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最大限の可用性とスケーラビリティを実現するOracle RAC
最大限の可用性とスケーラビリティを実現するOracle RAC

第10回:Oracle RACの拡張機能と更なる進化
著者:日立システムアンドサービス  山崎 啓利   2006/11/7
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はじめに

   前回までは、Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)についての構築、可用性、パフォーマンス、管理について解説してきました。今回は最終回ということで、Oracle RACについて、総括的にお話したいと思います。
Oracle RACの拡張機能

   Oracle製品の基本的な機能は、「全プラットフォーム共通」です。そのため、Linuxと他のプラットフォームとを比較した場合、基本的な機能での差異は存在しません。しかしながら、Linuxを使用した場合「拡張機能」が存在します。

   Linuxをベースとした場合には、管理面や運用面でより広い選択肢が用意されています。以降より、この「拡張機能」について説明します。


Oracle Cluster File Systemの利用による管理負荷の軽減

   Oracle RACではシェアードディスク方式を採用しているため、データベース部は共有ディスク上に配置することが前提となります。しかし、各OSが標準で提供しているファイルシステムには、共有化に対応しているものが存在しません(注1)。そのため、必然的に共有デバイスとして、RAWパーティションを構成する必要があります。

※注1: 高価なクラスタソフトなどの利用により実現は可能。

   しかしLinux(およびWindows)においては、Oracle社が独自に開発した、クラスタを構成したサーバ間でアクセス可能なファイルシステム「OCFS (Oracle Cluster File System)」が標準提供されています。このOCFSの利用によって、共有デバイスとしてファイルシステムの利用を選択することが可能となります。

   RAWパーティションによりクラスタを構成する場合、管理コストの増大を招いていましたが、OCFSを選択することにより、このコストを軽減することが可能となります。その他にも、RAWパーティションと比較して、OCSFを選択する場合のメリットを表1に示します。

自動拡張機能に対応
RAWパーティションを使用した場合、データサイズがRAWパーティションの容量を超えると、RAWパーティションおよびデータファイルの追加が必要となります。OCFSでは、通常のファイルシステムと同等に扱えるため、データファイルの自動拡張にも対応可能です。
RAWパーティション制限からの開放
例えばLinuxでSCSIディスクを使用した場合、最大RAWパーティション数は15といった制限があります。また、システム上で扱えるRAWパーティション数は255といった制限があります。OCFSでは、これらのパーティション制限を受けることなく利用することができます。
アーカイブREDOログファイルの配置が可能
RAWパーティションに対して、アーカイブしたREDOログファイルは配置できないため、各ノードにアーカイブしたREDOログファイルを配置することになります。このため、リカバリが必要となった場合には、リカバリを実施するノードへアーカイブしたREDOログファイルを手動で移動する必要があります。OCFSでは、アーカイブしたREDOログファイルも共有ディスクへ配置することができるため、リカバリ時にファイルを移動する必要がなくなります。
ファイルシステムのような操作性が可能
RAWパーティションを選択した場合、RAWパーティションへのbind設定など設定面で煩雑な部分があります。OCFSでは、通常のファイルシステムと同様にOSコマンドを使用できます。このため、管理者が慣れ親しんだOSコマンドで、共有ディスク上のデータをファイルシステムとして操作することが可能になります。

表1:RAWパーティションによる構成と比較した場合のOCSFのメリット


管理工数を削減するASMLIB Kernel Driver

   ASMLIB Kernel Driverとは、Oracle社が提供するASM機能に特化したデバイスアクセス用のドライバです。ASMにおけるDISKGROUPの元となるRAWパーティションへのアクセスは、通常だとOSやサードパーティーが用意するドライバを利用して行われますが、このドライバを利用することでよりOracle製品に特化した形のDisk I/O制御が可能になリます。

   また、このドライバを使用する場合には、Oracle社より提供されるカーネル・モジュールを利用することで、ディスクにタグを付けるだけで設定することができるため、bind設定などが必要なRAWパーティションと比較すると、管理面の工数を大幅に削減することができます。

   RAWパーティションでASMを使用することも可能ですが、管理面での負荷軽減およびOracle Databaseとの親和性の向上を実現できることから、Oracle社ではLinuxを使用する場合、ASMLIB Kernel Driverの使用を推奨しています。


問題発生時におけるアドバンテージ

   Oracle社はRed Hat社、Novell社、MIRACLE LINUX社との積極的な連携を行っています。これにより、Red Hat Linux、SUSE Linux、MIRACLE LINUX(Asian Linux)、United Linux上でOSが関連する問題が発生した場合、Oracle社ではOSベンダー各社と連携して、問題の解決を円滑に行います。

   また、業務継続に支障をきたすようなクリティカルな問題に対しては、OSコードの問題であった場合でも、この修正を提供することが可能であるとOracle社では標榜しています。このようなOSベンダーとの連携は他のプラットフォームでは存在せず、問題発生時の解決における大きなアドバンテージといえます。

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日立システムアンドサービス 山崎 啓利氏
著者プロフィール
日立システムアンドサービス  オープンソリューション本部
カスタマサポートセンタ   山崎 啓利

入社5年目。オラクルサポートに携わりながら、同製品の環境構築・検証作業、および社内のサポート業務システム構築を経て、この2年間は、オラクル製品にサポートに従事している。オラクルを使用するお客様に対して、ベストのサポートを提供すること心がけ、日々対応している。


INDEX
第10回:Oracle RACの拡張機能と更なる進化
はじめに
  Oracle RACの特徴的な機能
  今後の展望