区行政評価専門委員を務めるほか、大学・大学院非常勤講師、自治体セミナー講師、論文執筆多数。

INDEX
第4回:BPRの効果をコストで示すABC手法
わかりにくい効果
  ABCで評価してみる
  3. コストを析出し問題点・課題を分析する
  5. BPR前後の効果を析出する