ガートナーグループは、企業情報システムの全体像を包括的に捉えようとする試みとして都市計画の概念を提唱している(注1)。これは企業情報システムアーキテクチャを「都市計画」として捉えるための設計指針について述べたもので、「個別情報システム」の集合体としての「企業情報システム」を「個々の建築物」の集合体としての「都市」というメタファーを用いて論じようとするものである。
※注1:
Schulte, R., "Architecture and planning for modern application styles," Strategic Analysis Report, Gartner Group, April 1997.
われわれはこの考え方を発展させ、建築工学や土木工学における都市計画の概念と方法論を援用し、企業情報システム(EIS)の体系化に対する都市計画アプローチを提案している。ここでは「成功に導くシステム統合の論点—ビジネスシステムと整合した情報システムが成否の鍵を握る」(注2)の第6章に基づいて、このアプローチを紹介する。
※注2:
著:経営情報学会システム統合特設研究部会、日科技連出版社.2005年10月刊
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図1は「都市計画(注3)」と「企業情報システム」の各々における計画レベルと粒度との関係をあらわしている。
図1:計画レベルの粒度
※注3:
Shirvani, H., The Urban Design Process, Van Nostrand Reinhold Company, New York, 1985.
都市計画においては、対象とする地域の広さに関して各々の計画が入れ子関係になっているが、情報システムの場合もこれと同様に、個別の情報システムは部門システム(例えば事業部システムなど)に含まれ、部門システムは企業システムに含まれる。また企業システムは、サプライチェーン・システムなどの企業間システムや社会システムの部分システムになっている。
都市計画では計画レベルが粗くなると政策指向になり、細かくなると製品指向になるといわれているが、情報システムの場合には粒度が粗くなると構成要素の性質や特徴よりは、構成要素間の関係が重要になるため、包括的・相互運用的に扱う必要が出てくる。一方、粒度が細かくなってくると個別の要素の性格が強くなってくるので、分析的・要素的に扱わなければならなくなる。
このように適用技術や手法などが異なってくるため、情報システムのアーキテクチャを考える場合には、どの粒度でアーキテクチャを捉えるかを明確にしておかなければならない。
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