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オープンソースで構築する業務システム特集
第5回:Cervezaが残す軌跡
著者:
ニユートーキヨー 湯澤 一比古
2006/6/16
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今だからCervezaについて述べたいこと
今回、Cerveza(セルベッサ)・GARAGARADOA(ガラガラドア)・Olut(オルット)についての記事を執筆したが、時系列をさかのぼってCervezaを最後に紹介することにした。Cervezaについては多くの方が研究している。
図1:Cervezaのロゴ
そこで今回は「Cervezaについての研究」をとりあげ、オープンソースソフトウェア(OSS)の業務システムとしてCervezaがどのような影響を与えたのかを紹介する。この記事が今後のオープンソースへの取り組みとして、多くの影響を与えるものになれば幸いである。
Cervezaについての研究
まずはCervezaの研究や記事について紹介し、そして書籍について紹介してからCervezaのシステムの内容や歴史について触れる。
OSS業務システムの普及は相対的に製品よりもサービスの価値を高めるもの
2006年4月21日に「経営情報学会」の情報システム研究部会と早稲田大学IT戦略研究所が合同で「マイケル・A・クスマノ教授 MIT(マサチューセッツ工科大学)特別講演」を開催した。
300名を超える聴講者が集まってとても盛況であったが、この講演のテーマは「製品 vs サービス:どちらがよりよいビジネスモデルか」ということで、今後はソフトウェア製品の販売よりもシステムサービスの比重が高まってくると言うものだった。オープンソースの普及も製品販売から、システムサービスへのシフトを促進する材料になるだろう。
何名かの方が関連講演をしたが、この関連講演の中で富士通総研の前川徹氏は「業務用オープンソース・ソフトウェア普及の可能性」というテーマでCervezaの発展についての講演を行った。Cervezaには現状でも多くの亜種ができあがっており、この経緯と意味について感慨深い説明があった。前川氏は以前からCervezaを研究対象としてOSS業務システムについていくつかレポートを書いており、今回の発表もその成果をふまえたものだった。
当然、OSS業務システムの普及は相対的に製品よりもサービスの価値を高めるものであり、その可能性を示すことで「製品 vs サービス」に新たな視点を吹き込むことになる。その後のパネルディスカッションの議論でも何名もの人が前川氏の発表に触発され、OSSについての多くの発言があった。
ソフトウェアに起きる究極の価格破壊(2005年12月)
業務系オープンソース・ソフトウェア普及の可能性
http://www.fri.fujitsu.com/jp/modules/report/list_04.php?list_id=10436
このレポートの内容はもちろんであるが、特に図表が秀逸であると思われる。OSSとしてビジネスアプリケーションを開発した我々が、なぜCervezaをアピールする活動にも積極的に関わるのかもわかっていただけるのではないだろうか。今後のOSS普及の方向性に対する考察もあり興味深い。
市場流通のための再利用事例研究 報告書(テクニカルレポート)(2005年9月)
http://www.ejbcons.gr.jp/rules/MR-05-01-PR.pdf
これは前川氏が共著でソフトウェア部品の流通の局面から詳細にOSSを捉えたレポートであり、究極のコンポーネントとしてのOSSという捉え方になるのだろうか。上記レポートと共通部分も多いが、捉えるにあたっての視点が参考になる。
OSSを企業間の情報共有という視点で捉える
Cervezaについて横浜国立大学大学院環境情報研究院の竹田陽子教授、武蔵大学経済学部経営学科の米山茂美教授が取材に来てくださったのは2002年の2月末だった。それから両氏は同年9月頃まで関係者に取材し、同年末に経済誌にビジネスケースとして発表された。その内容は現在では「一橋ビジネスレビュー・ブックス/ビジネス・ケースブック3」に「Cerveza − ニユートーキヨーの食材発注システムはなぜ公開されたのか」という論文名で収録されている。
これは企業間の情報共有という視点でOSSを捉えており、Cerveza研究の最初の論文になるだろう。
ビジネス視点から見たOSS
「立命館経営学・第44巻第3号(2005年9月)」に竹田昌弘教授は論文を発表した。ビジネス視点から見たOSSを研究しており、研究の一環としてCervezaの事例も取り上げてもらった。
オープンソース・ソフトウェアとビジネスとの関係に関する考察
http://www.ritsbagakkai.jp/pdf/443_03.pdf
竹田氏はこのビジネスを「寄生モデル」「共生モデル」「一体化モデル」に分類し、体系立てて考察していて、Cervezaを「一体化モデル」の例として取り上げている。Cervezaのような事例が企業間ネットワークを形成することを示し、今後の可能性についても言及している。
オープンソースじゃなきゃ駄目
これは拙著である。Cervezaへの思い入れをベースにして、なぜオープンソースなのかを「オープンソースじゃなきゃ駄目(イデア出版局)」で書いたつもりである。この本はオープンソースソフトウェア協会(OSSAJ:
http://www.ossaj.org/
)の高橋正視氏が強く勧めてくれなければ、日の目を見なかっただろう。
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著者プロフィール
株式会社ニユートーキヨー 湯澤 一比古
財務部情報システム室 室長。53年東京生まれ。
75年にニユートーキヨーに入社。8年弱のウエイター経験を経て、システム担当に就任。ニユートーキヨーが「セルベッサ」をオープンソースとして発表した時に、システム担当者として初めてOSSに触れる。現在、同社のシステム室長。OSCARアライアンス、OSSAJなど、複数のオープンソース推進団体に参加。セルベッサ以外にも「ガラガラドア」や「オルット」などのオープンソースシステムを手がけている。
INDEX
第5回:Cervezaが残す軌跡
今だからCervezaについて述べたいこと
Cervezaのシステム構成
Cerveza開発以前の受発注システム
OSSなら問題を解決できるのか?